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昔の御座敷のお話 | 箱根芸者物語 #2

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観光客が行き交う箱根湯本の商店街。

一歩奥の道をゆくとそこには歴史ある、箱根芸者衆が集う「湯本見番」がある。
見番が建ってから70年。今や令和の時代に。
何がどう変わったのだろうか。

変わりゆく時代に合わせ、伝統を守り花柳界文化を継承する「湯本見番」
知れば知るほど奥が深まる花柳界文化の世界。

ちょっとのぞいてみませんか。

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19才で芸者の世界に飛び込んだ現組合長の舘美貴子さん。
彼女が19才の時に見た箱根芸者文化の様子を語っていただきました。

組合長のお話

当時の箱根湯本には若い子がおらず、お姐さんばかりでした。
若い子といえば、置屋全体をみたら、私達の他にもう少し居たと思いますが少なかったですね。
若い子は、置屋としては欲していたんでしょうね。

でもね、当時のお客さんの反応は違っていたんです。

今でこそ「若い子」はちやほやされる存在だけれど、
当時は若い子が来てもお客さんは振り向きもしなかった。

芸事の出来るお姐さんが人気だったの。
どんな時もお姐さん達がもてはやされ、私達のような若い子は小僧さんのように働かされたの。

今は逆ね。お客さんはお姐さんに「水割り作ってくれ」と言い、若い子に「お前はここにいろ」と言うの。

15年くらいまえかな、そんな傾向が見られてきたのは。
昔はお客さんにとっての粋な一番の遊びは、芸者さんとお座敷で遊ぶ事だった。

昔はお客さんにとって一番の遊びは「お座敷に行くこと」だった。カラオケは二の次。
昔からクラブやバーがあったけれど、お座敷とは遊びの種類が違うよね。

箱根の芸者衆に会いに来るお客さんは「芸事が好きな」人達だったの。

芸者さんとお客さんがね、張り合って芸をやってたの。
「俺もこれ、知ってるぞ」とお客さん。お姐さんもやる。
「お、教えてくれよ」とお客さん。
それを接待の時に、接待するお客さんに教えていた。

接待の仕方も今とは全然違うんじゃないかな。
お姐さんに頼るんじゃなくて、芸者さんと一緒になってお客さん自らが接待をしていたのね。

お酒飲むと人は、本性出すじゃないですか。みんなでバカになって、騒いで、全部さらけ出して。今はそうじゃない気がするのね。

昔の方が人と人との付き合いに情が見えた気がするのよねえ。

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箱根にも色々な旅館があるじゃないですか。箱根湯本から強羅、芦ノ湖、仙石原まで。

当時の私が居た置屋は、出先に山(箱根湯本以外の旅館の事)に、高級旅館をたくさん抱えていたの。私もその山部隊だったの。
でも、ある時から湯本のとある旅館さんの専属になったのよ。初めて湯本で働く事になったの。

お客さんと過ごす時間の延長の交渉が芸者衆の大きなお仕事の一つ。
2時間が終わって、その後に「二次会に行きましょう」「中のクラブに行ってカラオケしませんか」とあの手この手で延長を誘うのね。

(ここで補足ですが、箱根芸者のシステムとして、30分=1本と呼ばれていて、芸者さんを呼ぶ時には2時間=4本から、が最近の主流となっています。)

山の方の旅館だとね、入った時間から夜2時や3時までずっと働けるのが当たり前だったの。
私はそれまで、交渉なんてしたことなかったし、時計も気にしたことも無かったくらい。

それが、いきなり湯本の旅館で働く事になった時に私は、仕事の仕方が分からなかったの。
だってさっきも言ったけど、交渉したことがなかったんだもの。

私と一緒に湯本に来た友達が、たくましく交渉をすすめる姿を見てビックリしちゃったのを覚えてる。
しばらくは、その子達の後をくっついて仕事してた事にを今でも覚えてるよー。全く上と下では働き方が違うってことがわかったの。

そうやって、色々一から、周りを見ながら、お姐さんに教えてもらいながら、一つ一つの仕事を覚えていきました。

箱根芸者さんとのお話、西村環希が感じたこと


箱根芸者の世界に飛び込み、花柳界文化のリタッチを通じて芸者ショーの立ち上げに挑戦する西村環希が芸者の世界での新しい学びや気付き、考えたことを皆さんにおすそ分けします。

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この間、とある置屋のお母さんとランチさせていただいた時の事の続き。

「女は強いの。弱いフリをしている女はいるけど弱い女なんて見たことがないわ」

「女は強い。フリをしてる人はいるけど強い」って。

子供ができたりしたら、
もっともっとパワーアップするんだから。怖いわよ。
だって。

「女はね、ねちっこいわよ。」

相手がもう覚えてないくらい前に言った事まできっちり覚えてるんだから。
いつまでもそれを掘り返してくるわ。

倍返しなんてかわいいもんよ。
3倍、10倍返しまでされるわよ。

やり込んでやった、なんて間違えても思うんじゃないよ。

女の世界で生きてきた人達だわ、

生きるエネルギーが違う!

女として、素直に、強くて、美しいな、と話していて感じます。


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