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【イベントレポート】両立支援3社代表が語る「これからのダイバーシティ」

コロナ禍で在宅勤務や副業など働き方の変革が加速し、ライフとワークが切り離せない時代に。会社にとって社員1人ひとりが抱える悩みや課題は、ますます見えにくくなっています。これからの企業の両立支援はどう変わるべきなのでしょうか?

【9月17日開催オンラインセミナー】これからのダイバーシティ


ミートキャリアでは先月、企業人事やダイバーシティ関連部署の方、両立支援に関心のある方たちに向けて、この時代だからこそ必要な両立支援策について考えるイベント「これからのダイバーシティ~ライフとワークが混ざり合う時代の両立支援とは~」を開催しました。

企業の福利厚生やダイバーシティ策として育児世代向けのサービスを提供するスタートアップ 3 社の代表が語った内容を、参加者からの質問も交えてレポートします。ファシリテーターはミートキャリアキャリアサポーターの桐山が務めました。(本文中は敬称略)

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<登壇者プロフィル>
株式会社シェアダイン共同代表 井出 有希氏

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2000年に新卒でゴールドマン・サックス証券に入社。9年にわたり株式アナリストとして働く。2009年に米系資産運用会社に転職するも2012年にチーム解散を経験。ボストンコンサルティンググループを経て子どもの好き嫌いから食事作りに悩んだことを機に、2017年にコンサルティン会社の同僚と共にシェアダインを創業。2018年5月より、ライフステージごとにぴったりの専門家と出会える出張料理サービスを開始。
小学校1年生の男の子と年少女の子の2児の母。
■シェアダイン個人向けHP https://sharedine.me/
■法人向けサービス https://sharedine.me/corporation_inquiry/new

株式会社ファミワン代表取締役 石川 勇介氏

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愛知県犬山市出身。自身の妊活・不妊経験で強く感じた課題を解決するため、2015年に株式会社ファミワンを創業。
LINEを活用した「妊活コンシェルジュ ファミワン」の個人への提供に加え、小田急電鉄やミクシィグループでの福利厚生導入、ソニー、全日本空輸株式会社(ANA)、伊藤忠労働組合などへのセミナー開催、そして、神奈川県横須賀市への「妊活LINEサポート事業」の提供などを展開中。
優しい長男と元気な長女の二児の父。家庭では土日の料理、ゴミ捨て、洗濯担当。妻には頭があがらない。
■ファミワン個人向け https://lp.famione.com/
 法人向けHP https://famione.com/

ミートキャリア代表 喜多村 若菜

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神戸大学経済学部卒。アクセンチュア株式会社に新卒入社。基幹系システム開発のコンサルティングを経験。教育系事業の立ち上げに参画し、採用や事業開発に従事。採用活動を通して「働き方の選択肢の少なさ」に疑問を持ち、2019年1月に株式会社fruorを創業。ライフステージにあったキャリア形成を支援するオンラインキャリアカウンセリング「ミートキャリア」を運営し、これまで約500件のキャリアカウンセリングを行う。
ミートキャリア個人向けHP https://www.meetcareer.net/
法人向けサービス https://www.meetcareer.net/corporate

―――3社とも育児世代向けのサービスを個人・法人向けに提供していらっしゃいます。サービスについて簡単に教えて下さい。

井出:「シェアダイン」は私自身が子どもの偏食で食事作りに悩んだことを背景に、起業しました。プロが3時間で作る、1食645円から始められるサービス、弁当やお惣菜を買うのと変わらないサービスとして、育児世代に好評をいただいています。利用者の7割は未就学児を持つご家庭です。
去年から法人向け事業を開始し、健康経営の強化、女性の働きやすさ支援、離職防止を図りたい企業が導入してくださっています。コロナ禍で在宅勤務に切り替わった際の社員の食事支援としても活用いただいています。

石川:「ファミワン」では夫婦の妊活、つまり妊娠するための活動を知識面、精神面からサポートしています。具体的にはLINEに登録すると専門家から質問が届き、それに答えていくことで不安を解消していくものです。
現在日本では6組に1組の夫婦が不妊検査や治療を行っています。また、仕事と不妊治療の両立ができず退職を決断した人は妊活をしている人の約2割と言われています。その理由は、仕事と不妊治療のスケジュール調整が難しい、職場での心ない一言に傷ついた等が挙げられています。

こうした事から企業向けの妊活支援サービスも提供し、福利厚生として企業に導入いただいています。不妊治療支援は当事者だけではなく、周囲の理解も重要です。例えば「ファミワン」を導入されている小田急電鉄様では育児世代の親世代も多い副駅長向けに妊活の研修会も行わせてもらいました。

喜多村:女性活躍推進の一方で、日本では現在も40%の女性が出産で離職しています。「ミートキャリア」は私自身がライフイベント後のキャリア形成はどうなるんだろうと不安に感じた事から開始した事業です。個人向けにオンラインキャリアカウンセリング、法人向けには社内の育休復職者カウンセリングを行っています。
ミートキャリアで育休復職者にアンケート調査したところ、復職時に会社と面談を行ったの人は7割、しかし、6割の人は「復職後のキャリア展望が描けていなかった」と答えました。面談は実施するものの、会社側が社員のキャリア設計や管理職意欲についての本音を引き出せてないことが伺えます。私たちは個人(社員)の方の本音を引き出し、その方に合った働き方やキャリア形成を支援しています。

―――それぞれのサービス分野で個人はどんな両立課題を抱えていますか?その課題に対し、なぜ会社からの支援が必要だと思われたのでしょう?

井出:お子さんが生まれてアレルギー体質だと分かり、食事作りの苦労で自分のキャリア形成にも課題があるなと感じていた方が「シェアダイン」で専門家にお願いできたことで自分の仕事にも前向きになれたという話を聞きました。
子どもとも向き合いたい、キャリアもきちんと作りたいと考える人を「ゆるキャリ」でもない「バリキャリ」でもない「フルキャリ」(野村総合研究所の武田佳奈さんの命名)と呼ぶそうですが、社会には「フルキャリ」が増えていることを理解する必要があると思います。

喜多村:そうですよね。仕事も頑張りたいけど、今は時短勤務をせざるを得ないという人が、会社から「時短勤務=意欲がない」と評価されてしまい、葛藤を抱えることがよくあります。本来、「時間的な制約」と「本人の意欲」はイコールではないはずで、切り離して考えるべきです。会社と個人の面談でそこが伝わっていないのが課題だなと感じます。
ミートキャリアに相談に来る育児中の方には「現職の仕事にも人間関係にも不満はないが、働き方と評価にだけ不満がある」という方が多くいらっしゃいます。そういう方は転職を考えていたりしますが、会社にとってはその方の働き方と評価に関する不満を解消し、社内でキャリア形成してもらう方がハッピーなはずです。

石川:妊活で言うと、病院での治療と仕事との兼ね合いの悩みが大きいです。ただ、妊活は会社にとっては見えにくい課題で、社員には聞きづらいし、イメージもしづらい。どういうものか全員が自分事化していくのが大事だと思います。

井出:実は私も妊娠前に病院で検査を受けたことがあって、妊娠や子育てに関しては個人差がすごく大きいと感じています。産んだ後もどんな子どもか、子育ての支援者が身近にいるかどうかにより、働き方に影響を与えてきます。でもこれは会社から見ると分からないんです。だから、メッセージとして「会社が両立支援します」と示しておくことで、社員のロイヤリティが高まると思います。

―――企業はどのような課題感から各サービスを導入されているのでしょう?また会社が支援することで、どんな効果がありますか?

石川:会社のスタンスとして、ワークだけでなくライフも支えることを示したいと考えているところに導入されています。よく「妊活は一部の従業員だけのサービスでしょ」と言われますが、妊活前のこれから様々なライフイベントを迎える社員にとっては、この制度があるだけで安心できます。結果として社員の心理的安全性、生産性向上、離職防止、採用広報での効果などにつながります。社員のエンゲージメント向上が一番大きい効果かなと思います。

井出:「シェアダイン」も同じく離職防止、生産性向上、人材獲得です。育児中だけではなく、妊活中、介護中など様々ステージの従業員の活躍に利用いただいています。最近では「在宅勤務で従業員がパフォーマンスを最大限発揮できる環境を整えたい」と在宅勤務支援の文脈で導入いただく企業が多いです。これまでの『社食』のような一律の支援が届きにくくなっているからです。

喜多村:「ミートキャリア」の場合は組織文脈での危機感からサービスを導入いただいています。新卒総合職で入った30~40代の女性社員のキャリアがライフイベントを機にステイになってしまっている。長期的に見たときにこのアンバランスな組織でいいのか?という課題感からです。

―――ダイバーシティや女性活躍が順調に進んでいるとは言えない現状。その「壁」はどこにあると感じますか?

石川:理解不足が一番の壁かなと思います。制度があっても使えないとか、女性管理職比率が上がっても、そこに至るまでの社員のモチベーションや周囲の理解がないとかの状況だと、素晴らしい制度も絵に描いた餅になってしまいます。

喜多村:そうですね。私が制度に関して企業の人事や女性活躍担当とお話をさせて頂く中で感じるのは、大きな企業ほど上から制度を作っているなということです。その制度や施策は他社を参考にしていたりして、現場感がない。そして、社内決議に時間がかかり、なかなか進まないという声もよく聞きます。だとしたら、その間に自社の現場社員の声を集めて小さい改善を積み重ねていってはどうでしょうか。上からと下から両方のアプローチがあるんじゃないかと思います。

―――ダイバーシティや女性活躍を推進しないリスクや、長期的なネガティブ影響はどんな事が言えるでしょうか?

井出:社員の支援をして生産性を高めるか、ステイさせるかによって、企業の将来的なパフォーマンスが変わってくると思います。「そうはいっても個人の問題だから仕方ない」と個人の問題で留めていると、それが大きな束になった時に気づいたら企業としての競争力低下していることになります。当時者以外も巻き込んで全社員で使えるような制度や風土づくりが大事だと思います。

―――上層部の理解が追い付いていない場合、理解を得るにはどうしたらよいでしょうか?

石川:妊活を企業の幹部にどれだけ説明しても理解されなかったり、「自分は苦労せず子どもができた」と言って関心を持たない方もいらっしゃいます。彼らに対してストレートに説明をして理解を得る努力は続けつつも、妊活や女性の生理による生産性の低下や離職で発生する損失、新卒採用面での効果などを数字で見せ、「支援を行う事でこれだけ会社としてはメリットがあります」と両軸で攻めていきます。

井出:私も年上の男性に「シェアダイン」のビジネスプランを説明した時、まったく理解されず、「子どもの食事で悩むなんて事、あるの?」と言われることが多々ありました。本当に理解を得るのは難しい…。でも、石川さんと同じように「食物アレルギーを持つ子どもは6人に1人の時代」とか「子育て世代のアンケートではこんな声が上がっている」という数字を見せたりしながら始めていきました。

喜多村:数字で社内にどういう影響があるかを伝えることが大事ですね。
ただ、ダイバーシティ推進において短期的な目標設定は逆によくないなと思っています。その短期的効果が得られなかった場合、「じゃあやらない」という意思決定で良いのか。

石川:そうですね。やらないことによる長期的な社会的損失を理解してもらいつつ、短期的な金銭的メリット、客観的データなど、いろんな角度から説明していくのが良さそうです。

―――会社に支援や制度を求めるときに「自分のワガママでは」と感じて躊躇してしまいます。支援とワガママの違いについてどう思われますか?(参加者からのご質問)

喜多村:自分がこうしたいと伝えるよりも、これを制度として導入することでみんながハッピーになるよと伝えると、ワガママではなく、支援になるんじゃないでしょうか。

井出:私は会社員時代、在宅勤務制度がなかったのを月1回認めてもらいたいとプロジェクトをまとめたことがあります。その時、ママ社員だけの意見だと進まず、他の属性の社員もまとまってようやく会社が検討を進めてくれました。

―――業界や職種によって、支援サービスを受けやすい人と受けにくい人があると思いますが、実際はどうでしょうか。(参加者からのご質問)

石川:「ファミワン」のサービスで言うと、勤務体系や個々の状態にあわせて幅広く対応できます。小田急電鉄の従業員の方であれば、シフト勤務も本社勤務も様々なので、そのかたも受けやすいサポートを心がけています。

井出:どんな社員でもどこかで食事をとる必要があるので、支援しやすい、しにくいという観点で考えたことはありませんでした。最近では生活習慣病の医療費が課題と感じている企業から、メタボ検診で一定数値以上の社員を対象に「シェアダイン」のサービスを提供して数値改善を見てみたいというご要望がありました。こんな風に企業の課題感に沿って、サービス提供者側がカスタマイズできる部分があると思います。

―――就活中の学生に企業内での働き方の選択肢がもっと見えるようになってほしいと思っています。これが実現するには何が必要でしょうか。(参加者からのご質問)

石川:今は育休取得率や離職率は開示する企業が多いですが、育休取得率が高い=両立しやすいのかというと、そうとは限らないケースもありますよね。とはいえ、様々な数値を開示していくことは透明化につながり選択肢も見えるようになるので、開示する企業の方が利益率が高いとか、人気ランキングが上がるとかのメリットが出てくれば良いかもしれないですね。

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3社の話から、これからの両立支援は「一律から個別へ」というキーワードが浮かび上がりました。会社にとって社員の悩みが見えづらくなっていること、その悩みは子育て1つとっても多様化しており個人差が大きいことから、会社の姿勢をしっかり示しつつ、様々な背景の社員に対して個別の支援を届けていくことが求められているようです。
多様な社員が働きやすい環境こそが、ダイバーシティのあるべき姿を実現させます。

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ミートキャリアの法人向けサービス

ミートキャリアでは法人向けに 育休復職社員キャリアカウンセリング サービスを提供しています。第三者のフラットな立場から復職後のキャリア形成や仕事における不安を解消し、意欲的に働けるよう支援することで、企業の長期的な女性活躍に貢献します。

<導入企業事例>
[導入企業] 大手飲料メーカー
[対象] 育休中 および 復職後 5 年以内の女性社員
[支援内容] キャリアカウンセリングを1 人あたり2 回実施
[受けた方の声]「外部からのフィードバックを受け、新たな気づきが得られた」「自分に必要なゴール設定ができ、モヤモヤが非常にクリアになった」
[受けた方の変化] 「管理職へネガティブな気持ちを持っていた社員→ 管理職試験に前向きになり応募、合格」「部署異動して仕事が合わず辛かった社員→ 生き生きと働けるようになった」
[今後の予定] キャリアカウンセリングの他、ミートキャリアの育休復職者準備セミナーも実施予定。対象者を結婚や出産などのライフイベント前の社員への拡充することも検討している。

キャリアカウンセリングの対象者は育休取得社員に限りません。社員のモチベーションアップやストレスマネジメントなど、キャリア形成に課題をお持ちの企業様はお問い合わせください。

ミートキャリア個人向けHPはこちら

シェアダインHPはこちら

ファミワンHPはこちら



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