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「うつ」「ストレス」「不安」その答えは、すべて「脳」にある。

多くの人が
一度はタイトルだけでも
目にしたことがあるだろう
『スマホ脳』
『一流の頭脳』
『最強脳』

これらベストセラーを
世に送り出した精神科医
アンデシュ・ハンセンの
最新作「ストレス脳」
を読みました。


広く、長い目で見た場合
私たちが生きる現代社会は
人類の歴史において
大変、豊かで快適だといえます。
かつてないほど健康に
長生きできるようになったから。

しかし、
なぜ今、多くの人が
「うつ」や「不安」に苦しみ
心に病を抱えるのだろうか?


その答えが
この「ストレス脳」の一冊に
ギュッと詰まっています。

著者アンデシュ・ハンセンは
その答えは
私たちの「脳」にあり

その理由を
進化の過程で脳が果してきた役割と
その仕組みを解説しつつ
「うつ」や「不安」
「ストレス」と
脳の関係を解き明かしています。

一冊を通して
詳らかにされていく
人体の仕組みを踏まえた
心の病に対する解説

大変興味深く
強い納得がありました。

私の心を突いた要点を
なるべく簡潔に
記してみたいと思いますので
ご参考いただけると嬉しいです。

そして、
生きづらい現代を
サバイブするために
ご一読されることを
オススメしたいです。


近い将来、「うつ」は他の病気よりも、世界規模の疾病負荷になる。


WHOの試算では、今
世界で2億8000万人が
「うつ」に苦しみ
心を病んでいる。

あと数年もすれば
「うつ」が
他のどんな病気よりも
大きな地球規模の
疾病負荷になるという。

一生のうちに
「うつ」になる確率は、
女性なら4人に1人
男性なら7人に1人





その確率の高さに、驚きました。
もはや心の病は
他人事ではないのです。


「うつ」への脆弱性は、「遺伝子」によって決められている


「うつ」になるのは
セロトニンやドーパミン
ノルアドレナリンといった
脳内の伝達物質が
足りないせいだと言われているが
これは「誤解」
そんな単純な話ではない。

実際には、
脳内の複数の部分や
システムが影響を受けて
その複合により
「うつ」につながっていく。

そして、この
脳内で起こる複雑なステップは
「人によって違う」
というのだから
簡単に対処できるものではない。

ただし、
「うつ」を引き起こす
「要因」は皆同じ
長期間に及ぶ「ストレス」や
自分では制御できないと感じる
「ストレス」にある。

結局「うつ」は
「ストレス」が原因であることは
間違いがないのだが
困ったことに、ストレス耐性は
遺伝子によって決められている
という。

つまり、「うつ」への脆弱性は
「遺伝子によって決められている」のだ。




「うつ」になる過程は
人によって異なり
その治療が困難を極めている理由が
読み取れました。
そして、何より遺伝性について
著者は、
「遺伝子が弾を込め
環境が引き金を引く」と
表現していて、深く納得しました。


「うつ」は、感染症が深く関係している


「うつ」の一部は
感染症が関係しているという。
その理由は
長い人類の進化にある。

人類はその歴史において
ほとんどの期間
感染症の脅威にさらされてきた。

「脳」の任務は
生存することであるため
私たちの脳は
感染症に対する
「強い防衛メカニズム」を
持つようになり

その一部が
「うつ」と関係しているという。

精神科医のチャールズ・レゾンは
「人類の歴史のほとんどの期間
ストレスというのは身体にとって
”感染リスクが高まった”という
シグナルだった」
といい
それがストレスの役割だとされている。

長い人類の歴史において
脳は進化してきたわけだけど
その間のほとんどを
感染症との戦いに費やしてきた。
その結果、
脳は、ストレスを感じると
感染リスクが高まったと
解釈するようになっているという。


そして、
ストレスを感じ続けると
その間ずっと感染の脅威に
さらされていると勘違い
してしまい
その脅威に対抗するために
脳は、家に篭りたくなるような
感情を作り出す
というのだ。

これが
感染症と「うつ」の関係だという。




私たちの心身は
もちろん脳を含めて
長い年月を経て
その過去の経験を踏まえた
進化をし
今に至っているわけで
物事を捕まえる時
その進化の過程を踏まえることが
大切だということを
改めて感じました。

そうそう簡単に
大きな変化に
対応できるわけではないですよね。
だから、ギャップに対し
心身に弊害が起きるのだと。


感情も記憶も、脳が「生き延びる」ために作り出している。


脳の重要な任務は
「生き延びること」

そして、遺伝子を引き継ぐことだ。

そのために
「感情」を生み出したり
「記憶」を変化させることもあるという。

「感情」というのは
自分の周囲で起きていることに
反応して、ほとばしるのではなく
脳が私たちの内と外の世界で
起きていることを
融合して作り出す
という。

また、
脳が記憶を変化させる
こともわかっていて
集団に属しておくために
不快な事実に対して
目をつぶらせるとか
自分は優れていると思わせるとか
実際よりも能力が高いと思わせるとか。

生き延びて遺伝子を残せるように
脳が感情や記憶を使って
人を行動させている
という。

一例として
咳をしている人を見ただけで
免疫系が起動する
という
人間の脳の働きだ。
不快だと脳が感情を利用し
咳をする人から距離を取らせるのも
感染症から身を守る
脳の働きなのだろう。




「身構える」というのは
身体の外側だけではなく
内側でも働いているのだなっと
とても納得しました。

脳は生存させるために
感情を利用しているんですよね。


孤独は、警戒を産み、交感神経が高止まりする


脳は、多数の神経を通じて
身体の各器官を制御していて
そのほとんどは、私たちが
意図的にコントロールすることは
できない。

意識せずとも働く
神経系には
「交感神経」と
「副交感神経」の
2種類がある。

「交感神経」は
恐怖を感じたり
腹を立てたりすると軌道して
心拍数と血圧を上げて
行動を起こさせる。

一方、「副交感神経」は
消化や心の落ち着きに関係していて
心拍数を下げる。

孤独でいると
心を落ち着けられる時間があるので
交感神経が活発になると思いがちだが
不思議なことに全く逆で

孤独は「交感神経」を活発にする。

人類の祖先が生き延びるために
お互いを必要としてきた。

集団でいれば
自分の命を守れる
可能性高い。

つまり
人間の歴史のほとんどの間
孤独は死を意味してきた

脳は、長い歴史の上で
それを学び作り上げられている。

孤独によって感じる「不快さ」は
脳が「社交欲求を満たせ」と
語りかけている現象
だという。

それでも、独りでいると脳は
自分が誰にも助けてもらえない
状態にあると解釈し
危険に対して警戒が続く。
つまり、
交感神経が高い状態が続く。


その結果、身体は長期的に
強いストレスを抱えることになる。





交感神経が優位な状態で
暮らし続けることで
血圧が上昇し
心血管疾患が増えることに
説明がつくわけですね。

人類にとって孤独な状態が
いかに不合理か
脳や身体の仕組みを知り
納得できました。


肉体の存在を感じることが、社会で生きるために重要


パンデミックを機に
オンラインでの
コミュニケーションが増え
一見便利になったものの
多くの人が孤独やストレスを
感じるようになった。

デバイスの画面越しでは
社会的な絆を求める
人間の本質的な
社交欲求は満たされない
ことが
現実的な現象でわかったのだ。

その理由は
医学的に完全な答えは
得られていないらしい。

しかし、
一つ「皮膚」に手がかりがあるという。


皮膚には
軽く触れられた時にだけ
反応する受容体が存在する
という。

それは
2.5cm/秒速の速さで動く時に
最大限に反応するという。
これは、愛撫される時の速さだ。

この受容体が反応すると
親密さを感じる
エンドルフィンが放出される
という。

エンドルフィンは
鎮痛作用があり
強い幸福感を与える。


例えばチンパンジーやゴリラなどは
起きている時間の20%を
毛繕いに費やしているが
これは、被毛を清潔に保つだけではなく
毛繕いをする方もされる方も
エンドルフィンが放出され
二者間の親密な感覚を生み出し
群れのまとまりを保つために
寄与している
という。




社会に安定をもたらすために
やはり人間は触れ合いが大事だと
納得できました。
一方で時代は、逆行しているので
その流れと人間の心身の仕組みの
ギャップに不安を感じました。


最後に…


長い期間を経たて培ってきた
私たちの脳や身体の仕組みに対し
我々がそれに当てはまらない
行動を取ることで
心身に、弊害が起きるということを
本書を読んで改めて感じることができました。

そして、
「ストレス」という言葉は
容易に使われがちだけれども
その実、とても深く
現代社会で生きる上で
切っても切れない大きな問題であると
痛切しました。

「うつ」とか「不安」という
心の病は身近な存在だからこそ
理解を深めたいテーマであることは
間違いありません。


特に、
「肉体の存在を感じること」の
重要性は腹落ちしました。

チンパンジーやゴリラが
群れの安定のために
毛繕いする話は
私たち人類の社交欲求には
物理的な接触が必要で、
お互いに触れ
肉体の存在を感じなければ
社会のまとまりを
保つことができないのだと。

昨今、そこここで
社会が分断されるようになった
理由には
こういうことも
寄与しているのかもしれないと
私は思いました。

「ストレス」「うつ」「不安」「孤独」
これらの言葉を
目にしない日はありません。
それほど、現代社会を生きる
私たちには切っても切れない
テーマであることは間違いないのです。

ならば、少しでもそれを理解し
自分の身を守る知恵にすることが
大事なのではないかと思うのです。

本書は、
そのような機会を提供してくれます。

ぜひ、手にとって
深く読み込んでもらいたい
今、オススメの一冊です。



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