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「日本の医師は優秀なのに、なぜ革新的な医療機器が出てこないの?」——そう言われる状況を覆したい。MedVenture Partners大下創社長×mediVR原正彦対談

VRを活用したリハビリテーション用医療機器「mediVRカグラ」を販売する株式会社mediVR。2021年7月7日、シリーズBにおいて5億円の資金調達を完了しました! 

これを記念して、リード投資家としてシリーズAからmediVRを支えてくださっているMedVenture Partners株式会社代表取締役社長・大下創氏と、株式会社mediVR代表・原正彦の対談をお届けします。医療機器分野の投資家として、米国および日本で数多くの医療機器ベンチャーを成功に導いてきた大下社長に、日本の医療機器産業やmediVRに期待することを伺いました。

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大下創(おおした・はじめ) 法政大学大院経営学専攻修士課程修了MBA。大阪外国語大学外国語学部卒。1997年から医療機器業界に身を置き、2005年からシリコンバレーのVCで米国医療機器ベンチャーへの投資を担当。当時の投資先の大半がEXITに成功し、複数の投資先が時価総額1000億円超を達成した。帰国後の2013年、MedVenture Partners株式会社を創業。1号ファンド(60億円)に続き、20年に2号ファンド(99億円)を設立。多くの投資先で取締役を務め、国内でもBiomedical Solutions社、A-Traction社等の成功事例を生みだしている。 

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原正彦(はら・まさひこ) 島根大学医学部医学科卒。神戸赤十字病院、大阪労災病院で研修を受け、大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学で学位取得。2016年に大阪大学発ベンチャーとして株式会社mediVRを創業。経産省が主催するジャパンヘルスケアビジネスコンテスト2018で最優秀賞を受賞。循環器内科専門医としてアメリカ心臓協会/アメリカ心臓病学会から「世界で最も有望な若手研究者ベスト5」に選出される。日本臨床研究学会代表理事、国立大学法人島根大学客員教授など複数の肩書を持つ。

日本の医療機器ベンチャーを育てなければいけない

————まずはMedVenture Partnersについて教えてください。

大下社長:日本の医療機器産業は、国際的に大きな遅れを取っています。その理由の1 つは、ベンチャーが少ないから。革新的な医療機器は、ベンチャーが開発し、それを大手企業が買収・販売することで世の中に出回ります

「日本でも医療機器ベンチャーを育てなければいけない」という政府の意向を受けた産業革新機構からの依頼で、2013年にMedVenture Partnersを創業し、同時に60億円のファンドを設立しました。

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————mediVRのシリーズAに投資してくださったのはなぜですか?

大下社長:医療機器の開発において大事なのは、患者のニーズから始めることです。これは、スタンフォード発の医療機器イノベーション人材育成プログラム「バイオデザイン」でも言われている基本中の基本です。

医療やリハビリにVRを活用する試みは珍しくありませんが、その多くが「VRという技術をいかに活用するか」という発想からスタートしているため、適切なニーズに辿り着いている事例は少なく、患者を治すような成果は出ていません。mediVRカグラがほかの機器と一線を画するのは、原先生が臨床現場での知見をもとに開発している点。患者が何を必要としているのか、どうすればそれを解決できるのかを熟知されていて、そのためのソリューションとしてVRを活用しています。VRが出発点の会社とは、アプローチが根本的に違っているのです。

また、原先生とは起業前から何度も話し合ってきましたが、原先生は、常に患者にとって何が重要かを考え、そのためにどのような製品を開発すべきかを考えていました。だから、どんな質問にも的確な答えが返ってきますし、そのアイデアや知見が全て製品に盛り込まれているからこそ、カグラの開発が順調に進んだのだと思います。

私自身の投資先の成功事例も2桁を超えていますが、成功する経営者に共通するのは、どんな質問にも明快な答えが返ってくること。要は、こちらが疑問に思うことなんて先回りして考えているんです。

ベンチャーにはトラブルがつきもので、すべてが計画通りに進むことなんてまずありません。でも、事業について深く考えている起業家は、不測の事態に対応できます。原先生なら間違いないと思い、ぜひ一緒にやりたいとお伝えしました。

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VR空間上の狙った位置に手を伸ばす動作を繰り返すことで、姿勢バランスや二重課題型の認知処理機能を鍛えるリハビリをサポートする「mediVRカグラ」

原:カグラをアイデア段階から面白いと言ってくれたのは大下社長だけです。みんなが「無理だ、くだらない」と笑っていた中で背中を押してくれた。だから僕も、組むなら絶対大下社長と、と思っていました。

大下社長:ただ、すでに1号ファンドの消化は終わっていたので、2号ファンドを立ち上げるまで、かなりお待たせしまったんですよね。

原:完全に記憶からなくなっていましたがそういえばそうでしたね(笑)! ずっと2号ファンド立ち上げを待っていて、翌月にお金が無くなるというギリギリのタイミングで出資が間に合ったんでした。あのときは本当にヤバかった。いま思い出しました(笑)。

VCがやるべきことは、投資先を理解して、見守ること

————2019年12月に出資していただいてから一年半を振り返っての感想をお願いします。

大下社長:予定していた営業やプロモーションができないなど、コロナによる影響も大きかったと思います。一方で、想定以上にうまくいっていることもありますよね。さまざまな疾患の方に使っていただいて、劇的に成果を出している。事例が積み上がり、医療機器としての確度がすごく上がってきていると思います。ですから、シリーズBも迷いなく出資を決めました。

原:僕は、人を育てるうえで大事なのは自由にさせることだと思っています。自分で試行錯誤を繰り返すことで、人は学んでいくから。ただ、失敗が致命的なものにならないように、マットを敷いておくことは必要です。

大下社長はその匙加減がとても上手なんです。事業計画も細かな数字を追及せず「複数あるシナリオのひとつですよね」と理解してくれるし、「あれはどうなった、これはどうなった」と途中経過を聞いてくることもない。こちらが寂しくなるくらい、放っておいてくれる(笑)。そうやって普段は信頼して見守ってくれているけど、大事なときにはさっと手を差し伸べてくれるんです。何度助けられたかわかりません。

それはきっと、大下社長が「起業家を育てることが日本を良くしていく」という大きな視点を持っていらっしゃるからだろうと思っています。

大下社長: VCがやるべきことは、投資先をあたたかく見守ることだと思っています。ただ、子育てと一緒で、見守ることが一番難しい。あれこれ口を出さないためには、投資先をよく理解することが重要です。どんな人でどう考えているかがわかれば、安心してお任せできますから。原先生のことはmediVRを起業される前から知っていたので、心配はありませんでした。

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2021年2月に発売された『医療機器開発とベンチャーキャピタル実践編』(幻冬舎)。

世界初の「成果報酬型自費リハ施設」開設に向けて

————今回の増資を受けて、mediVRは何をする予定ですか?

原:価値教育に注力します。ルイ・ヴィトンのバッグが売れるのは、「それだけの価値がある」と知ってもらえているから。一方カグラは、まだ真価をわかってもらえていません。営業や広報を通じて、カグラの価値を浸透させることが当面の目標です。

それに関連して、2021年中に、世界初の成果報酬型自費リハ施設の開設を予定しています。あらかじめ設定した目標に対し、「治ったときに、治った分だけ」報酬をいただく施設です。医療やリハビリ領域でこんなシステムを取るというのは、常識外の発想ではないでしょうか。それだけ、カグラに自信があるんです。

ほかの医師から「改善が見込めない」と匙を投げられてしまった脳梗塞の後遺症、上肢機能障害、歩行機能障害、失調症状、認知機能障害、慢性疼痛などの課題をゴリゴリ治していきたい。誰もできないと思っていたことを実現することで、カグラの価値を広く知ってもらいたい。まずは国内での価値教育を進め、海外展開に備えられたらと思っています。

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施設は地下鉄御堂筋線緑地公園駅ビル内にオープン予定

優秀な医師が医療機器を開発する事例を増やしたい

————大下社長は、mediVRにどんな期待を抱いていますか?

大下社長:ベンチャーの成功は、エグジットをしたかどうかで測られがちです。エグジットを迎えることしか頭になく、エグジットがゴールになっている起業家もいる。もちろん、私たちも出資者から資金を預かって投資をしている以上、しっかりとリターンを出さないといけません。

でも、本当に重要なのは、実際に、製品が患者を救うことです。すでにカグラによって助けられている患者さんはたくさんいますが、もっとそれが広まってほしいと願っています。

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原:いま大下社長が言ってくださったようなコメントは、普通のVCからは出てきません。mediVRに投資してくださっている投資家のみなさんは志のある方ばかりで、心強く思っています。

大下社長:もうひとつ、私には「シリコンバレーの投資家や起業家をギャフンと言わせたい」という動機もあります。日本の医師のスキルは世界トップクラスで、新しい手術を開発した方はたくさんいます。でも、医療機器を開発しようという発想を持つ医師が非常に少ないのです。シリコンバレーの知人友人からいつも「なんで日本は医療機器だけダメなの?」と言われて、悔しい思いをしています。

原先生のような臨床医として活躍していた若い医師が医療機器を開発し、成功を収める。臨床現場にいるよりももっと多くの患者を救う。そうした事例を見れば、「日本でも医療機器開発が実現できるんだ」と気づき、後に続く医師が出てくるでしょう。mediVRに関わった方が、また新たなベンチャーを立ち上げるかもしれない。日本の医療機器産業のエコシステムをつくり、「日本の医療機器ベンチャーもなかなかやるな」と海外から言われるようになることが、私の悲願です。

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————原先生、責任重大ですね。

原:いや、僕は間違いなく実現できると思っているので大丈夫です。社員にはストックオプションを付与して、みんなが経済的自由を手に入れられるようにしたいと思っています。PayPalの創業に関わったメンバーが、eBayに買収された後に数々の企業を立ち上げてPayPalマフィアと呼ばれていますよね。同じように、mediVRマフィアと呼ばれるようになりたい。

「医療機器のクラスⅠで、特許を守りながら、これだけ治せるんだ/売れるんだ」という衝撃を世の中に与えたいし、成果報酬型リハビリのノウハウも海外展開していきたい。戦略はあるので、あとはどれだけ早くできるかだけです。

大下社長:mediVRは正しい方向に進んでいると実感していますし、心配はしていません。このまま大成功してほしいと思っています。

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原:ドイツの哲学者ショーペン・ハウエルは、成功するまでには3つの段階があると言っています。第1段階は人から笑いものにされる。第2段階は激しい抵抗と反対に合う。第3段階は、それまで笑いものにしたり反対したりしていた人たちが同調するようになる。

僕も人生において何かを始めるときは必ず笑われてきたので、これは本当にその通りだと思っています。mediVRも同じで、いまは反発されるフェーズに入りました。ここを乗り越えるには時間がかかるけど、地道にコツコツやるだけです。

ただ、そうわかっていても、あまりにも激しく批判されたときは、気持ちが揺らぎます。でも、医療機器業界のプロである大下社長が自分を信じてくれていると思うと、背筋が伸びるんです。背中を押してくれる人がひとりでもいると、それを支えに前進していける。資金面や経営面だけでなく、精神的な面でも、大下社長には本当に支えてもらっています。

大きな目標を実現できるよう、やるべきことをやっていこうと思います。

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■mediVRシリーズB引受先:MedVenture Partners株式会社、日本政策投資銀行グループ DBJキャピタル株式会社、積水化学工業株式会社、TARO Ventures

本件のプレスリリースはこちら:



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VRを使ったリハビリテーション医療機器「mediVRカグラ」を提供する株式会社mediVRの広報チームです。このnoteでは、導入施設へのインタビュー等をお届けします! https://www.medivr.jp/