目指すは製造管理部門のトップ。臨床工学技士の新しいキャリアを切り拓きたい
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目指すは製造管理部門のトップ。臨床工学技士の新しいキャリアを切り拓きたい

mediVR

2021年4月、mediVRは臨床工学技士の養成校から新卒を1名採用しました。製造管理部門のスタッフとして、mediVRカグラ関連機器の仕入れや出荷管理、メンテナンスなどを担当してもらっています。

養成校出身の若手臨床工学技士は病院に就職することが多く、ベンチャーの製造管理部門に進むのはかなりのレアケース。そのキャリア選択が注目されて2021年9月には第25回近畿臨床工学会に呼ばれ、シンポジストとして新卒ながら堂々と発表、討論を行いました。

彼女のキャリア選択は、進路に悩む臨床工学技士学生や、企業への転職を考える現役臨床工学技士の参考になるかもしれません。mediVRに入社して約8か月、現在感じていることを語ってもらいました。

國師美里(こくし・みさと):臨床工学技士
鹿児島県生まれ。2021年鹿児島医療工学専門学校臨床工学学科卒業後、株式会社mediVR入社。学生時代に臨床工学技士の学生団体TUCES(タクス)立ち上げに関わり、HP運営などを担当する。

VRを活用し、運動機能と姿勢バランス、認知機能を総合的に評価・刺激するmediVRカグラ。大学や病院、高齢者福祉施設に導入され、脳梗塞、高次機能障害、認知症、整形外科疾患、慢性疼痛など、幅広い疾患のリハビリに使われています。

「臨床工学技士100人カイギ」への参加をきっかけに、学生団体を立ち上げた

——臨床工学技士になろうと思ったのはいつですか?

高校3年生のときです。父が農業をしていて、母とよく農業機器の修理やカスタマイズの話をしていたんです。修理自体は業者さんに依頼するんですが、故障の原因を突き止めないと何度も繰り返すことになるし、修理や交換のペースを把握して予算を組まないといけません。そういう会話を聞きながら育ったので、「仕事ってこういうことなんだろうな」と感じていました。

一方、母が昔看護師をしていたので、医療に関する興味も少しだけあったんです。ただ、看護師は自分には向いてないなと思って。いろいろ調べるうちに、ちょうど近くに臨床工学技士を養成する専門学校ができたことを知りました。それまでそんな職業があることも知らなかったけど、機械と医療の両方に関われるっていいなぁと思い進学を決めました。

——養成校時代は、臨床工学技士の学生団体TUCESの立ち上げに携わったそうですね。

2年生の冬休み、Twitterを眺めていたらたまたま「臨床工学技士100人カイギ」というトークイベントの情報が流れてきたんです。まさにそのときリアルタイムで配信していたので覗いてみると、「臨床工学技士の学生団体をつくりたい」とプレゼンしている学生がいて。学生の意見を集める場や横のつながりができる場をつくりたいという提案に共感して、自分のホームページに感想を綴ってイベントのアンケートフォームにそのリンクを貼って送りました。

そうしたら、イベント主催者の西垣孝行先生が「プレゼンをした学生と一緒に学生団体を立ち上げない?」とご連絡をくださって、立ち上げメンバーになりました。

https://onece.jp/tuces/

——TUCESではどんな活動を?

主に担当していたのはホームページの運営やSNSとの連携、発信です。でも、本当にゼロから、それこそ活動内容や団体名を決めるところからみんなで話し合って団体をつくっていったので、答えがないものに取り組む大変さとおもしろさの両方を味わいました。

ただ、団体運営に時間を費やしすぎて勉強が疎かになりがちで……養成校の先生たちは私の成績を見て「国家試験に受かるだろうか」とものすごくヒヤヒヤしていたはずです。そこは本当に先生たちに申し訳なく思っています……。

養成校の友人からは「企業に就職?」と困惑されたけれど

——mediVRとの出合いは?

臨床工学技士の先生や学生が入っているメッセンジャーグループがあって、そこで西垣先生が「mediVRという会社が臨床工学技士を募集しているので、興味のある方は連絡ください」と投稿されていたんです。2021年の2月だったかな。

私はそのとき養成校の最終学年だったんですが、その時点ではまだ就職先が決まっていなくて。3月に控えた国家試験の対策に必死で、就活をしている余裕が全然なかったんです。投稿を見て「これはチャンスかも、飛び込んでみよう」と思い西垣先生にご連絡しました。

西垣先生は私が出演した臨床工学技士100人カイギの動画リンクをmediVRの原先生に送ってくださって、すぐにオンラインで面接していただくことになりました。

▲2020年12月、TUCESメンバーとして「臨床工学技士100人カイギ」に登壇した際の動画

——面接はいかがでしたか?

簡単に会社の説明をしてもらって、私もTUCESでの活動をお話して。成績優秀な学生ではなかったんですが、原先生は団体運営に力を入れていたことを評価してくださって、「あなたいいね!」と言ってくださったんです。それで私も安心して「入社したいです」と言えました。

——以前から企業への就職も視野に入れて考えていたんですか?

いえ、まったく。クリニックで透析機械などを担当するんだろうなと考えていました。当時はmediVRの情報ってあまりネットに出ていなかったし、養成校の先生たちもご存知なかったし、情報収集にも限界があって。でも、自分ががんばってきたことを評価してくださる先生のところに行けば成長できるんじゃないかと思ったんです。

——周囲の反応はいかがでしたか?

養成校の同期数人には話したんですが、「え、企業? 何するの?」「意味わからん」と困惑されました。だから、ほとんどの友人には何も言わずに鹿児島を出てきたんです。その時点では私もカグラを体験したことがなかったし、患者さんが治るところを目にしたこともなかったし、うまく説明できなかったから周囲を心配させてしまったのかもしれません。

——それまで頭になかった選択肢だったのにすぐに手を挙げて、周囲に理解されなくても構わず飛び込んで。思い切りが良いですね!

「考えなし」とか「無鉄砲」とも言えると思うんですけど、それを「思い切りが良い」と評価してくださる方が多い会社だなと思います(笑)。私自身は「チャンスが巡ってきたんだからとにかく掴まないと」という一心でした。

自分の仕事が患者さんの喜びにつながっていると実感できる

——現在の仕事内容を教えてください。

カグラの導入を検討されている施設でデモンストレーションを行う際に機器を設置したり、パソコンの中身をカグラ用にセットアップして納品したり、学会発表の際に運営側と機器展示についてやりとりしたり、導入先でエラーが起きた際に対応したり……仕事内容が多岐にわたるので、なかなか一言で言えなくて困っています(笑)。

エラー対応ではまずZoom等でヒアリングをして、場合によってはパソコンを遠隔操作させていただきつつ、考えられる可能性を一つひとつ潰していき、原因を特定します。ほとんどは「Wi-Fiのコンセントが抜けていた」「別の機器を接続していた」といったちょっとしたヒューマンエラーなのですが、原因がわからない場合はすぐに機器を交換し、回収した機器を社内で確認します。今後は機器がどういうタイミングでどういうエラーを起こすのか、データを取って検証していきたいと考えています。

臨床工学技士として王道の仕事ではないかもしれませんが、もともと父の背中を見ながら思い描いていたような仕事ができているので、これからも頑張りたいなと思っています。

——仕事のやりがいはどこに感じていますか?

さまざまな現場でカグラを使ったリハビリの様子を見せてもらっているんですが、素人目でも明らかに患者さんが良くなっていることがわかるんです。歩行訓練の足取りがしっかりしてタイムも伸びて、患者さんも嬉しそうに笑っていて。そういう姿を見ると私もすごく嬉しくなります。「自分の仕事が患者さんの役に立っているんだな」と実感できる環境って貴重だと思いますし、この数ヶ月しみじみと「いい仕事だな」と感じています

リハビリのことを知らない新卒が意見を言っても、誰も否定しない

——mediVRに入社して印象的だったことはありますか?

意見を言ったときに、否定的な反応が全くないことです。まだ業界のことをよくわかっていない21〜22歳の意見でも、みんな一旦受け止めて「なんでそう考えるの?」と耳を傾けてくださるんです。臨床工学技士の先輩方から「職場で上司に意見を言っても取り合ってもらえない」という話を聞いていたので、「どうしてここでは誰も否定しないんだろう」と驚きました。

機器の仕入れも担当させてもらっていて、営業さんの話を聞いて見通しを立て、「スムーズに納品するにはいつまでに何台仕入れてセットアップしておきたい」と原先生に提案しています。もちろん提案がそのまま通るわけではなく、「ここの根拠が弱いね」と指摘を受けることもあります。でも、頭ごなしに否定されることはないから安心して考えていることを伝えられるし、適切なフィードバックがもらえるから「情報収集して次頑張るぞ」と思えるんです。

——否定の多い組織風土だと、だんだん「意見を言わないほうがいい」と思ってしまいますもんね。

オフィスにアイスクリームメーカーやYogiboがあって自由に使えて、ちゃんと期日までに成果を出せば勤務時間中に息抜きをしていても何も言われません。その分、自分で時間を管理して仕事を進めなければいけないプレッシャーはあるし、答えのない仕事なのでよく「どこから手をつけたらいいんだろう」と迷宮入りします。でも、わからないことがあったら部署をまたいでオープンに聞くことができるし、「お手上げです!」と言うとアドバイスをいただけるので助かっています。

それといま、カグラが動く仕組みをちゃんと理解したいと思って、毎週土曜にUnity(※VR用のプログラミングプラットフォーム)の講座を受講させてもらっていて。日曜はずっとその課題に取り組んでいるから月曜の午前中は頭が回らなくて、「話しかけられても反応が鈍いです」と自己申告しています。そういうのも職場によっては「社会人失格」と言われると思うんですが、みんな笑って許してくださるんですよ。

原先生がとても柔軟な方なので、これまで当たり前だと思っていたことや固定観念が日々叩き壊されている感じです。

卒業して半年で、学会に登壇することになるなんて

——9月には、近畿臨床工学会のシンポジウム「臨床工学技士としての挑戦! 職域拡大に貢献しているパイオニアに学ぶ」に登壇されていましたね。

西垣先生が「新しいことをしている臨床工学技士」として推薦してくださったんです。「シンポジウムって何?」「抄録ってどう書くの?」というところからのスタートでしたが、新卒で発表側になれるなんてめったにないことだし、やってみようと思いました。

——発表の内容を教えてください。

臨床工学技士の新しい働き方として、総括製造販売責任者になる道があるのでは、と提案しました。

医療機器メーカーでは必ず総括製造販売責任者を採用しないといけないのですが、人材確保が難しいと言われています。専門学校に通い、臨床工学技士の国家資格を取った私の場合にはなりますが、取得単位を確認したところ新卒の時点で医療機器の責任技術者になる要件を満たしていました。責任技術者になった後、品質管理業務を行い経験年数を積むことで総括製造販売責任者になる要件も満たすことができます。

実際には学校での取得単位数や科目により該当の有無は変わると思いますが、企業就職として一般的な営業職やフィールドエンジニア以外にも、「製造管理・品質管理部門に配属された後、総括製造販売責任者となる」というキャリアモデルが確立されれば、臨床工学技士の活躍の場が増えるのではと考えています。

最近は医療機器を開発して起業する臨床工学技士も増えてきているので、総括製造販売責任者の資格があれば何かと便利ではないでしょうか。

——臨床工学技士の仕事の幅や選択肢が広がるのですね。

もうひとつ、子育て・介護中の臨床工学技士が、在宅勤務/時短勤務でオンラインサポート業務に従事するキャリアモデルの提案もしました。病院ではなかなか時短勤務が難しいと聞くのですが、私がmediVRで行っている導入施設でのエラー対応などの保守管理業務は自宅からオンラインで行うことができます。これから導入施設が増えていったら、新しい人材も必要になるはず。そのときに、医療現場の経験があり、時間や場所に囚われない働き方を必要としている臨床工学技士に仲間になってもらえたら、お互いにとってメリットがあるのではないかと考えています。

自分がチャンスをもらった分、後輩たちに返していきたい

——企業就職を視野に入れた学生から相談を受けることもあるそうですね。

私はmediVRに入れてよかったと思っているし仕事にやりがいを感じているのでその感触を伝えつつ、「まずは病院実習で現場の雰囲気や業務内容をよく見て、その上で自分に合っているかどうか判断してみたら?」とか、「最終的に企業を選ぶとしても、医療現場での勤務経験は強みになるから、一度病院に就職するのも手だと思うよ」といったことも伝えています。私自身が実習でしか医療現場を知らず、いま苦労しているところなので。その一方で、私が知っている範囲で「こういう企業が求人を出しているよ」と教えたりもしています。

——入社して8か月、現在の心境を教えてください。

たまたま臨床工学技士100人カイギを知って参加して、感想を送ったら西垣先生が連絡をくださってTUCESに仲間入りして、TUCESの活動をしていたから臨床工学技士100人カイギで発表の場をもらえて、その動画を原先生に見ていただけて。いまの自分があるのはタイミングやご縁の積み重ねで、奇跡みたいだなって思います。

巡ってきたチャンスを掴んできたつもりですが、それは西垣先生のようにチャンスを与えてくださる方がいたおかげなんですよね。本当に感謝しています。いまは自分のことで手一杯ですが、自分がもらった分、ちゃんと後輩たちに与えていける人になりたいなと思っています。


<mediVR代表・原より>
製造管理部門の将来の役員候補としての臨床工学技士をSNSで募集したのが2021年2月9日でした。募集通知後すぐに業界で名の知れた技師を含む6名からの応募がありましたが、最初から抜きんでた才能を感じた國師さんを初見で即決採用させてもらいました(内定を出したのが2月14日でした)。

入社後はそのポテンシャルをメキメキ伸ばして、想像よりはるかに速いスピードで成長してくれていますし、もともとの能力も一般的な社会人10年目以上の安定感がありますね。

今の時代はインターネットやSNSで情報収集が簡単になった分、自分の頭で考えてどれだけ行動してきたかで新卒入社時点の能力にも雲泥の差が出るような時代に突入しています。頑張った人がより高みを目指せる時代を、國師さんをはじめうちの若い衆には体現していってほしいと思っています。


取材日:2021年12月8日
撮影:山中陽平  執筆:飛田恵美子

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