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21卒(博士)と16卒(修士)の就職活動を経験して思うこと (3/3)

21卒(博士)としての就活と16卒(修士)としての就活を経験したことで感じた様々を記録して投稿する。本稿は三編の最終稿となる。前稿から時間が経過してしまったが、8月初頭になってようやく就職活動を終えたため書き記す。

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(1/3) 21卒就職活動の前半戦 (コンサル&ベンチャー)

(2/3) 21卒就職活動の後半戦 (広報活動の解禁以降)

(3/3) 16卒(修士)と21卒(博士)を経験して思うこと

 -16卒就活と21卒就活-

 -修士就活と博士就活-

 -おわりに-

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-16卒就活と21卒就活-

 21卒就活は新型コロナ感染症の影響で間違いなく就活に大きな変化が起きた。その点も含めての違いとなる。

・インターンシップの重要性

 16卒以上に21卒からはインターンシップなどによる企業への参加が重要となっている。

 16卒のときもインターンシップは企業の採用に関連のあるものであった。インターンシップにも様々あるが、参加可能人数の少ないものほど、そしてインターンシップ用のESの提出があるようなものは就活本番の前にインターンシップ参加者のみの説明会や意思確認をしてもらえるような優遇があり、早期選考のチャンスがあったように思う。

 21卒では、感染症の影響によって採用計画や選考方法に大きな影響もあり、インターンシップ生の囲い込みが強化されたように思う。この傾向は感染症の影響がなくとも今後強化されていくと考えられる。その背景には経団連の指針の撤廃である。企業側は優秀な学生との接触機会を増やしていくだろう。就活に専念した学生ほど就職活動が有利なる。その先に予想されるのは学生間の就活格差大学院の就職予備校化ではないだろうか。

・オンライン面接

 面接のオンライン化は良い変化をもたらした。

 私はオンラインで就活の全てを終えた。オンライン面接の悪い点は、本当の相手(会社)の顔が見えにくいということである。これもまた就活の格差を生むのではないかと思う。私は2回目の就活だったこともあり、内々定の会社を比較する際に、労働条件や転勤可能性などについて採用担当に遠慮なく質問することが出来た。また、複数回の社員面談の機会を設けていただき、詳細な業務内容について聞くことができた。

 しかし、オンライン上で入手できる情報はやはり限られている。オンラインの先にある詳細で精確な情報を記録に残るかたちで積極的にキャッチできるかどうかで、就職活動および就職後のより良い生活が手に入ると思う。特に内々定獲得後には恐れずに積極的に多くの情報をキャッチすることが必要である。

 面接のオンライン化がもたらした変化について、上記以外については良い変化ばかりだったと私は思う。16卒(修士)に比べて、博士という立場ではあったが選考を受けられる数はオンライン化によって間違いなく増えたと実感した。就活生の選択肢は増え、自分にマッチした企業に出会える可能性は拡大したはずである。


-修士就活と博士就活-

 私のまわりでは大学院への進学率が80%を超え、そのうちの95%は修士卒で就職するような環境であった。修士就活が標準であったため、学部卒就活のことは全く分からないということを前提に書き記す。

・博士就活を終えて

 21卒博士就活を終えて感じたことは、博士就活は修士就活に比べて不利ではない。一方で、有利とも言い切れない。煮え切らない答えで申し訳ない。

 博士就活の利点として論理的思考力プレゼン力の高さを目にすることがある。これらは確かに博士課程で必然的に育まれるものであり、修士卒に比べ利点になると思うが、入社時に同年代と考えられる修士卒4年目の社会人と比べて、それらが利点になるかどうかは疑問である。

 また、あまりにも専攻から離れた職業や専攻と関連性の低いベンチャー企業への就職活動をするには学部卒就活の方が門戸は広がっているだろう。例えば、人工知能(AI)を研究で全く利用していないにも関わらず、これから成長しそうな業界だからと注目してAIベンチャーに博士卒で採用される可能性は学部卒よりは低そうだということである。

 博士課程に進むような学生にとって、専門性から離れた職に進みたくなるようなことは度々、脳裏によぎると思うが、それは本意ではないと私は思う。一時的に自身の専門性に飽きているか、論文が通らず学会に辟易しているかというところではないだろうか。博士課程学生で専門性から離れた就職を考えている人は今一度、自分が博士に進学したときの心持と向き合ってみてはどうだろうか。

・修士就活のこれから

 今後の修士就活のことを考えると、博士就活は採用の可能性が高くなるように思う。

 修士就活というのは、これからの時代にとって中途半端な存在になるのではないかと考えている。良く言えばバランスが良いと言えるが、専門性の高さを取れば博士卒には劣り、就職後の成長余白を取れば学部卒に劣るような時代に移行しているように思う。

 今回の感染症の影響もあり、各企業の働き方や財務体質への変化も生じている。それに伴いジョブ型採用という言葉も浮き上がってきた。企業に適した人材を採用するために専門性のマッチする学生を採用する流れや、企業に適した人材に育てるためにより若い学生を採用する流れが加速するように私は感じる。そのとき、修士卒学生が主張できる利点をどこに置くことが出来るのかを考えて、修士就活をしなければならないのではないか。(修士進学前の学生は、たとえ周りに流されたとしても修士に進学する理由を自分なりに腑に落としておく必要がある。)

博士就活の最大の利点はやはり専門性の高さでしかない

 博士課程で育まれる論理的思考力はその会社で必要とされる適切なレベルにあるかは分からない。それは、レベルに達していない場合だけでなく、高い論理的思考力が必要な会社ではない場合が往々にしてあり得るからである。

 プレゼン力もまた同様である。その会社独自の報告方法もあれば、プレゼンを頻繁に任される年齢に達するまでにそのレベルが社内で平準化されることのほうが創造に容易である。つまりは自己研鑽に他ならなくなる。

 我々博士学生は、当然のように修士4年目と同程度の社会人力を有し、かつ業務内容分野について当然のように高い専門性を有している必要がある。

 社会人力専門性の高さがバランスよく高いレベルにある事が求められているのだと思う。さらに、意識すべきは同じタイミングで就活をする修士卒に対する能力ではない。

 それらの能力を博士課程のなかで意識して育むことが就活をより良く終える近道になるだろう。つまりは研究だけでもダメということになる。乱暴な言い方にはなるが、研究だけで就活を上手く乗り越えられる人は、アカデミックな研究機関のほうが向いているのではないだろうか。博士課程学生として学外や学会外の社会に自分自身を曝して社会的評価を与えられ、その評価と謙虚に向き合う経験を自分自身で生み出していく必要があるのだろう。

 

-おわりに-

 私は21卒(博士)として10社近くの内々定をいただくことが出来た。これはこの度の感染症の影響で、「就活期間に研究ばかりが出来る生活ではなくなったこと」「就活のオンライン化により、多くの企業の選考を受けることができたこと」が要因であると考えられる。

 感染症の影響なく、16卒(修士)のときと変わらない就活が行われていたならば、限りなく少ない内々定先から就職先を検討することになっていただろう。就職時に30歳となる私にとっては選択肢が多いことは大変な幸せであったと思う。

 博士就活の最大の難点として、入社予定日の前に学位が取得できない場合に採用が取り消しになる可能性がある。これは博士就職にとって避けられない、かつ解決が期待されない課題である。

 私が決断した就職先企業も学位が取得出来なかった場合に、採用取り消しになる可能性がある。博士課程学生の運命として受け入れてはいるが、不安は拭えない。

 博士就活をするにあたり、多くの情報をインターネットから収集した。私が多くの方の経験や知識を参考にしたことで少しずつの自信を蓄積して就職活動に臨むことが出来たように、本稿が少しでも誰かのためになると嬉しく思う。

 最後にはなるが、なるべく早く此度の感染症拡大が落ち着き、新しい生活様式なのか、従来型と変わらない生活なのかは分からないが、それぞれの人が前を向いて未来に歩んでいける日々が来ることを切に願う。

(おわり) 2020.8.10

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