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見られる動画コンテンツを作りたければ、「流入元」も考える。動画コンテンツマーケティング考。

※この記事は、「スケダチ公式ブログ」に 2014/12/18 14:06:00 に公開されたものの再掲です。


宣伝会議の『ブレーン』の2015年1月号は『シェアされる動画 その発想と企画』というもの。

その中でPARTYの川村真司さんが、

『動画を最後まできちんとみてもらうために、つくり手は何をするべきか』

という文章を書いていて、なるほどそうだよな、と思いながら、また本特集には書かれてないような「動画コンテンツを使ったマーケティングやコミュニケーションプラニング」への知見と経験が自分にはあったので、それをここでシェアしてみたい。いわば動画を使ったコンテンツマーケティングに関するTIPS。

それはいわば、川村氏の話が「一本の動画をどのように見られるものにするか」ということだとすると、これから書くことは、もう一つの「見られる」ための方法論である。

ちなみに以下に書くことは、私、高広自身が、日本で初めての動画広告の開発と実施、「日産自動車 WebCINEMA TRUNK」 のようなネット上での視聴を目的としたネット動画企画、(当時FLASHなどを用いた)インタラクティブなオンライン動画コンテンツ企画/ソーシャルメ ディアと連携した動画コンテンツ企画などを代理店からフリーのプロデューサーとなるまで手がける際に考えたこと、及び、Googleに勤めていた際に、 Google VideoやYouTubeに携わった経験などを通じて得られた実体験から来るもので、単なる仮説ではない。

さて、その方法論だが、一言にすると、

”流入元を考慮して企画する”

ということである。

例えば、もう何年も前になるが20XC『谷間戦隊ラランヌ』といった動画を使ったコンテンツの場合、流入経路がソーシャルメディア経由であることを想定していた。

この企画を行う際に立てた仮説が例えば、“フォローしている人のツイートに入ってたリンクをクリックして、当該サイトのコンテンツを見に行った場合、その他からのサイト来訪と比べて、滞在時間が長くなるのではないか?”

というものだった。

Twitterでフォローしている人のツイートは、時として endorsement (推奨/支持)として機能する。この場合、「この人がリツイート(ないしはメンション)してるのだから、きっと面白いのだろう」といった意識が働くはずだ、と考えた。

この結果はその後幾つかのプロジェクトを通じても同様であり、endorsement効果が働く箇所からの流入の場合、ふらっとその動画にたまたまやってきたような場合と比べ、長く見てもらえる可能性が高いということがわかった。

この考え方をもっとも反映したプロジェクトが『20XC』であり、このケースでは、http://www.20XC.jp/ というサイトを訪れて見る場合の動画とツイートからのリンクから見られる動画を変えた。実際に試してもらった人には気づいた人もいるかもしれないが、この サイトに来た人がこのサイトを通じてツイートしたときに含まれるリンクをクリックすると、そのフォロワーは http://www.20XC.jp/ のトップページから見る動画ではなく、「予告編」的な動画を見ることになるような仕掛けを行っていたのである。

『谷間戦隊ラランヌ』については、Twitterと連動したサイトだったが、このサイトに参加するのに他の友人2名を連れてくるというルール付けを した(もちろんこの場合、メンションされることになる2名にとっても嫌われないような構成にしなければいけないが、この点については今回は触れない)。こ の「連れてくることができる2名」というのは「自分のフォロワーのうち2名」という構成としたのだが、その理由は、自分がフォローしている相手を連れてき ても、自分は良くても相手はこちらのことを知らない可能性だってあるので、あまりよい勧誘の仕方とは思えないし、知らない相手からのリンクはクリックもさ れないだろうし、クリックされたとしても滞在時間が長くなることが想定できない。それゆえ『20XC』の時と同じように、”自分の知っている人”からのも のとして、それが作用して滞在時間が長くなることを想定して企画してある。

また『谷間戦隊ラランヌ』については、サイト以外にYouTubeにあげられたCMが存在しており、これについてもソーシャルメディアからのトラ フィックの最適化が行われるような”テスト”を行った経緯がある。それは、YouTubeにあげた動画の「タイトル」と説明文の最適化である。

YouTubeにあげた動画のタイトルと説明文の最適化というのは、検索結果がマルチフォーマット(=テキストコンテンツだけではなく、画像や動画 もひとつの検索結果に出るということ)の時代においては、検索エンジン最適化の一環としても有効なのだが、それはあくまでも「検索エンジン」に対する最適 化であって、”人がどう反応するか?”ということに関する最適化ではない。

そこで『谷間戦隊ラランヌ』のケースでは、一つの動画に対して複数タイトルを準備し、短縮URLをそれぞれに発行して、どのタイトルがもっともク リックを稼ぐのか?をモニターし、その中からもっともクリックを稼いだものを最終的なタイトルとして選んだ(これは一度公開した動画について、タイトルを な何度か変えて新たにトラフィックを得ることにも役立つ)。つまり、もっともクリックされたタイトルは、見たくなるタイトルである、という考え方である。 (『ラランヌ』の場合は短い動画だったのでそれまで考慮する必要はなかったが)これらに加えて、どのタイトルから来た人が最も長く見てもらえるかまで考慮 すると、流入元から考える動画マーケティングができあがる。

また、古いケースではあるが、今でも有効だと思われるのが『WebCINEMATRUNK』 のケースで、(東京インタラクティブアドアワードの受賞作紹介サイトでは書いていないが)実はこのプロジェクトではサイトへのトラフィックの多くを「ネッ トPR」で稼いだ。今でこそ、各媒体へ配信してくれるPRプラットフォームがいくつも存在するが、2003年〜2004年の当時は、そうした配信サービス ではなく、各媒体・各メールマガジンなどに取り上げられるように、ある戦術を実行に移した。それらからの流入を重視したのは、当時ですら広告経由での滞在 時間は記事経由での滞在時間に勝てないと考えていたからである。

さて、その「戦術」だが、それは「媒体社向けのプロジェクトの広報サイトを作る」というものだった。各媒体の記者やライターにはこの広報サイトの URLとログインするためのパスワードを提供し、そのサイトに行くと、記事に使える画像や説明文の例を何パターンも準備し、それらを自分たちなりに加工し てもらうことができるようにしたのである。結果として、数多くの記事が出て、そこからトラフィックを稼ぎ、そして上記ショートフィルムを見るための動画プ レイヤーのダウンロードの数を稼いだのである。

これらのケースは、10年前から3〜5年前のものではあるが、キュレーション型のメディアやYouTuberのような存在が出てくるような動画コン テンツ状況になってる現在でも有効である。それは、それぞれのメディアやプラットフォームの形式に依存するだけの考え方に基づくものではなく、「人々がど う考え、どう動くのか」に基づいて考えた方法論だからだ。

また、上記のような”流入元をどう考えるか?”という視点は、動画広告においても重要なポイントであることは一言ここに書いておく。

今、動画マーケティングやクリエイティブに携わる人にも、動画マーケティング・動画広告界でのバズワードに誘われてそれらのビジネスを行うだけでなく、本質的に「人はどう考え、どう動くのか」ということに「なぜ?」をぶつけて企画をしていって欲しいと思う。

その一つの体現が、流入元からコンテンツを考えるということであり、流入元による滞在時間の違いやそれぞれにコンテンツを企画するかどうかということなので。

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