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治療院立ち上げ日記 Episode 2.1

ぶじにあん摩マッサージ指圧師の国家試験に合格し、晴れて国家資格を取得することができました。ここまでに要した時間は専門学校の3年間と、およそ400万円の学費です。
しかしそれ以上に、同じ道を志す同期や先輩、後輩と出会えたことが、専門学校に通ったことの何よりの財産となりました。

鍼灸、マッサージの専門学校を卒業すると、働く環境は多岐にわたります。
昔ながらの個人でやっている治療院に勤務する者。
エステやリラクゼーションのチェーン店で働く者。スポーツトレーナーの道を志す者。そして2000年当時に介護保険制度が始まったのに合わせて雨後の筍のようにできた高齢者を対象とする訪問マッサージ業界に進む者。。。
おなじ「あん摩マッサージ指圧師」という紙切れ一枚なのに、これほどまでに進む業種、施術する対象が異なるのも珍しい資格です。

教員養成科で学んだこと

私は縁あって、代々木にある鍼灸マッサージの教員養成課程に進むことになりました。そこには、「指圧」というガラパゴス化された世界で過ごしてきた私が初めて体験する「鍼灸」という未知なる世界がありました。
元来が食わず嫌いなのか、鍼を打たれることが嫌だったのか、せっかく受講した鍼灸の授業はなかなか身に入りませんでした。
徒手療法(Manual Therapy)のみを行ってきた私にとって、鍼(Acupuncture)の基礎知識が不足していることが大きな要因だったと思います。
陰陽、五行など初歩の初歩は知っているのですが、その先の中医学の治効理論となると、もうチンプンカンプン。講義の時間はありがたいお経を聞いている時間に早変わりします。

少なからず分かったのは、古く4000年の昔から続いてきた鍼灸は歴史の淘汰を経て残っているということ。それ故、経験に基づいて体系化された理論があること。しかし一方で、地域や社会背景によってその内容は時代とともに変化しているということでした。

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例えば、古典の傷寒論という本には、まだ地球の気温が寒かった時代、衛生環境が整っていない時代に書かれた内容のため体を温める方法が記されているのに対して、時代や場所が変わると温病(うんびょう)という概念が生まれて体を冷やすための方法を記した書物が現れています。
おなじインド発祥の「カレー」でも、イギリスに渡れば英国風カレーになるし、日本に入ってくれば馴染みのあるわが家のカレーの味がします。たまにはネパール人が経営している店でインドカレーを食べたくなりますよね。
そのように、環境や時代によって生命を診ること、健康でいることの概念は少しずつ変化していくということを知りました。

裏方としての景色

養成科の授業は朝9時過ぎに始まり、終了は午後4時頃。
そのあとに指圧学校へ戻り、夜間部の授業が行われている時間帯には事務員として学生の対応をしていました。21時に夜間部の授業が終わると、それから校舎の戸締りをして帰宅します。
この話をすると「大変でしたね」と口々に言われるのですが、養成科の修業年限は2年間と目途がついていたこと。そして新しいことを学び、仲間と経験が増えていく喜びのほうが大きかったため、まったく苦にはなりませんでした。

それまで学生という立場だったのが事務員という立ち位置に代わると、学校という景色も少しずつ見え方が変わってきます。
学生でもなく、とはいえ教員でもない立場は両方の気持ちを理解できる。
だからこそ、自分が教員になったらこういう授業をしたい、という夢が広がります。
誘いを受けて養成科に進んだことが大きなきっかけですが、そもそもの決断は「私は手技を指導することができる」というちょっとした自負からでした。それは社交ダンスをしていて身体を扱うこと、教えることに慣れていた背景が拠り所となっていました。

教員養成科も2年目に入ると、事務員だけではなく夜間部の実技の授業で助手をするようになります。
そこで教員が指圧を教えているのを眺めながら、私なりにどうやって手技療法を伝えて行くとよいかを模索する日々が始まりました。

手技療法を学ぶには幾つかの段階があります。
私見となりますが、ここではその手技を指圧として記します。

1.指圧を受けて、手技そのものを体感する
2.指圧する手順を覚える
3.指圧するための身体の操作方法を身につける
4.同じレベルの者どうしで練習する
5.先生や先輩に手技を受けてもらいフィードバックを得る
6.3~5のサイクルを回していく

およそ上記のような流れが繰り返されて、手技そのものがブラッシュアップされていきます。
1.の段階では「誰から受けるか」がその後に大きな影響を及ぼします。生まれたてのヒナが初めて見たものを親と認識する過程です。
2.の段階は、通りいっぺんの授業やテキスト、または動画教材があれば覚えられるでしょう。

技術が磨かれるためには、3と5の段階がとても重要になります。
私が師事した師匠からも、どこをおすか(場所)や何回押したか(回数)ではなく「どう押すか」で結果がまるで違う、と聞かされていました。
自分の腕や足、体幹をどう操作して受け手の一点に圧を加えるか。ここを体系的に理解して身につけることで技術に再現性が生まれます。

そして、手技療法は相手がいてこそ提供できるものです。
自分のしている手技を受けてもらい、施術後の身体の変化を確認したり、感じたことのフィードバックをもらったり。一定の期間に繰り返し3~5のサイクルを行うことが、いわゆる「修行」に相当します。およそ指圧に限らず、カイロや整体やマッサージなどの手技療法を身につける過程はこれに準じています。
ところが助手をしていた実技の授業では、4をただ繰り返すのみで「繰り返しやっていれば体で覚える」というものでした。(つづく)

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physical, mental, spiritual and social well-beingに生きるお手伝いをしています。2020.3に独立開業しました。家族を大切にし、一人ひとりが生き生きと人生を楽しめる社会が訪れるといいなと思いながら綴っています。

スキありがとうございます!ご縁に感謝です(^0^)
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あん摩マッサージ指圧師。都内で1人治療院をしながら技術指導をしています。専門学校教員⇒介護施設勤務⇒訪問マッサージ教育研修⇒整体院を開業。未病のうちに体を整えて家族が笑顔になるお手伝いをしたい。料理好きなボールルームダンサー/座右の銘【肉体は魂の宿る殿堂】