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「育児を理由に」の許容範囲

昨日は新薬の説明会があった。こんな御時世だからオンライン。しかも視聴再生できるらしい。
「今日の出る?視聴再生できるよ」と同僚に尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「でも、視聴再生24時までなんですよね…厳しくないですか?」

彼女は一歳になる子供を持ちながらフルタイムで働くママさんドクターだ。
彼女曰く、リアルタイムの講演開始19時は食事の真っ最中、そのあと寝かしつけると自分も寝落ち、落ち着いて視聴できるのは、午前外来を終えた「明日の昼休み」予想だそうだ。

…たしかに。ごもっとも。

オンラインになって非常にありがたい一方で、「欲を言えば、あとココをなんとか!」という場面はまだあるのだろう。

24時まで再生可能なら、あと12時間ほど視聴時間を延ばすことは可能なのだろうか。長くすると、その分だけ手間は増えてしまうのだろうか。

詳しい事はわからないが、一応、担当者には相談してみよう。

女性でありながらも、子どもを持つまでは全く気づかなかった。そして子どもを持った今でさえ、こういう時にハッとさせられてしまう。

その一方で「育児を理由に」はどこまで許されるのか、その許容範囲に明確な答えが出せないでいる。他の人と同じ採用基準をクリアして、ここに立つのなら、周りと同じ、若しくはその上を目指す気持ちでなければいけない。「子どもが〇〇だから」を常態化してはいけないと自分には言い聞かせている。

しかし、子どもが全ての律速酵素と化す日常で、以前のような結果も出せなくなる。
「もう、最初から60点目指すか」
そんな気持ちになる。「育児を理由に」して、目標の目線を変えると気持ちは少し楽になる。

でもやっぱり、それではいけないのだ、と思う。

デスクには、〆切2日前にして3割しか出来ていない和文の依頼原稿がこちらを睨んでいる。英文を溜め込むのは以前からの悪い癖だと自覚しているが、和文で〆切を過ぎたことはなかったのに。次男出産の入院真っ只中で引き受けてから早3ヶ月。育児が忙しくても、3ヶ月あれば書けるはずだった。これ以上、60点を目指し続けると落第点になりそうだ。

先日のミーティングで「もし、すべての制約がないとしたら、ゴールに到達するためにどういう道を描きますか」と投げかけられた。
「育児を理由に」しない、その視点だけは常に片目に持たせねばと反省した。

「ママーッ!事件だよ!マシーンが部屋に入らない!!」

背後から夫の叫び声が聞こえる。

「筋トレしながら子ども達の面倒もみられる!ママも楽になるよ!」と言って「育児を理由に」説得させられた筋トレマシーンがどうやら部屋のスペースに収まりきらなかったらしい。

やはり、「育児を理由に」の許容範囲を広げ過ぎてはいけないのだ。

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