ラジオの現場から

放送レポート298号(2022年9月)
石井 彰 放送作家

他局や異業種の人たちともっと交流を

 6月に開催された民放労連全国ラジオ会議に参加して、いくつか感じたこと、考えたことを記しておきます。コロナ禍でもあり、会場参加24人、オンライン参加21人。現場人員が削減されてラジオ業務が忙しさを極める中、第2部パネルディスカッションの進行者として、まず参加者にはとても感謝しています。
 なるべく個別局の話題からラジオ全体の課題が見えるように企図したつもりですが、うまく展開できたこともあれば、空振りしたこともありました。元FM東京報道部長の石井育子さん、琉球放送アナウンス室長の狩俣倫太郎さんを招いて、FM局とAM局、キイ局と地方局が交差する地点から、普遍的な課題と具体的な解決策を提示したかったのです。
 石井さんは「音声メディアとしてのラジオの価値を高めること」を力説しました。幼少時から映像メディアに囲まれ育った若者たちにとって、音声メディアのラジオは新しいものであると同時に、なじみのない、とっつきにくいものでもある二面性を持っています。だから完成度の高い番組の提供が求められています。
 狩俣さんは、コロナ禍だからこそ新しい挑戦が求められていると語った。担当番組の開始前に局を飛び出して国道沿いに立ち、番組名を書いたボードを掲げて広報する地道な努力をしていることに驚きました。自分が担当する番組を1人でも多くの人に聴いてもらいたい、知らせたいというこの熱意が、高聴取率番組の秘訣なのでしょう。
 もうひとつは、番組毎の収支を社内で共有して、担当する番組が儲かっているのか、損を出しているのか。現実を見つめる姿勢が今更ではあるが見習いたいものです。
 さて地方各局との討議では、有料課金制度の困難さが浮き彫りになりました。番組収入が先細りする中、各局ではSNSを使った有料配信を試みています。ただ思ったように参加者が増えなかったりして、断念した局が多くありました。
 ここでも琉球放送では、人気パーソナリティーと有料オンライン飲み会を実施し、7~800人の参加者がありました。参加費も1,000円から1,500円と強気の設定。成功の理由を尋ねると「まず無料で何回か試して、参加者数に手応えを感じ有料化した」と狩俣さんは説明。ラジオはリスナーとパーソナリティーの結びつきに強いものがあり、かつてパーソナリティーと行く外国旅行なども数多く開催され、人気を集めました。テレビにはない強みを活かしたもので、形は変わっても、ラジオから生まれた好企画です。
 こうした討議をしながら、切実に感じたのは、もっとラジオ関係者に他局との交流が必要だ、ということ。成功例だけでなく、むしろ失敗例こそ広く共有して、知恵の財産にしてほしいのです。
 日常業務の忙しさにかまけて、つい他局や異業種の人たちとの交流は後回しになっていないでしょうか?明日の番組の準備も大切だが、1年後、3年後のラジオを考えて、もっと横議・横行を提唱します。
 どうすれば新たなパーソナリティーを発掘したり、育てられるのか。生ワイド番組に変わる、新しい番組スタイルはないのか。タイム・スポット以外の売り方だってあるのではないでしょうか?
 毎回社内の同じ人たちと議論しているだけでは、新しいアイデアや優れた実践は生まれてこないでしょう。テレビほどネットワーク機能が強くないラジオだからこそ、労働組合にお手伝いができるはずです。全国ラジオ会議から交流が生まれ、組合はラジオの役に立つことが実感されれば、組合も活性化します。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?