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8月18日(日)メディア日記

 17日夜の「NHKスペシャル」で物凄い番組が放送された。観終わってしばらく放心状態だった。 「一億特攻への道」~隊員4000人人生と死の記録~。
担当したのはNHKエンタープライズの大島隆之ディレクター。ナレーションも大島自身が担当した。太平洋戦争の後半、多くの若者が連合国軍の艦船に体当たり攻撃を行った特攻。それは日本中を奮い立たせ、やがて「一億特攻」と名を変えて、軍部はこれを国民のスローガンに仕立て上げた。番組では長期に及ぶ取材で特攻隊員約4000人の本籍地や経歴を徹底的に調査した。隊員がどのように選別されたのか、これまで謎だったその実態に迫る極秘資料も入手した。この資料発掘には、15年にわたって取材を積み重ねてきた大島隆之の執念が凝縮されていた。そして、浮かび上がってきたのは、当時の日本人が「特攻」を希望とみなし、国のすみずみまで熱狂が支配していく様だった。その背後には軍とメディアによるプロパガンダや、特攻を軍部内の力学に利用しようという思惑があったことを番組は明確に指摘していた。
 ことしのNHKの終戦特集は例年にくらべ、いずれも秀逸だが、「一億特攻への道」はまさに別格。個人的には今年のドキュメンタリー番組の最高峰に値すると確信した。

 前号の日記で長崎原爆祈念式典にイスラエルの招待をめぐってややエキセントリックに書いてしまったが、新聞OBの友人から原爆式典に関し冷静な見方を示す懐の深いメールをもらった。以下、全文・・・。
「ヒロシマ・ナガサキが、第二次世界大戦の負の出来事として、ホロコーストと並んで世界に認識されている(勝手にそう思っています)のは、被害が大きく、新兵器(核)の持つ底知れぬ悪魔性もあってのことでしょうが、それだけでなく、使ってはならぬ、持ってはならぬ、と小さな島国から発信し続けてきたこれまでの努力があってのことと思います。ホロコーストに対して、政治的な立場の違いによって賛否が分かれることがあり得ないように、ヒロシマ・ナガサキも賛否を論ずる余地はありません。どちらも二度と起こしてはならない。ですから、広島と長崎の毎年の式典は、政治的な色をつけてはなりません。私はそう考えています。
 国連をはじめ、平和をめぐる会合や式典はいずれも各国の思惑がからみ、政治色にまみれて駆け引きに終始しています。しかしヒロシマ・ナガサキは政治の思惑を超越して、世界の国々を集わせる吸引力をもった催しです。気に入らないからといってボイコットすれば、その刃がブーメランのように自らに向かってくる力をヒロシマ・ナガサキは持っています。イスラエルを招待しなかったことに反発して、欧米の6カ国の大使は長崎の式典を欠席しました。
 しかし、東京の増上寺で同時刻に催された長崎原爆殉難者追悼会には米、英、イスラエルの大使が出席しています。ブーメランの力を削ごうとしたのでしょう。自分たちの信ずる宗教とは異なる宗教の催しにわざわざ出席し、手を合わせざるを得ないほど、欠席=無視はできないのです。これはヒロシマ・ナガサキの持つ訴求力であり、特殊性といえます。であるならば、ヒロシマ・ナガサキは政治色を排除する努力をすべきです。それはどんな紛争当時国であろうと、ロシアもベラルーシも含め、ともかく招く。ヒロシマ・ナガサキは現在の紛争にコミットする立場にはないことを鮮明にする。そのうえで、「平和を求める」集会に異議があり、再び核兵器を使っても仕方ないと考えるなら欠席すればいい。この立場で押し通す。理想論と感ずるかもしれませんが、世界規模の平和集会で、政治色を排除できる可能性があるのは、ヒロシマ・ナガサキ以外に考えられないでしょう。この可能性は求めないとならないと思うのです。岸田首相は長崎がイスラエルを招待しなかったことについて、「長崎が主催の行事で、政府がコメントする立場にない」と逃げました。これは皮肉なことに渡りに船で、地方自治体の主催だからこそ、国際政治に振り回されず、目的にまっしぐらの式典を催せるということになります」。

 映画「太陽がいっぱい」などに出演したフランスの俳優、アラン・ドロンが死去したと親族が18日明らかにした。88歳だった。仏メディアが伝えた。(共同通信) 
 筆者の現役時代は、アラン・ドロンと言えば二枚目スターの代名詞のような俳優だった。もう故人だが、先輩に田中秀樹という名カメラマンがいた。いつもウィットに富む会話で周囲を笑わせていたが、自分の小さな娘に「パパの名前は、本当はアランドロンというんだよ」といつも刷り込んでいた。ある日、中野の本屋で父と娘が離れ離れになったとき、娘は大きな声で「アランドロン!アランドロン!どこにいるの?」と大声で探し回った。本屋の店員の笑い声の前で、さすがに父親は出るに出られなかったという。アランドロンの名前を聴くといつもこの話を思い出してしまう。

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