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【口が裂けても言いたい話】「虚無とあきらめの物語」

Netflixオリジナルムービー「バブル」を鑑賞。そう遠くない未来、原因不明の「降泡現象」によって日本全国が謎の泡に包まれ、その後、東京だけが泡の影響から逃れられず、水没都市となってしまった世界を描く近未来SFである。

ネトフリのオリジナルムービーだけあって、グラフィックのクオリティはさすがのレベル。冒頭からこれでもかと躍動的なシーンが続き、片時も飽きさせない。水没都市、世界の消滅という重苦しい主題を扱っているにもかかわらずキャラクターの会話はコミカルで、悲壮感を微塵も感じさせない。

沈みゆく東京で停滞した毎日を送っている主人公の日常は、「ウタ」というひとりの少女と出逢うことによって少しずつ動き出していく。天真爛漫で言葉を持たなかった人魚姫・ウタは、王子様である主人公に恋をし、言葉を獲得することで感情を豊かにしていく。互いに心通わせる2人だが、彼らを待ち受ける運命は悲惨で悲しいものだった……。

「バブル」という作品をひと言で言うと、あきらめの物語である。作中にはきちんとした起承転結があり、大きな謎が提示されるのだが、ラストになっても主人公を取り巻く環境、現実は少しも好転しない。せいぜい、差し迫った危機がほんの少しだけ先延ばしにされるだけだ。謎の泡は依然として東京に絶え間なく降り注いでいるし、水没都市という悲しい運命もそのままである。これが80年代のアニメなら、泡をもたらす原因は勇気あるヒーローによってきれいに片づけられ、主人公たちの運命も明るく切り開かれる、というわかりやすいハッピーエンドをむかえていただろう。「運命は変えられない」という重低音のようなメッセージは、新海誠監督の「天気の子」にも通じるものがある。

運命は変わらず暗いにもかかわらず、主人公たちはどこまでも明るく、はつらつとしている。「パルクゲーム」に興じる彼らの姿は刹那的でもあり、日本が背負う現実を考えると示唆的でもある。
 
映画そのものは納得のクオリティであったが、ただひとつだけ、随所に性的なメタファーが織り込まれているのが気になった。ジャパニメーションはどうしても、「エロく」なければならないのだろうか。

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