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コロナ疲れが医療者のパフォーマンスに与える影響とは

新型コロナウイルスの対応、情報収集が通常業務に上乗せされ忙しい日々が続いている。医療関係者は疲れていても休めない人が多いと思うが、疲労にはパフォーマンス低下や重大な悪影響の原因となることが報告されている。忙しい時だからこそ疲労管理を見直す機会にしてみてはどうだろうか。

パフォーマンス低下の背景には疲労がある

何か間違った行為(エラー)をすると、誰がどんなことをしたかの行為にばかり注目が集まる。しかし、その背景には、なぜそのよう判断をしたか「認知的機能」と精神的・肉体的状態の「生理的機能」がある。

認知的機能の要因としてはマルチタスクやタイムプレッシャーがあり認知的負荷が大きくなるとエラーをしてしまう。

生理的機能の要因は疲労である。航空業界では事故要因の1つとしてパイロットの疲労が注目されている。国土交通省航空局発行のサーキュラー No.4-020「安全管理システムの構築に係る一般指針」では疲労を以下のように定義している。

航空機の安全運航にかかる業務を遂行するにあたり航空機乗務員の注意力や能力の低下を招く、睡眠不足、長時間の覚醒、サーカディアン周期(生体リズム)またはワークロード(精神的または肉体的な活動)に起因して、精神的または身体的なパフォーマンスが低下した生理学的状態をいう。

この定義を医療に落とし込むと当直中の医師、夜勤中の看護師を代表とする医療スタッフは常に疲労状態だといえ、ヒューマンエラーの原因となり医療の質・安全に影響を与える。

疲労がもたらす医療の質・安全への影響

疲労すると視野が狭くなる、記憶力が低下する、反応速度が遅くなるといった影響がある。これはいかに優れた医療者であっても共通である。能力が低下し、質が高く安全な業務をおこなえる状態ではなくなる。

人間の体内時計が持っているリズムをサーガディアンリズムという。サーガディアンリズムの機能は眠りと体温のコントロールである。体温が低くなった時に眠くなり注意力が低下する。医療者の夜勤はサーガディアンリズムの観点からエラーが起こしやすくなっている。

ビル・ゲイツのオススメ書籍である「睡眠こそ最強の解決策である」には睡眠が医療事故に関係していることが記されいる。例えば、「前日に最低でも6時間は寝ていない医師がメスを握ると、臓器に傷をつける・大量出血などの深刻なミスを犯す確率が、十分に睡眠をとっているときに比べて170%上昇する。」また、「一睡もせずに30時間のシストをこなした後の研修医は、十分に睡眠をとったときと比べ、集中治療室での診断ミスがじつに460%も増える。」と書かれている。

疲労や睡眠不足が事故の原因になっていることから睡眠管理がパフォーマンス向上に不可欠であるといえるが、コロナウイルス対応に関係なく今の医療現場では個人でできる睡眠管理には限界があるだろう。ちなみに航空業界では疲労管理が安全管理の一部とされ、乗務時間と休養時間の基準があり制度として管理されている。

コロナウイルスがもたらすバーンアウト(燃え尽き症候群)

コロナウイルスに対応している医療者においてもバーンアウト症状が問題になってくるのではないかと懸念している。Maslach(1976)はバーンアウトを「極度の身体疲労と感情の枯渇を示す症候群」と定義している。アメリカにおいては医師の30%から40%がバーンアウトを経験していたと報告されている。

バーンアウトが医療の質・安全に与える影響も報告されている。看護師のバーンアウトが尿路感染症と手術部位感染症と関連があり、バーンアウトが減ったことで感染症発生が低下したと報告されている。医師と看護師を対象とした調査では、バーンアウトの影響による情緒的消耗感が患者の死亡率と関連しているとも指摘されている。

コロナ疲れでパフォーマンスを下げないためにできること

先ほども述べたが、疲労管理にできるのは睡眠管理である。コロナウイルス最前線で働く医療者にとって現実的ではない対策だとは承知だが可能な限り睡眠を取ることが一番だと考える。最低でも6時間の睡眠を取らなければパフォーマンスが低下するといわれている。

バーンアウトへの対応としてマインドフルネスやポジティブ心理学が着目されている。こちらも個人だけではなくチーム・組織として組込むのが今後の課題だといえる。

疲労管理で自分を労ることが、医療の質・安全管理に繋がり患者の命を救うことになると考える。またコロナウイルス感染拡大防止という点でもなるべく心身の健康に気をつけ、パフォーマンを維持することが重要である。

最後に

疲労による影響を改めて見直す機会になれば幸いです。しかし、その対策は実施することが難しい方も多くいらっしゃると考えます。ですが疲労による影響を知ることで少しでも行動に変化があればいいと考え執筆しました。

最前線で働く医療関係者の皆様には心より敬意を表したいと思います。最前線で得られた情報を収集し、私もできる限りの準備をしていきたいと考えています。

もし、このnoteを読んでいる非医療従事者の方がいらっしゃいましたらお願いがあります。不要不急の外出は控えてください。不要な外出をされる方のニュースが流れるとそれだけでコロナ最前線の医療者の心が砕ける恐れがあります。感染をしないさせないためにも、医療現場の助けるためにも宜しくお願い致します。

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