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【過去エッセイ】『たかいみみ』を買った

※2021-01-30/はてなブログ(ヒガシノメーコ記)で掲載したエッセイ。

わたしは普段から自宅で仕事をしているので、コロナウイルス感染拡大の影響で仕事様式が大きく変わった、という実感はさほどない。けれど、その中でも唯一”良くない変化”と言えるものがあった。
それは「音」に敏感になるようになってしまったことだ。

そもそも、昔から「音」は気になる方だった。物音や違和感のある音に気づくのも早い方だったと思う。誰かが机を叩く音、貧乏ゆすり、咀嚼音など、本人が無意識に出している音がすると集中力を削がれて苦痛だった。

もっと遡ると、わたしは子どものころ救急車の音を耳にすると「ピーポーだ!」と必ず反応を示したそうだ。ときには母が聞き取れないほど遠くで鳴る、救急車のサイレンに反応していたこともあるという。
というのも、わたしは子どものころ出産間際の母のお腹の中で死にかけ、救急車に乗ったことがあるそうだ。そのとき嫌というほどサイレンの音を(母のお腹の中で)聞いていたため、わたしは小さい頃から救急車の音に反応し、ほかの音にも反応するようになってしまったのかもしれない。

そんなわたしは、マンションの一室で仕事をしているわけだけど…。日々仕事をしていると周りの住民たちの生活リズムも分かってくる。当然、住民たちがちょっとうるさい時間帯なんかもある。ただわたしに生活があるように、彼らにも生活があるのだ。目をつぶらなければいけない場面もある。

しかし、コロナの影響で彼らも「自粛」「自宅待機」「在宅ワーク」を余儀なくされた。つまり住民たち…特に上階の住民の生活様式はガラリと変わってしまったらしい。その結果、目をつぶれなくなるくらい、わたしの部屋の天井からは日々”騒音”がするようになってしまったのだ。

はじめの半年くらいは、昼夜問わず騒音祭りだった。走り回る、飛び回るようなドスンドスンという音もして、そのたびに電気がビリビリと震えた。普段、無音または静かな音楽を流して仕事をしているわたし、この騒音が耳に入らないわけがない。とてもじゃないが自宅で作業できる状態ではなくなった。
ところが、残念なことにわたしは自宅以外で仕事ができない人間だった。カフェや図書館など、ほかの人間がいる・耳慣れぬ音が聞こえる場所では気が散ってしまうので、仕事場は自宅以外ありえなかった。

とうとう頭に来たわたしは、この騒音が「いつ頃からはじまったか」「毎日どの時間帯に音がするのか」「音の種類」「騒音による被害(仕事ができない/不眠等)」「上階の住民にどうして欲しいのか(対策の提案)」をまとめた書類を作り、大家と管理会社に相談する。しかし、ぜんぜん相手にされないという悲しい結果になる。
その後も懲りずに何度か大家・管理会社に相談し、騒音のする時間帯が徐々に絞られていったが、とはいえ相変わらず音に敏感なわたしを苦しめるのに変わりはなかった。なんというか、もうこの頃には音という音がいろいろダメになっていた。というより、これまで見て見ぬふりをしていた「自分は音がダメ」という事実に気づいてしまった、という方が近い。

さらに上階の騒音だけにとどまらず、隣人が夜中に突然自身のパートナーと会話をはじめ、大笑いをするよという新たな騒音も加わる。日によっては昼間から大声で会話をしていることもある。わたしはこの「話し声」というのもまったくダメだった。そのときは毎年恒例、夏の不眠症の真っ最中も相まって、本当に気が狂いそうだった。


ただ、まったく対策を取らなったわけではない。自分なりに研究して、低音がよく出る音楽を流すと隣人の会話がうまくかき消されるのを発見したり、耳栓愛用者からオススメの耳栓を教えてもらい試したりした。そのうち、イヤホンで直接音楽を聴くことで、全体的な騒音がそこそこ緩和されると気づいた。また自分の耳にフィットする耳栓も発見した。そこで騒音状況に応じて音楽をイヤホンで聞く、または耳栓をするようになった。

けれど、音楽を聴き続けるのも、耳栓をし続けるのも、本当は疲れるのだ。できるなら、それらをせずに作業したり、昼寝をしたいものだ。だから、虫の居所が悪いときはこれらの対策が余計自分を疲れさせてしまい、すべてがダメになる日もあった。(そういうときに打つべき手は、散歩に行って気分転換したり、美味しいごはんをテイクアウトして機嫌を取ったりすることである…)

年が明け、国が再び緊急事態宣言を出した。極端に悪化することはなくても、隣人も上階の住民の騒音も相変わらずだった。そんな中、運悪く虫の居所が悪い日が来てしまう。わたしの精神は参りに参り、ああもうダメだと「Amazon | 本, ファッション, 家電から食品まで 」を開いたのである。そしてポチったのである。
―――これを。

【Bose Sleepbuds II ノイズマスキング 睡眠用イヤープラグ/ ¥33,000】

実はこれ、前からチェックしていたイヤープラグ。しかも2代目・改良版らしいのだ。スピーカーといえばBose、あのBose社が作った耳栓ならさぞかし良いんだろうなぁ…と思っていたのだけど、わたしにとってはすぐに手を出せる値段ではない。けれど、もう限界だった。近隣住民の立てる騒音のために高級耳栓を買うのは若干腹が立つが、自分の精神を守るために必要なのである。ポチッと購入決定ボタンを押した。少しだけ動悸がした。

………翌日きた。

早速開けてみる。
「こ、これが3万越えの耳栓………」という感じ。ケースの表面はマットな素材で高級感がある。

お外からやって来たこともあり、とってもひんやりしていた。
スライド式に蓋が開く。オ、オシャレ!!

この下の5つのポチが充電残量を表している。そしてこのケースのお尻にケーブルを指すと、このケースに入れたままイヤープラグの充電ができる。

また、このイヤープラグは専用アプリをインストールする必要がある。まず、耳栓に名前(6文字)が付けられるというので、『たかいみみ』と名付けた。これからよろしくな、たかいみみ。

このアプリでアラームなんかも設定できるぞ

ちなみにこの耳栓は、ノイズキャンセリングをするのではなく、”雑音を再生することで、周囲の音をマスキングする耳栓”なのだそうだ。だからアプリ内ではこんな風に、ノイズをマスキングする音が入っている。一晩中流すこともできれば、60分など時間を指定して再生停止することもできる。

このほか「風景」は日常の環境音などが、「静けさ」はやや音楽よりの音が入っている。中でも風景に入っている「Tumble Dry(ドラム缶乾燥機が動いている音)」なんかは面白いと思った。

さて、わたしはこのたかいみみをフル充電すると、その日の夜、早速使用して寝てみることにした。
装着した感じは、けっこう……よい。
思ったよりも密閉間があり、普通の耳栓だと良い角度を見つけるのに少し苦戦するだけど、たかいみみはスムーズにシャットダウンしてくれるかんじ。特に音を流さなくても、普通の耳栓として快適に使えそうだなぁと思った。

ちなみにアプリでバッテリーの様子なども分かるよ

就寝時は水の音的なやつのノイズマスキングを流しながら寝ることにした。この時点では若干、半信半疑だった。たしかに装着感は悪くないけれど、快眠できるのかしら…と。

床につき数十分が経った頃、ノイズマスキングを水の音的なやつからキャンプファイヤー(薪が燃える音)に変えた。あまり音が大きいと疲れそうなので、わりとボリュームを絞る。だから、パチパチというキャンプファイヤーの音越しに、加湿器のポコポコという音が少し聞こえている状態。「本当にこれで寝れるのかなぁ~~~~」ともう一度疑問を抱きながら、そのパチパチ音に集中する。

……数分後、なんとなく、「悪くないな」と思っている自分に気づく。遠くの方にまどろみが顔を覗かせている感じもした。もしや、この音に癒されている……???
ちょっとドキドキしながら、また音に耳を傾けていると…………………いつの間にか寝ていた。

翌日―――昼頃起床。めちゃくちゃ寝た。
実はアラームを設定していたこともあり途中で一度起きたんだけど、「Tumble Dry(ドラム缶乾燥機が動いている音)」を流したら速攻寝た。それからもうずっと寝た。正直、こんなにぐっすり寝たのは久しぶりだったかもしれない。
寝ている間にたかいみみが取れることはなかった。ただ横向きで長時間寝ると、やはり耳栓が圧迫するので耳が少し痛くなる。(わたしはけっこう横向きで寝るので、余計に痛かった)なので、できれば仰向け寝が良いんだろうな。慣れればもう少しうまく使えそうなので、引き続き愛用していきたい。

そんなわけで、たかいみみは非常に優秀なアイテムだった。就寝時以外にも使えるので、実際この記事を書いている現在もわたしはたかいみみを装着している。そう、わたしは3万越えの耳栓をつけながらこの記事を書いているのだ…………

何だか商品レビューのようになってしまったけれど、このコロナがもたらした「音」問題を、たかいみみが救ってくれた!という素敵なお話を皆さんに届けたかったので、この記事を書けて非常に満足している。

生活様式、仕事様式が変わることで、周りの住民もみんなストレスを抱えているんだと思う。そうだと分かっていても、わたしにとって「音」は苦痛だったし、そのせいで住民たちを必要以上に恨んでしまいそうになった。でもそういう状況を、耳栓ひとつで緩和できるなら、打たない手はない。(その代わり、たくさん働かなければいけないけれど!!)
もし「音」で苦しんでいる方たちがいるなら、ぜひこのアイテムも視野に入れてみてください。お読みいただきありがとうございました。

◎ちなみに1560円で5年保証(自然故障対応)にも入れます、わたしは入りました。

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