庭園美

東京都庭園美術館の魅力とルネ・ラリック展について

庭園美術館の最大の特徴 建物自体が美術品

庭園美術館は、旧住宅が美術館になっている珍しいケースだ。
都内には旧朝倉家住宅(代官山)や旧岩崎邸(上野)といった、昔の住宅を公開している場所もあるが、
「美術館」として、館内で作品を展示して展覧会を開催しいる旧住宅は稀だ。
これは、建物自体が「美術品」として評価に値するからだろうか。

伝統的な日本家屋(先ほど挙げた旧朝倉家住宅や、各所にある神社)や、
最近、活発化している都市開発で、雨後の筍ごとく生まれる先進的デザインの高層ビルなどを
見慣れた私にとって、庭園美術館の本館(旧朝香宮邸)は異質な建築様式だった。
外見はこれでもかというほどシンプル、内観もシンプル要素はありつつ細やかな豪華さがあり、
建築って芸術なんだ!アール・デコって美しい!と思った。

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【1枚目:客間から2階に上がる階段ホール 2枚目:2階のベランダ】

そもそもアール・デコって何ぞや?
前時代のアール・ヌーヴォと対極な幾何学的スタイルが強調された諸芸術のデザイン・様式。
”諸芸術”という言い方をするのは、絵画・彫刻などの美術に留まらず、建築や日用品、服飾など諸々のものも対象に入るから。
また、アール・ヌーヴォとよく比較されるのだが、アール・ヌーヴォの表面的な華麗さへの懐疑から生まれたものの、アール・ヌーヴォの印象を残し作品によっては区別が難しいと個人的に思っている。

アールヌーヴォ

アールデコ

ルネ・ラリック展

フランス装飾美術の精神「ラール・ド・ヴィーヴル(生活の芸術)」をふんだんに受け継いだ、ルネ・ラリックのガラス工芸品を展示した「ルネ・ラリック展」が開催されていた(2020/2/8時点)。

ルネ・ラリックは、アール・ヌーヴォの時代にジュエリーを手がけ、その後芸術性と実用性を兼ね備えた独自のガラス作品によって、アール・デコの新時代を創出した、フランスを代表する芸術家。
彼が構えたガラス工房は現在も続いており、グラス・香水などを手掛けている*1。
さらに日本国内では、箱根ラリック美術館などラリック作品を所蔵する美術館が多くある*2。

展覧会の感想
作品・装飾の形の美しさはもちろんのこと、光や見る角度によって色彩・印象が様変わりする彼の作品に終始うっとりしてしまった。
特に、ルネ・ラリックが好んで多用した宝石オパールのように乳白色をした「オパルセント・ガラス」。
反射光では青みを、光を透かすと赤みを帯びる。自然光がたっぷり入る庭園美術館だからこそ、このオパルセント・ガラスの魅力が最大化されていたと思う。
綺麗すぎて、長時間一つの作品の前で左右上下に動きまわって鑑賞してしまい、他の観覧者にとって迷惑なやつだったかな、と後で反省。
また、「トーキョー」と名付けられた東京をモチーフにしたグラスは本当に欲しくなった。

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【1枚目:香水瓶 2枚目:《バッカスの巫女》オパルセント・ガラス】

*1 LALIQUE https://lalique.jp/
*2 箱根ラリック美術館 http://www.lalique-museum.com/common/about/index.html



歴史に語れ継がれる1900年パリ万博にて、宝飾作品で功績を得た直後、50歳にしてガラス作品に転身したルネ・ラリック。
過去の業績にしがみつかず、次時代の潮流を読み先端をゆく彼の素晴らしき生き様やガラス製法の奥深さなど、本展で得た学びについて語りたいことは山々・・・。それはまた今度。