J2-第18節 愛媛FC 対 ギラヴァンツ北九州 2020.09.09(水)感想

01_スタメン

 夏の終わりを駆け抜けた5連戦第2ラウンド4戦め。
 東京ヴェルディ戦でみるものを戸惑わせたマンツーマンディフェンスによって、今節はその守り方がこれからのスタンダートとなるのかと注目された愛媛FC。ただ試合前に川井健太監督は、前節はやり方をかえたのではなく、より強調したのだと説明している。だがやはり、愛媛は戦い方をかえたのだと認識されているきらいはあった。ところで上のスタメン図はJリーグ公式の3バック予想での布陣に拠っている。だが試合序盤、様々な形に変化していくことになる。
 破竹の勢いで9連勝したあとに2戦勝ちのないギラヴァンツ北九州。それでも2位を堅持しつつ、今節勝利すればV・ファーレン長崎を抜いて首位へよじ登る可能性をもつ。
 北九州にとってもう1本竹を割る勝利がほしい一戦は、愛媛にとっても自分たちのスタイルの行く末を占われるような試合となった。
 J2第18節、愛媛FC対ギラヴァンツ北九州の試合をざっくりとふりかえっていく。

 試合がはじまってみると、愛媛は3バックではなく、前節同様[4―4―2]で臨んだようにみえると気がつく。
 対する北九州はディサロ燦シルヴァーノ選手をトップに据え、町野修斗選手がトップ下の[4―2―3―1]だった。愛媛のGK加藤大智選手もふくめたビルドアップにはサイドハーフもくわわった4人で高い位置からプレッシングをかけにいった。
 そのとき北九州の陣形で空いてくるのが中盤。ボランチふたりに対して愛媛は川村拓夢選手と横谷繁選手、そして中盤に下がってくる森谷賢太郎選手の3人で数的優位をつくった。立ち上がりはとくに横谷選手が前線4人の背後でパスを受けることで北九州をひっくり返す場面がみられていた。うまくプレッシングをはずしていたのに、前からくるなら蹴ってしまえばいいといわれてしまうのは遣る瀬無かったが。
 さて、[4―4―2]でスタートしたようにみえた愛媛。しだいに3バックの様相をていしてくる。ただ、いつもの[3―4―2―1]ではなく、ボランチが3人の[3―5―2]らしかった。3ボランチの中央に川村選手がはいり、左右に山瀬選手と横谷選手がはいる形。そして丹羽詩温選手と森谷選手の2トップ。ただ守り方に変化があった。[3―5―2]なのでウイングバックが下がった[5―3―2]でブロックを敷くことになるのだが、右ウイングバックの清川流石選手は最終ラインだけでなく、ときには横谷選手の脇に位置して[4―4―2]ぎみに守ることもあった。清川選手は相手のビルドアップ時、2列めからスプリントしてサイドチェンジを牽制することができる。彼が北九州の左サイドに睨みを利かせることで、ボールの前進を右サイドに限定し、ビルドアップを詰まらせる狙いがあったのかもしれない。

 12分には北九州のビルドアップにプレッシングをはめこむことに成功。横谷選手がファウルをもらう。北九州のビルドアップに対抗できる気配を示した場面だった。そのフリーキックから西岡大輝選手がヘディングシュートを放ったが、GK永井堅悟選手の好守にはばまれた。
 愛媛としては相手陣内でのプレー時間をふやしていきたいところだが、このフリーキックでのチャンス以降、なかなか自陣からでていけなくなってしまった。その要因のひとつがボールを奪ったあとのパスがあわなかったこと。パスミスやトラップミスが起こり、くりかえし北九州に攻めこまれる時間がつづいた。そんななかでも、丹羽選手がポストプレーで攻めあがる時間をつくることもあった。
 ところで、北九州がボールをもつ時間帯、森谷選手と丹羽選手の位置が左右逆になっているときがあった。左に森谷選手で、右に丹羽選手。これによって右サイドがアプローチのはやい丹羽選手と清川選手の組み合わせとなった。なおかつ、右サイドでボールを奪えれば、ポストプレーが効いている丹羽選手を狙いやすい位置関係でもあった。丹羽選手が右にはいり、森谷選手が左や中央にくる守り方はこの試合しばしばみられるようになった。

 なかなか相手陣内へはいれないでいた愛媛だったが、29分にチャンスをつくる。自陣左サイドでボールを奪うと、即時奪還を狙う北九州の守備網を突く縦パスが横谷選手から山瀬選手へはいる。山瀬選手からボールを預かった丹羽選手が清川選手へ展開。フリーの清川選手はドリブルでおおきく前進した。
 清川選手がフリーでボールを運べたのは北九州の中盤が人数不足になっていたからだ。北九州は前線4人にくわえてボランチふたりも前へでていたため、左サイドバックの永田拓也選手が中央の森谷選手をみることになっていた。さらに山瀬選手をつかまえにセンターバックがとびだしていたため、最終ラインは3人だけになっており、とても清川選手にまでは手がまわらなかった。
 北九州の攻めるような守り方をかいくぐってつかんだチャンスだったが、得点にはいたらなかった。清川選手のアーリークロスはよかったし、それをファーサイドで長沼選手が折り返したのもよかったのだけれど、そのパスがよわくなって山瀬選手にとどかなかった。とはいえ、いちど深くまで攻めこめたことで愛媛が北九州陣内でプレーする時間となった。北九州の高い位置でのプレッシングをかいくぐり、空きやすいサイドから攻めあがっておしこむ――これは愛媛が狙っていた攻撃だったのだろう。
 相手陣内でボールを保持する機会をえた愛媛だったが、残念ながら、ふたたび北九州がボールをもつとすぐにおしこまれてしまう展開となった。中央をふさいで攻めあぐねさせることもできていたが、2ライン間を突かれてペナルティーエリア内へ進入されることもあってひやひやした。それでも決定機まではつくらせず前半を終えた。
 ところで、ロスタイムに丹羽選手がワンタッチでロングサイドチェンジのパスをだしていた。あまりにもあっさりとやっていたけれど度肝を抜かれた。

 ハーフタイムで愛媛は選手交代をおこなう。清川選手に代わって忽那喬司選手が出場し、左ウイングバックにはいった。代わりに長沼選手が右ウイングバックへ移動した。
 後半立ち上がり、愛媛は前半同様ボランチまででてくる北九州のプレッシングを回避して攻めこむ場面をつくった。
 だがチャンスをつくったのは北九州。51分、サイドチェンジのパスを永田選手がカットすることで愛媛陣内でのボール保持にうつる。左サイドからのコンビネーションで崩しにかかるのだが、その動きが愛媛のコンビネーションと似ていた。
 似ていると感じたのは、ボールをもったボランチの髙橋大悟選手に対して、タッチラインぎわに椿直起選手が、2ライン間に永田選手が位置どることでパスコースをふたつつくっていた点。ボールホルダーのために前方にふたつ以上パスコースをつくろうとするのは、愛媛もよくやっている動きだ。この場面では、タッチラインぎわの椿選手がパスを受けて内側へはたいたのだが、永田選手と町野選手がかぶってボールを失うことになった(永田選手には裏へ抜けることで茂木力也選手を引っ張り、寄ってきた町野選手に空間をあたえたかったのかもしれない)。だが、愛媛がつなごうとするとすぐさまプレッシングを開始。こんどは前にでるボランチによってボール奪取に成功した。もっとも、愛媛もボールをとり返すと反攻にでて、永田選手が上がってきたぶん空いているサイドからカウンターを打っている。

 前半のように北九州にボールをもたれる時間がつづいたものの、危険な場面を愛媛はつくらせなかった。ライン間をコンパクトにし、なおかつ高いラインをたもって中央をつかわせなかったからだ。2ライン間に顔をだす選手へのパスコースは、インサイドハーフとボランチが協力してよくふさいでいた。
 すると北九州はディフェンスラインの裏を狙うようになる。愛媛のディフェンスラインを強制的に下げさせて、間延びした2ライン間で前向きの選手にボールをもたせようとした。これによって愛媛はペナルティーエリア内までブロックを押し下げられてしまうこともあったが、そのぶん北九州のサイドにできる広大な空間をつかってカウンターを打つ場面もつくっていった。
 しかしながら先制点を北九州が奪う。
 62分。自陣でのボール奪取からロングパスをディサロ選手へ。ディサロ選手の落としを町野選手がひろうと、間延びした2ライン間をドリブルで前進してから、右サイドを上がってきた新垣貴之選手へパス。新垣選手はペナルティーエリア内で仕掛けてからシュートを放つと、そのこぼれ球が福森健太選手のもとへ。福森選手は西岡大輝選手のよせに耐えてマイナスのクロスを入れ、中央にいた町野選手がワンタッチできめた。

 愛媛は66分にふたり同時に交代して(藤本佳希選手と三原秀真選手が、西岡大輝選手と横谷選手に代わって出場して)攻勢にでた。この交代から愛媛は[4―4―2]へ変更。有田選手と藤本選手の2トップで、森谷選手が右サイドハーフへうつった。はいったばかりの三原選手は左サイドバックで、右は長沼選手だった。前線の人数をふやしたことで、ふたたび愛媛は高い位置からプレッシングへいくことができるようになった。これ以降北九州は自陣でボールを保持する機会がめっきり減った。だからといって北九州ゴールに迫る回数がふえたわけでもなかった。2トップが前線でボールをおさめてはいたのだけれど。
 80分には忽那選手に代わって吉田晴稀選手。帝京長岡高校から今季加入したルーキーのJ初出場となった。
 というところで試合は0―1のまま終了。北九州は3試合ぶりの勝利を挙げ、愛媛は連勝とはならなかった。

 この試合の勝利でギラヴァンツ北九州は首位に躍りでた。対して愛媛FCは20位に後退。なかなか勝ちに乗れない時がつづく。
 最後までお読みいただき誠にありがとうございました。

 試合結果
 愛媛FC 0―1 ギラヴァンツ北九州 @ニンジニアスタジアム

 得点者
  愛媛:
  北九州:町野修斗、63分