J2-第7節 愛媛FC対FC琉球 2020.07.25(土)感想

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 愛媛FCは前節と同じく[3―1―4―2]。アンカーが川村拓夢選手から田中裕人選手に代わった。前線も西田剛選手から丹羽詩温選手に。
 FC琉球は小野伸二選手が今季初出場。しかし残念ながら7分に負傷交代していて心配。代わりに出場したのは池田廉選手。
 J2第7節、愛媛FC対FC琉球の試合をざっくりとふりかえっていく。

 たちあがりからボールを奪いにいく愛媛。しかし奪えない。これまでであれば相手に蹴らせてこぼれ球を回収といきたいところでつなげられてしまう。さすがは琉球といったところだが、それは愛媛が琉球の選手たちをつかまえきれない状況にあったからともいえる。
 この試合でよくみられたのが、プレッシングをかける愛媛の前線と中盤のあいだで琉球の選手がフリーでパスを受ける場面。
 琉球はサイドハーフが高い位置をとることで、愛媛のウイングバックを最終ラインにおしさげていた。これが意外だった。琉球は両サイドハーフが内側へ絞って、サイドバックを高い位置へおしあげる戦い方をしていたと記憶していたから。
 サイドハーフが幅をとって高い位置にいることで、愛媛のウイングバックがおしさげられる。すると琉球のサイドバックがフリーになれる範囲が広がる。
 愛媛は[5―3―2]でかまえるので、サイドバックへよせにいくのはインサイドハーフのどちらかになることがおおい。しかし距離は遠い。忽那喬司選手と渡邊一仁選手が猛然とサイドまで走っていく場面がみられている。つまりめっちゃ大変そう。大変なうえに、インサイドハーフがサイドへでていくと困ったことも起こる。それが中央での数的不利だ。琉球は中央にボランチふたりとトップ下の選手で合計3人。愛媛も中央は3人だけれど、ひとりがサイドへでていけば2対3になってしまう。愛媛は琉球のひとりあまる選手をつかまえることができず、1―2列めでプレッシングを回避されてしまうことがおおかった。

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 ただし、トップ下の池田廉選手をセンターバックがでていってつかまえることで数的不利を解消する場面もあった。15分にはそうしてボールを奪ってからショートカウンターを打ち、忽那選手がゴール右下隅を狙ったシュートで琉球ゴールを脅かした。ここはGKカルバハル選手が好守をみせた。ところで琉球のホームで実況を務めるあったゆういちさんはGKカルバハル選手のことをダニーと呼ぶ。ホーム感があってすてき。

 琉球は守るとき[4―5―1]になる。ただしボールがどこにあるのかによって変化する。自陣でブロックを敷くときは上里一将選手がアンカーになる[4―1―4―1]。ハーフウェイライン付近でかまえるときには池田廉選手が田中裕人選手をマークする[4―4―1―1]ないし[4―4―2]。
 愛媛はなかなかボールを奪えなかったが、それでもマイボールにできると落ち着いて前進。茂木力也選手や前野貴徳選手がロングパスでサイドチェンジしたり、1―2列めのあいだをつかって琉球の2列めを動かしたりした。
 左の長沼洋一選手のところから前進することもおおかった。長沼選手、森谷選手、忽那選手の3人でサイドに数的優位をつくっていた。琉球の右サイドバック田中恵太選手はもともとサイドハーフの選手。しかもゴールゲッターでもある。愛媛としては彼を守備に専念させたいところ。
 愛媛は左サイドからのコンビネーション、もしくは右サイドでフリーになる西岡大志選手からのクロスでチャンスをつくっていた。ところで今節は長沼選手が中央へ進入してプレーすることはすくなかった。謎は深まる。

 35分に愛媛はピンチを迎える。相手陣内までおしこんだものの、ペナルティーエリアの手前でパスをカットされてしまう。そのボールをつながれると、阿部拓馬選手がからだをひねりながらワンタッチで逆サイドへ展開。茂木駿佑選手が抜けだし、カットインからシュート。コーナーキックを得る。すこしズレはしたが、阿部選手のパスにはおどろかされた。
 このコーナーキックでスコアが動く。ただし決めたのは愛媛のほう。
 愛媛はコーナーキックで守るとき、ペナルティーエリア内にフィールドプレイヤー全員がもどってくる。すべてのコーナーキックを憶えているわけではないが、そういうことがおおい。高さを前線の選手でおぎなうのと、こぼれ球をひろいやすくするためであろう。もちろん前線に人がいなくなるためカウンターへもっていきにくくなるし、相手がエリア内に人数をかけらやすくもなるのだが。
 コーナーキックで守るときは前線に3人張らせればいい。そうすれば相手は守備に4人を残さなければならないから――そういったのはヨハン・クライフだったか。2017年にピーター・ボス監督率いるボルシア・ドルトムントが埼玉スタジアムで浦和レッズと対戦したとき、まさにコーナーキックで前線に3人張らせていたのを憶えている。浦和は4人を守備にまわさなければならず、ペナルティーエリア内に5人しかいられなかった。にもかかわらず興梠慎三選手と遠藤航選手がゴールをきめたけれど。さすがに3人はやりすぎなのだろう。
 愛媛はめずらしく森谷賢太郎選手を前線にひかえさせた。なので琉球は上里選手と田中恵太選手のふたりを後方に残した。
 キッカーの茂木駿佑選手があげたクロスは愛媛ディフェンス陣がかきだす。そのこぼれ球に反応したのが忽那選手。ヘディングでそらすと、森谷選手がそのボールによせていく。背後には田中恵太選手がついていた。森谷選手はボールにふれずに受け流すかたちでスルー。ボールは田中恵太選手にも触れることなく流れていった。これをひとりスルーパスのかたちで忽那選手がひろってドリブル。ヘディングしたあとしっかり走りだしていた。これで忽那選手の前にいるのは上里選手のみとなる。さらに忽那選手に加勢がくわわる。前野選手だ。前野選手ははじめニア側のポスト前にいた。ボールが頭上を越えていくと、ボールがこぼれてきやすいエリアへ移動して動向をうかがう。忽那選手がドリブルを開始するとすぐさま全力で走りだした。これで上里選手に対して2対1の状況をつくった。あとは解説の大西貴さんがおっしゃっていたとおり、忽那選手はドリブルで外へふくらみカットインする余地をつくる。同時に前野選手へのパスコースも確保。だが選んだのはシュート。上里選手の股を抜きつつ、足にあたったことで変則的となったシュートはGKカルバハル選手の逆をついた軌道でゴールマウスへ。忽那選手の2試合連続弾で愛媛が先制した。

 38分には琉球がゴールに迫る。
 愛媛が自陣右サイドからスローインを得、同サイドから前進しようとする。しかし失敗してペナルティーエリア手前で風間宏矢選手にひろわれてしまう。
 すると猛然と田中恵太選手が上がってきてパスを受ける。さらにゴール前へ迫り、あずけた阿部選手からボールがこぼれてきたところでシュートをはなった。しかしGK岡本昌弘選手がビッグセーブ。それでもピンチは終わらない。クリアしたボールがこんどは茂木駿佑選手にわたってシュートされる。だがこれはポストへ直撃。その跳ね返りに茂木駿佑選手と池田廉選手がつめるも田中裕人選手が防ぐ。それでもボールはゴールマウスへ。だが最後は前野選手がヘディングでかきだすことに成功した。危ないあぶない。

 1―0で折り返した愛媛。後半立ち上がりには自陣でのパスミスでピンチを招くこともあったが、琉球陣内でのプレッシングがはまってチャンスをつくる場面もあった。センターバックが上がって琉球の中盤に人数をあわせる守り方だった。
 49分にはコーナーキックの流れから長沼選手がロングパスを対角に入れ、ファーサイドであわせた森谷選手が中央へ折り返す。ゴール前で田中裕人選手があわせて追加点とおもわれたが、ボールは上へ飛んでバーを越えてしまった。
 54分には琉球にチャンスをつくられる。田中恵太選手がサイドでボールを受けるとスルーパス。なぜか最終ラインで3対3の状況になってしまっていた愛媛は、間延びしすぎたディフェンス間をつかれて阿部選手に抜けだされてしまう。キーパーとの1対1。絶体絶命のピンチだったがGK岡本選手がふたたびのビッグセーブをみせてくれた。
 愛媛の最終ラインが3人になっていたのは、それもセンターバックが西岡大輝選手ひとりであとはウイングバックふたりの状況になったのは、琉球の中盤に人数をあわせた守備による。この場面で茂木力也選手と前野選手の位置はボランチぐらいの高さになっていた。だからといって、代わりに最終ラインを埋められる選手がいるわけでもないので、ふたりが前へでた場所はそのままになっていた。でもなぜふたり同時に前にでたのだろう?

 しだいに愛媛は2列めの選手たちに疲労がたまっていく。中盤が空くようになっていき、2ライン間をつかれて自陣へおしこまれる展開になっていった。
 62分に丹羽選手に代わって有田光希選手が出場する。川井健太監督が選んだのは、中盤の強度をとりもどすのではなく、前線の活動量をあげて中盤を助ける方途。なおかつ前線で有田選手に陣地を回復する起点となってもらうこと。またブロックも[5―3―2]から、2トップのどちらかが2列めのサイドへ下がる[5―4―1]に変化した。
 中盤の人数をふやした愛媛だが、それでも琉球の攻撃を抑えて自分たちの流れにもっていくことはむずかしかった。2ライン間の選手をつかまえきれなくなり、ずるずると自陣へおしさげられてしまった。
 68分。そうしておしさげられ、なおかつ2列めも整わないところで、中央の阿部選手へ縦パスを入れられてしまう。阿部選手はよせをはじき返してドリブルで前進。ディフェンスラインの裏へボールを送りこむ。抜けだしたのは茂木駿佑選手。左足でマイナスのクロスを中央に送ると、あわせたのは後方から飛びだしてきた風間宏矢選手。しっかり流しこんで同点に追いついた。
 琉球は直後に選手交代。風間宏矢選手と茂木駿佑選手に代わって富所悠選手と古巣対戦の上原慎也選手が出場する。
 愛媛も73分に選手交代もおこなう。忽那選手、西岡大輝選手、田中裕人選手に代わって川村選手、池田樹雷人選手、西田選手が出場する。池田樹雷人選手はそのまま3バックの中央にはいった。フリーキックではしっかりターゲットとなり、守備ではハイボールを跳ね返しつづけた。

 終盤は愛媛がボールをもち、琉球がカウンターからチャンスをつくる展開に。86分にはクロスに上原選手が飛びこんでビッグチャンスとなったがわずかにあわなかった。
 87分に岩井柊弥選手が渡邊一仁選手に代わって出場。今季初出場となった。
 ロスタイムには前野選手が中盤でボールをひろってそのままドリブルでペナルティーエリア前まで運び、有田選手のおしいシュートまでもっていった。この時間帯でも前線まで走りつづける前野選手に敬服。
 90+3分に琉球も最後の選手交代。阿部選手に代わって小泉佳穂選手が出場する。小生、小泉選手がすこし気になっている。というのも、エルゴラッソの選手名鑑によれば、彼はJリーガーでただふたりしかいないBUMP OF CHICKENのファンだからだ。もうひとりのファンは福島ユナイテッドFCで今季スタメンを張っている吉永大志選手。ふたりは前橋育英高校の同級生でもあるという。教室や部室の片隅で「バンプマジいいよな」と語りあう未来のJリーガーたちの姿があったのかもしれない。
 ところで、福島にはほかにも前橋育英出身で同級生の河西真選手と、1学年下の吉田朋恭選手がいる。ふたりは産業能率大学でも先輩後輩。河西選手は埼玉のクマガヤSCで茂木力也選手とプレーした仲だったりする。また小泉選手の仲良しはだれかといえば、いまをときめくセレッソ大阪の坂元達裕選手につながる。坂元選手も前橋育英出身の同級生。5、6年前の前橋育英高校、いったいどうなっていたんでしょうか?
 試合は1―1のまま終了。愛媛は連敗を3でとめた。

 今季初の引き分けとなった愛媛FC。勝ちきれなかったのは残念だが、2試合連続で得点できているのは吉兆か。ふたたび連戦がはじまるなか、体力が厳しくなっていくのをどう乗り越えるのかが問題。若手選手たちが大活躍するチャンスなんじゃないかい?
 小泉選手は好きな本に米澤穂信氏の『いまさら翼といわれても』を挙げている。「小市民」シリーズも読んでいるのか、小生、気になります。
 最後までお読みいただき誠にありがとうございました。またね。

 試合結果
 愛媛FC 1―1 FC琉球 @ニンジニアスタジアム

 得点者
  愛媛:忽那喬司、36分
  琉球:風間宏矢、69分