J2-第6節 京都サンガF.C.対愛媛FC 2020.07.19(日)感想

01_スタメン

 愛媛FCは前節から3人変更。川村拓夢選手をアンカーに据える[3-1-4-2]だった。古巣対戦となる有田光希選手と田森大己コーチがベンチに控える。山瀬功治選手と横谷繁選手は残念ながらベンチ外。
 京都サンガF.C.も3人変更している。元愛媛の安藤淳選手が右センターバックにはいり、森脇良太選手は怪我でベンチ外だった。黒木恭平選手と、愛媛FCユース出身の曽根田穣選手もベンチ外で残念。
 J2第6節、京都サンガF.C.対愛媛FCの試合をざっくりとふりかえっていく。

 ふだんの3バックでは[3-4-2-1]の愛媛。しかし今節はアンカーをおいたかたち。京都のフォーメーションにあわせてミラーゲームにしたともとれるがはたして。
 京都の1-2列めのあいだを川村選手だけにした意図は、おそらく京都の中盤をおしさげるため。もちろんビルドアップが息苦しそうなときにはインサイドハーフの渡邊一仁選手と忽那喬司選手がおりてくるけれど、そうでないときは京都2列めの端やや斜め後ろに位置することがおおかった。これで中盤の両脇、金久保順選手とレナン・モッタ選手が前へでていくのを牽制。すると最終ラインの選手がパスではなくドリブルでボールを前進させるよゆうが生まれる。

02_インサイドハーフのピンどめ

 愛媛の3バックに対して京都は2トップでむかいあう。ただ宮吉拓実選手は川村選手をマークしているようだったので、ピーター・ウタカ選手対3バックという状況になることもあった。ただウタカ選手がボールホルダーへ厳しくよせる場面はすくない。ふたりの距離はひらいていることがおおかった。自陣でブロックを敷くときも、ふたりは中央に陣取っているというよりパスの逃げ場をけそうと動く。なので1-2列めのあいだが横にかなりひらいており、愛媛の選手たちはよくそこへ顔をだしてサイドからパスを受けていた。
 京都の1-2列めをつかえるので中央から攻撃する機会もふえる。だが2ライン間をつくような場面はあまりみられなかった。というのも1-2列めが空いているのと対蹠的に、2-3列めのあいだはかなり狭かったからだ。あと森谷賢太郎選手へつけるパスが庄司悦大選手にカットされる場面もさりげなくおおかった。
 ということで愛媛の前進はペナルティーエリア手前20メートルぐらいまでで、あとはクロスという選択肢になる。ただその選択はやむにやまれずというより、しっかり準備してのことにもみえた。というのも愛媛は2ライン間に人を送りこめていたから。この試合では、右のインサイドハーフにはいった渡邊一仁選手が中央と外とのあいだに位置していることがおおかった。そこはこれまで愛媛が攻めあがったときに空きがちだった場所である。渡邊一仁選手が2ライン間の内側にいることで、前野貴徳選手や長沼洋一選手がクロスを上げるときのターゲットがふたりになる。渡邊一仁選手と西岡大志選手だ。となればクロスを西岡大志選手が折り返して渡邊一仁選手がゴール前で詰める場面なんかもつくれる。京都のディフェンス陣はヨルディ・バイス選手が186センチと高く強靭だが、180センチを越えているのも彼だけ。バイス選手を避けた空中戦なら勝てなくもないという狙いがあったのかもしれない。

 愛媛の両サイドはかなり流動的。とくに茂木力也選手の位置どりはつかみにくい。センターバックとして相手の1-2列めのあいだに位置してカウンターのケアをしていたかとおもえば、ディフェンスラインの裏へ飛びだしてクロスを呼びこみもする。そのときは渡邊一仁選手が代わりに下がっているのでむやみにリスクを負っているわけでもなさそう。ポジションの入れ替わりは西岡大志選手とも起こるので、右サイドに関してはだれがどこにいるというより、〈いま・ここ〉に人がいるという約束事があるようにみえる。
 対蹠的に無秩序な顔をみせるのが左サイド。とくに長沼選手。今季頻繁にみられるのが彼のサイドから中央への移動。ボールをもってカットインという場合だけでなく、気づけば2ライン間にいてパスをひきだすこともある。彼の代わりに忽那選手や前野選手が幅をとることもあるが、かならずしもそういうわけでもない。ということで長沼選手が中央へやってくると愛媛の攻撃は幅よりも厚みをもつ。この試合では中央でフリーになった長沼選手がディフェンスラインの裏へロングパスを送る場面がみられた。長沼選手の位置どりには中身のわからない箱のようなふしぎがあるけれど、チームメイトはあたりまえのようにプレーしているのだからなにかしらルールがあるのだろう。茂木選手なんかは長沼選手が前をむけばためらいなく裏へ走っていくし。
 相手陣内へおしこめているけれど、決定機まではつくれないもどかしさのまま0-0で前半は終了。

 後半から京都が前からボールを奪いにくるようになった。だが愛媛はその勢いをついて51分に先制点を奪う。
 西岡大輝選手がドリブルで運んでから2ライン間の渡邊一仁選手へ縦パス。渡邊一仁選手はワンタッチで中央の森谷選手へ。森谷選手もワンタッチでディフェンスラインの裏へスルーパスをだし、ペナルティーエリアの真横で追いついたのは西岡大志選手。西岡大志選手もワンタッチでクロスを入れれば、飛びこんできた忽那選手もワンタッチでシュート。GK若原智哉選手に防がれるもこぼれ球が忽那選手のもとへ転がり、こんどはしっかりゴールマウスへ流しこむ。ワンタッチの連続できめた1点だった。
 嬉しいうれしい忽那選手のJ初ゴールを生みだしたきっかけは西岡大輝選手のドリブル。これに金久保選手が前へでて対応したことで、2ライン間で渡邊一仁選手がフリーになっていた。庄司選手がすぐさまそれに気づいてよせたが、こんどは森谷選手をマークする選手がいなくなる。前半までであれば、金久保選手は西岡大輝選手につめるのではなく下がって2ライン間を狭めていただろう。
 さて先制に成功した愛媛だったが、以降京都におしこまれるようになる。失点はしたが、後半から京都はトップに宮吉選手、右にウタカ選手、左に金久保選手の3人で愛媛の3バックに人数をあわせてきた。前線の人数をふやしたプレッシングに愛媛が抗しきれたかというと五分五分といったところだったか。
 京都の攻撃に目をむけても金久保選手がきいていた。だれが彼のことをみるのかがはっきりしなくなっていたのだ。
 前半は愛媛の2ライン間にいることがおおかった気がする金久保選手。後半からは庄司選手のとなりまで下がってくることがふえたようにみえる。さらにいえば、愛媛の1-2列めも間延びしはじめていたようにおもえる。
 庄司選手は川村選手がみるにしても金久保選手はだれがみるの? という状況があらわれはじめる。そこで西田剛選手が彼のケアをおこなう。するとバイス選手がフリーとなり、裏へ抜けたモッタ選手へのロングボールが飛びだす。西岡大輝選手がはじくも、ボールは金久保選手のもとへ。金久保選手がドリブルで前進してくるのを愛媛は複数人でとめにいくこととなり、その混乱に乗じてフリーになったウタカ選手がゴールをきめる。59分のことだった。
 その2分後、61分。カウンターで荒木大吾選手が左サイドを突破。前進をとめられてもボールを失わず、ボールはウタカ選手までとどけられる。ウタカ選手のキープから右サイドを駆け上がってきた飯田貴敬選手がペナルティーエリア内でクロス。そのこぼれ球をウタカ選手がシュートすると、つづくこぼれ球もウタカ選手のもとへ。利き足と逆の左足でゴール左上隅に逆転弾をきめた。
 63分に丹羽詩温選手と有田選手が出場。有田選手はセットプレーからゴールへ迫った。チームとしても前半より京都をさらにおしこむ場面もでてきた。もっとも、金久保選手を1列上げたプレッシングを逆転後まもなくやめたことで、愛媛がふたたびボールを運べるようになったともいえるが。
 とはいえ、2ライン間の選手にパスがでるようになり、相手ディフェンス陣の隙間をついてペナルティーエリア内へ進入する機会もふえた。ところで83分に田中裕人選手と清川流石選手が出場してから、長沼選手があたりまえのようにフィールドの内側でプレーするようになった。
 88分には西岡大志選手に代わって池田樹雷人選手が今季初出場。前線にはいってパワープレー。茂木選手のロングスローをそらして得点チャンスをつくった。流れのなかではファーサイドに位置して中央への折り返しを狙っていた。
 しかし愛媛にたちはだかるは安藤選手。身体を張ってはファウルを受けて気づけばタイムアップ。
 京都はホームで無敗をキープ。愛媛は3連敗となってしまった。

 自分たちのペースで試合ができていたはずなのにと、かなしい愛媛FC。むくわれなかった青春小説のようなやるせなさだ。ただ、ここのところ相手の1-2列めをつかえていなかった部分に改善もみえた。この試合では狭くても川村選手にいちどパスをだすことで相手を動かそうとしていてよかった。次節はホームでFC琉球を迎える。
 ところでこの試合は、京都アニメーションでの事件から1年と1日の日におこなわれた試合でもあった。
 最後までお読みいただき誠にありがとうございました。またね。

 試合結果
 京都サンガF.C. 2-1 愛媛FC @サンガスタジアム by KYOCERA

 得点者
  京都:ピーター・ウタカ、59分、61分
  愛媛:忽那喬司、51分