J2-第9節 愛媛FC 対 ジュビロ磐田 2020.08.02(日)感想

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 近隣チームとの対戦はひと段落(ギラヴァンツ北九州とはまだだけれど)。今節はジュビロ磐田をホームに迎える。
 森谷賢太郎選手が出場できない愛媛FCは渡邊一仁選手と古巣対戦になる田中裕人選手のドイスボランチを選択。シャドーは清川流石選手に小暮大器選手とスピードのある選手たち。前節にひきつづいて池田樹雷人選手が3バックの中央にはいった。
 ジュビロ磐田はルーキーの清田奈央弥選手が右サイドハーフで先発。山田大記選手が上原力也選手とボランチコンビをくむ。キーパーには八田直樹選手ではなく志村滉選手がはいった。
 J2第9節、愛媛FC対ジュビロ磐田の試合をざっくりとふりかえっていく。

 立ち上がりの5分ほど、磐田は2トップや高い位置へ上がった櫻内渚選手へのロングボールで愛媛陣内へ進入しようとする。2トップがそらしたボールをひろって攻めこめればいいし、できずともすぐさまプレッシングをかけて奪い返せればよし。しかし、なかなかこぼれ球をひろえないことと、プレッシングが嵌まらないことから、しだいに後方でボールをもつようになっていく。
 磐田は[4―4―2]だが、ビルドアップではボランチの上原選手がセンターバックのあいだに下がって3バックになる。サイドバックは2トップと最終ラインとの中間の高さまで上がり、サイドハーフは2ライン間へはいっていく。なので[3―1―4―2]ぎみになる。
 このかたちになると菱形のユニットをつくりやすくなる。2ライン間へはいったサイドハーフを最前線としてサイドバック、ボランチ、センターバックの4人だ。磐田はこの4人でのパス交換で愛媛の選手たちをくいつかせてから、裏へ走る2トップへロングボールを送る攻撃をみせていた。とくにルキアン選手を狙って。ルキアン選手には池田選手がついていた。空中戦であれば高さを活かして戦えたかもしれないが、磐田の選手たちはそういったハイボールをあまりださなかった。胸もとや足もとでおさめられるボールをえらんでいたため、ルキアン選手は懐の深さを活かして池田選手のとどかない位置にボールをおさめていた。ただ、審判のファウルの基準に戸惑い、おもうようにゴール前まで迫れていないようだった。

 愛媛は[3―4―2―1]でのぞむ。なので守備のときには5バックになるが、前線と中盤の結構は高さによって変化する。自陣におしこまれれば[5―4―1]だが、ハーフウェイライン付近や相手陣内ではシャドーの選手が前にでる[5―2―3]。このときの前線[2―3]はかなりコンパクトで、アンカーの山田選手を囲いこむようだった。
 磐田が後方でボールをもちはじめるのを愛媛は待っていたのかもしれない。
 愛媛は磐田の左センターバック伊藤洋輝選手がボールをもったら動く。たとえば7分。西田剛選手が上原選手へのパスコースをけしながら伊藤選手へアプローチ。右シャドーの小暮選手も伊藤選手へよせて自由をあたえない。パスコースを限定された伊藤選手は左サイドバックの宮崎智彦選手へパスをだすが、宮崎選手には西岡大志選手がよせている。さらにこのときボランチの渡邊一仁選手が中央へのパスコースをけしている。なので宮崎選手は前をむいたもののパスコースが見つからず、その隙に西岡大志選手がボール奪取。前向きにボールを奪えたため、愛媛はそのままカウンターへ移った。不発だったが。
 噛みあわせをいえば、愛媛は1トップ2シャドーの3人を磐田3バックにあて、アンカーの山田選手はボランチふたりで見、サイドバックはウイングバックがマークすることになっていた。
 磐田のビルドアップを苦しめさせたのは西田選手と清川選手。西田選手は伊藤選手によせるさい、上原選手へのパスコースをけすように動いている。このコースどりによって伊藤選手の選択肢を狭めている。だがそれでもすべてのパスコースをけせているわけではない。たとえばキーパーへのバックパス。GK志村選手を経由すれば西田選手のアプローチを避けて大井健太郎選手までボールをとどけられてしまう。もしくは西田選手が触れられない頭上を越えていくロブパスなんかで直接大井選手へパスをだされて回避されるおそれもある。そこで登場するのが左シャドーの清川選手。大井選手にパスがでると猛然とアプローチにいって自由をあたえず、キーパーにバックパスするか前へ蹴りだすかを強いていた。バックパスさせれば連動したプレッシングへ移れるし、前へ蹴りださせればこぼれ球を回収できる。ということで、10分あたりから愛媛がボールを保持して磐田陣内でプレーする時間がふえていった。

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 前節のアビスパ福岡戦でみせていたように、愛媛は相手のセンターバックとサイドバックのあいだを突くことで相手陣内深くやペナルティーエリア内へ進入しようとする。この試合でもその攻撃が奏功していた。
[3―4―2―1]の愛媛は攻撃時に両ウイングバックが高い位置へでて[3―2―5]のかたちになる。なので磐田の4バックに対して数的優位。また磐田のようにサイドで菱形をつくれる。
 愛媛は今季多彩な攻撃をしかけている。ただ、具体的にどういうことをしているのかよくわからない。なんとなく感じとれるのは、ポジションチェンジがサイドで頻出しており、どうやら、ボールホルダーの左右前方に味方がいるように動いている気がすること。
 前半みられたのが、三原秀真選手と清川選手の連動した動き――三原選手が下がってきて、同時に清川選手がタッチライン方向へ斜めに走る動きだ。
 三原選手には櫻内選手がマークにつく。なので三原選手が下がってボールを受けようとすればいっしょについていく。そのため大井選手との距離がひらく。清川選手はそのあいだへ走りこんでいた。そこへパスがでれば一気に磐田陣内深くまで攻めこむことができる。もし櫻内選手がでてこなくとも、こんどは三原選手がフリーでパスを受けられる。

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 興味深いのは三原選手にパスがでたとき。パスをだした前野貴徳選手や田中選手がパスアンドゴーで三原選手を追い越していく動きをみせていた。前野選手が三原選手を追い越していくのは、後方に人がそろっているときか、畳みかけるチャンスとみたときだった。
 前野選手や田中選手が三原選手を追い越していくとどうなるか。端的にいってしまえば三角形がひっくり返る。
 もし追い越さなければ三原選手がもつ前方へのパスコースは清川選手のみになる。だが追い越すことでパスコースがふたつにふえる。ふえるというか、ふたつを維持できる。こうった動きは、伝聞するところのフットサルでいう旋回とかローテーションに近いものなのかもしれないが、よくわからない。

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 この動きは右サイドでもみられていた。というより、今季目立ちはじめた茂木力也選手の攻撃参加の正体なのかもしれない。この試合でも、茂木選手が西岡大志選手へパスをだしてそのまま追い越していく動きをみせていた。そして西岡大志選手にシャドーの選手とのふたりでパスコースをあたえていた。

 磐田はなかなか愛媛のサイド突破を抑えられていなかった。しかし、飲水タイム以降からすこしずつ対応しはじめる。ウイングバックをサイドハーフがみる、もしくはサイドバックの裏へ走るシャドーはボランチが追っていき、穴をあけないようにした。ただ、毎回必ずそういう対応をしていたわけではなく、やはりサイドバックの裏を突かれる場面もあった。
 愛媛としては、クロスがあっていればなあ、もしくは小暮選手のシュートがきまっていればなあ、という前半だった。
 ところで、クロスの精度がともなわなず決定機にならなかったものの、そのクロスに飛びこんでいく選手がしっかり揃っていたのは頼もしい。西田選手がゴール前からニア、逆サイドのシャドーが中央マイナスの位置、逆サイドのウイングバックがファーと、ゴール前に3人飛びこめているのはなかなか迫力がある。
 さて、磐田が明確にサイドバックの背後をケアしはじめたのは、0―0で折り返した後半からである。

 ハーフタイムで両チームとも選手交代をおこなった。
 愛媛は清川選手に代わって長沼洋一選手が出場。清川選手は前半のみの予定だったのかもしれない。彼のスプリントを活かして磐田のビルドアップを封じるのが目的。ただ90分つづけるのは酷すぎるので前半だけとか。
 磐田は清田選手に代わって松本昌也選手が出場。ボランチにはいり、山田選手が右サイドハーフにうつった。プロ初先発初出場の清田選手だったが、対面する前野選手を抑えるのがちょっと大変そうだった。

 磐田がサイドバックの背後をケアしはじめたことで、愛媛はクロスを上げる段階までもっていくことがむずかしくなった。そうこうしているうちに59分、大森晃太郎選手に先制弾をきめられてしまう。63分には自陣でのビルドアップミスからルキアン選手に追加点をきめられてしまった。
 その後は愛媛がボールを保持しつつもなかなか決定機をつくれない展開。ただ三原選手と、57分から出場した忽那喬司選手のところからペナルティーエリア内へ進入する場面もあった。84分の西岡大志選手のゴールは忽那選手がファウルを受けてえたセットプレーの流れからだった。
 1―2でゲームセット。磐田は3試合ぶりの勝利を挙げ、愛媛は未勝利を6にのばしてしまった。無念。

 発見のおおくある試合だった。とくに若手選手たちの成長に目を瞠る。池田選手がすぐとなりへのパスではなく、ウイングバックへのパスや2ライン間への縦パスまでチャレンジするようなっていてすごい。
 しかし6戦未勝利。川井健太監督の試合後のコメントは「不甲斐ない試合をした」、「再開後いちばんだめな試合」とめずらしく厳しいものだった。解説の石橋智之さんが推測されたように、自戒をこめたコメントだったのかもしれない。
 ここ数試合、スコアが動いたあとの試合運びがあやしい。そのおおくが後半や試合終盤であることを鑑みると、やはり選手たちの疲労は想像以上のものなのだろう。なんとか乗り切ってほしい。どこまでいけば乗り切ったことになるのかわからないけれど。まずは怪我で離脱中の選手たちが戻ってきてほしいところ。
 最後までお読みいただき誠にありがとうございました。またね。

 試合結果
 愛媛FC 1―2 ジュビロ磐田 @ニンジニアスタジアム

 得点者
  愛媛:西岡大志、84分
  磐田:大森晃太郎、59分 ルキアン、63分

※スコアを1―1と間違えていたので訂正しました。おい無意識。