J2-第26節 愛媛FC 対 東京ヴェルディ 2020.10.14(水)

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 5連戦第4ラウンド2戦め。
 前節ダービーで敗れた愛媛FCはふたたび最下位に転落した。
 前節から4人変更。ベンチスタートとなった前野貴徳選手は、意外なことに最後まで出番がなかった。
 対する東京ヴェルディも前節は敗戦。順位は8位につけている。新井瑞希選手が今季初スタメンを飾った。ちなみに新井選手は浦和ユースで茂木力也選手の一個下の後輩にあたる。ただし、茂木選手はこの試合左センターバックにはいったため、そうそうマッチアップしない位置関係だった。
 J2第26節、愛媛FC対東京ヴェルディの試合をざっくりとふりかえっていく。

 愛媛は右サイドへロングボールを蹴りこみ、相手陣内でのプレーで試合をはじめる。が、開始2分で新井選手にあっさりとゴールを奪われてしまう。新井選手はシュートもすばらしかったが、そのまえにおこなっていたプレッシングも的確だった。
 丹羽詩温選手がセンターサークル内でボールに触れたとき、まだ新井選手はサイドの外側にいた。しかし横谷繁選手へパスをだすとみるやすぐさま動きだしている。このときふたりの距離の概算は13~14メートルである。中央に東京ヴェルディの選手たちがいるので、横谷選手は足もとで受けるのではなく、ボールに触れずれに外へ流れようとした。その間に新井選手が一気に距離をつめていた。このとき西岡大志選手へのパスコースをけしてもいる。横谷選手もぎりぎりでさきにボールにふれて、彼の進行方向とは逆側へかわそうとしたが、ボールは両者それぞれにあたって中央にいた井上潮音選手のもとへ転がった。横谷選手との接触をかろやかに回避した新井選手がそのままペナルティーエリア内へ走りこみ、井上選手からのスルーパスをいざなうと、シュートへもちこんだ。

 ダービーのショックを払拭するどころか、出鼻をくじかれてしまった愛媛。立ち上がりに東京ヴェルディ陣内でボールをもつ時間はあったが、相手にボールを奪われては中央のスペースやサイドの裏をつかわれ、自陣深くまでおしこまれることのほうがおおかった。そして自陣でボールをもったときには、中盤にスペースがみつけられず苦しんだ。
 10分ごろから森谷賢太郎選手が最終ラインに下がるようになる(ちなみに、森谷選手は東京ヴェルディがボールをもつと、相手のアンカー山本理仁選手をみるため前線にまで顔をだしていた。いそがしい!)。ということで、田中裕人選手が相手の1―2列めのあいだに位置するのだが、なかなか彼のもとへパスがでてこなかった。
 愛媛がボールをもつと澤井直人選手が1列上がって井上選手と第1守備ラインをつくっていた。このふたりによって最終ラインから田中選手へのパスを制限していた。さらに中盤の森田晃樹選手と山本選手らも、1―2列めでパスを受けようとする選手にはアプローチのそぶりをみせて最終ラインからのパスを牽制していた。
 ということで、愛媛は中央をつかったボールの前進ができず、サイドで横幅をとる選手を中継地点にして前進することとなる。しかしそこを相手サイドバックに狙われてしまった。サイドでボールを受けた選手は東京ヴェルディのプレッシングのまえにバックパスをするか、ワンタッチではたいて前線につなげるかすることになる。だがバックパスをすると、スイッチのはいっているプレッシングにそのままおしこまれてしまっていた。ワンタッチでははたくにしても、パスが味方にあわないことのほうがおおかった。それでもGK岡本昌弘選手からのロングパスで東京ヴェルディのプレッシングを回避してボールを前進させる場面もあった。高い位置でのプレッシングがはずされれば、東京ヴェルディもミドルゾーンでブロックを敷くようになる。そうなれば愛媛はボールをもてるようになった。
 14分には、愛媛の横パスにあわせてプレッシングのスイッチを入れた東京ヴェルディの逆をとって、山﨑浩介選手から丹羽選手へロングスルーパスがとおった。ただ、高橋祥平選手の冷静な対応とチームのすばやい帰陣によってシュートまでもっていけなかった。ならばと相手陣内でのボール保持へ移行し、中央から2ライン間を突くチャンスをつくったが、ライン間でパスを受けた長沼洋一選手のワンタッチめがおおきくなったうえ、クレビーニョ選手に奪われそうになるのをスライディングでとりにいってしまいイエローカードの判定が下されてしまった。長沼選手は累積4枚めのイエローカードとなり、次節モンテディオ山形との古巣対戦は出場停止になってしまった。
 長沼選手の試練はつづく。
 22分のこと。愛媛はミドルゾーンでボールをもち、右サイドから前進しようとする。しかしうまくいかずにバックパス。これで東京ヴェルディにプレッシングのスイッチがはいると、左サイドへボールがうつるあいだにプレッシングの的を絞られてビルドアップに窮してしまう。サイドへ追いこまれた状態でパスを受けることになった長沼選手は、縦へしかけて窮地を脱しようと試みる。澤井選手とクレビーニョを選手を抜くことはできたが(え?)、3人めにひかえる山本選手にボールを回収されてしまった。しかもその際両者は交錯し、山本選手が痛んでしまう。長沼選手にはこの試合2枚めのイエローカードが提示されて退場処分となってしまった。なんてこった。
 おしむらくは、ビッグチャンスになりそうだった場面が、一転して長沼選手の退場を招いてしまったこと。右サイドから茂木力也選手までボールがわたってきたとき、茂木選手はいちどボールを外へ追いやる運び方をして、対面する澤井選手から距離をとることに成功した。さらにこのとき、前線では丹羽選手がポジションをとりなおし、小暮大器選手も裏抜けのために走りだしていた。茂木選手から裏へのパスがでていれば、14分に丹羽選手が抜けだしたチャンスのようになっていた可能性はたかい。目のまえでみていた川井健太監督も前線のほうを指さしている。ただ、このときそういったパスをだすには茂木選手にとって利き足ではない左足で蹴る必要があった。なのでロングパスの代わりに、長沼選手へパスをだしたあと、すぐさまリターンパスを要求している。もし茂木選手にパスがもどされていたら、一転、広大にあいた右サイドへ展開してチャンスになっていたやもしれない――ということで、けっか的には散々だったものの、その裏に見え隠れてしていた可能性を考えると口惜しくなる場面であった。

 前半半分のところで10人になってしまった愛媛。丹羽選手が1トップの[4―4―1]になる。吉田眞紀人選手が右サイドハーフにはいり、横谷選手が左サイドハーフへうつった。ここから愛媛の攻撃は裏狙いがファーストチョイスとなる。
 東京ヴェルディのディフェンスラインはほとんどハーフウェイライン上といえるぐらい高かった。その背後を丹羽選手や小暮選手が突くことでおしこみ、相手陣内でのプレー時間をふやそうとした。しかし、ボールを失ったあとに高い位置での守備で後手にまわれば、数的不利はおおきくひびく。人のたらない場所へパスをまわされてしまい、ボールの前進を防ぐことはかなり困難だった。
 ブロックを敷いたときにも10人になった影響がでてくる。それまでは2トップが相手2センターバックを、両サイドハーフが相手両サイドバックをみる形で対応していたので、アンカーの山本選手をみるのは森谷選手だった。だが、前線の人数が足りなくなったため、森谷選手が山本選手をみてしまうと中盤の人数が枯渇する。なので丹羽選手が山本選手をみるようになった。こうして愛媛の守備ラインが1列ぶん下がり、東京ヴェルディの2センターバックはボールを自由に運べるようになった。
 前からいくのはもちろん、引いて守るのも怪しい雰囲気のなか、29分にはコーナーキックの流れから高橋選手に追加点をきめられてしまう。この失点の場面、愛媛としてはいちどならずボールをクリアーするチャンスがあったのだが、ミスがつづいてしまった。

 2点差とした東京ヴェルディ。マイボールのときは、攻めるしかない愛媛をひきずりだしてから、空いたスペースをつかって前進する。むりに攻める必要がないぶん、愛媛の挙動をみてしたたかに攻めつづけた。
 愛媛としてはブロックの外でパスをまわさせ、バックパスのタイミングで一気にとりにいきたいところだが、やはり中盤の人数がたらない。追いこんだはずが、一転して2ライン間にボールをとどけられてしまいピンチになる場面が見受けられた。愛媛はその時間、GK岡本選手の再三の好セーブに助けられた。
 球ぎわをつくることができず、ことどとくシュートまでもっていかれてしまう。前半終了間際の45+3分には左サイドを突破され、ゴールラインぎわから新井選手にクロスを入れられる。ファーサイドで小池純輝選手が2度のシュートチャンスを活かして3点めをきめた。

 ハーフタイムに愛媛が選手交代をおこなう。吉田眞紀人選手に代わって清川流石選手が出場する。清川選手はそのまま右サイドハーフにはいると、キックオフ直後にはプレッシングをかけにいき、前から奪いにいくというチームの意思を体現していた。
 後半立ち上がり、愛媛は猛然とプレッシングをかけにいって相手を戸惑わせた。東京ヴェルディはマイボールになっても前へでていく選手がでてこなかったり、味方をサポートしにもどってきたりと、チームの意識が全体的に後方をむいていた。それくらい愛媛はプレッシングで猛攻をしかけていた。ただ、5分もすれば東京ヴェルディは数的優位をおもいだしてフリーマンをみつけられるようになり、前半同様愛媛をおしこむ展開になった。
 おしこまれるとつらい愛媛。丹羽選手を前線に残してはいるものの、ペナルティーエリア内までブロックがおしこまれてしまってはカウンターはもちろん、前線で溜めをつくって味方の上がりを待つのもむずかしくなる。
 そんななか59分、茂木力也選手が相手をかわしてボールを運んだことで東京ヴェルディの2列めを置き去りにすることができた。相手を剥がすことができれば数的不利は(部分的/一時的に)解消される。クレビーニョ選手に対して横谷繁選手と2対1の数的優位をつくって惑わした。が、それだけだった。

 72分に愛媛が3人の交代をおこなう。森谷選手に代わって山瀬功治選手、丹羽選手に代わって有田光希選手、横谷選手に代わって川村拓夢選手が出場した。とくに丹羽選手は守備では二度追いも辞さずに走り、攻撃では前線で溜めをつくろうと奮闘してくれていた。
 シュートの雨にうたれる愛媛だったが、一転して相手陣内までボールを運べられればチャンスをつくれそうな気配もある。3人交代直後は、ボール奪取に長けた川村選手が攻から守への切り替えで躍動。相手陣内でプレーをつづける場面が生まれ、清川選手がシュートをはなつこともあった。
 なのでなんとか前にでたいところ。茂木選手もしきりに「(ラインを)下げるな!」と鼓舞していた。ただ、やはり中盤での数的不利を突かれてしまい、なかなか前へでていけなくなった。
 81分には西岡大志選手に代わって藤本佳希選手が出場。川村選手が左サイドバックにうつる。右には小暮選手。アンカーに田中裕人選手で、その前に山瀬選手と清川選手という[4―1―2―2]になった。
 中央の人数をふやしたことでこぼれ球を回収する場面も生まれる。さらに中央をつかうことでサイドが空くようになり、サイドチェンジもでてくるようになった。しかし、人数をかけるといっても中盤は3人。どうしても東京ヴェルディがボールをもつとスペースがでてくる。さらに2トップにしてはいるものの、やはりサイドは空いてしまうため、規制をかけるのもむずかしい。それでも前から奪いにいく姿勢をみせ、85分にはボールを奪いかける。だがアンラッキーに襲われる。澤井選手から中央のスペースにだされた浮き球のパスを田中選手がクリアーするも、前には飛ばず自陣側へ。そしてそこにいたのが途中出場していた大久保嘉人選手(83分に新井選手に代わって出場)。抜けだしてペナルティエリア内まで運ぶと、後方から上がってきたこちらも途中出場(79分に森田選手に代わって出場)の佐藤優平選手へマイナスのパス。左隅にシュートをきめ、スコアは0―4になった。

 攻撃も守備もうまくいかない愛媛。だが、ロスタイムに1点を返す。高い位置からプレッシングをかけにいくことで、東京ヴェルディのパスミスを誘発しスローインをえる。この時間帯でも倦まずに前から奪いにいくのはすばらしかった。
 清川選手が相手2列めの手前にさがってパスを受けると、みずからドリブルして2ライン間へ進入。このプレーでフリーになった小暮選手へパスをだす。自身はさらにそのまま前へ走りだし、ボランチの佐藤選手を最終ラインまで引きずりこむ。こうして中盤に穴をあけた。守備ブロックに歪みがでたことで、東京ヴェルディ2列めの選手たちのおおくが同サイドにあつまった。スローインを挟み、有田選手がペナルティーエリアの外で清川選手からの縦パスを受け、すぐさま中央へクロス。相手選手にとられてしまうものの、すばやく攻から守へ切り替えた川村選手がボールを奪い返し、90+2分、強烈なシュートをたたきこんだ。
 有田選手がクロスを上げたとき、愛媛からみて中央から左サイドにいる東京ヴェルディの選手は、小池選手と途中出場(62分にクレビーニョ選手に代わって出場)の若狭大志選手のみだった。一方のサイドにブロックが偏っていたため、ボールをあずける選手が彼らの同サイドの前線にはいなかった。ボールをもった若狭選手もいちど逆サイドを確認したが、パスがだせないとみてドリブルを選択している。ふたりでボールを前に運ぶしかなかったのだが、そこで川村選手がとんでもないがんばりをみせて奪っていった。
 愛媛としてはサイドから攻めこんで中央を手薄にさせたうえ、球ぎわにつよい川村選手の特徴を相手ゴール近くで発揮させることもできた。終了間際の、それも点差のひらいた状況での1点ではあるが、けっして焼け石に水の得点ではなかっただろう。
 試合は1―4で終了。東京ヴェルディは前半戦のリベンジを成し遂げ、愛媛は2連敗となってしまった。

 ダービーの敗戦を払拭するはずが、得点差のついた敗戦を喫してしまった愛媛FC。丹羽選手のがんばりとGK岡本選手の好守にむくいるためにも勝ち点3がほしい。しかしここからつづく27節モンテディオ山形戦、28節V・ファーレン長崎戦でも1―4の敗戦を喫してしまった。復調の兆しは29節の栃木SC戦(0―1での敗戦)まで待つことになった。
 最後までお読みいただき誠にありがとうございました。またね。

 試合結果
 愛媛FC 1―4 東京ヴェルディ @ニンジニアスタジアム

 得点者
  愛媛:川村拓夢、90+2分
  東京Ⅴ:新井瑞希、2分 高橋祥平、30分
      小池純輝、45+3分 佐藤優平、85分