J2-第23節 ファジアーノ岡山 対 愛媛FC 2020.09.30(水)感想

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 5連戦第3ラウンド4戦めの相手はファジアーノ岡山。自然とそわそわする中四国ダービーがひとつ。岡山は直近で2連勝を上げて16位につけている。
 勝利がないものの、2戦負けなしでこの試合を迎えるのが愛媛FC。前回対戦では0―1の敗戦を喫した。高い位置での強烈なプレッシングに抑えこまれたかたちだった。ならば彼らに臆することなくたちむかえれば、チームとしての成長を示すことにもなろう。選手が5人入れ替わり、池田樹雷人選手や古巣対戦となる藤本佳希選手らがスタメンに名を連ねた。
 J2第23節、ファジアーノ岡山対愛媛FCの試合をざっくりとふりかえっていく。

 岡山は[4―4―2]のイメージがつよかったが、この試合では野口竜彦選手がトップ下の[4―2―3―1]だった。岡山の事情としての変化なのか、それとも愛媛に1―2列めをつかわせないための対策なのかはわからない。
 両チームとも相手陣内でのプレー時間をふやそうとロングボールを蹴りこむ立ち上がりとなった。岡山はコーナーキックやフリーキックをおおく獲得してチャンスとした。対する愛媛はボランチにはいった森谷賢太郎選手のロングボールが目立った。この試合ではボランチでスタートし、ビルドアップでは2センターバックのあいだへ下がるようにしていた。そのため愛媛は[3―1―4―2]で戦っているようなものだった。サイドバックが高い位置をとり、サイドハーフは内側へ。ボランチの川村拓夢選手がアンカー。川村選手は岡山の1―2列めでのびのびとプレーしていた。
 岡山がトップ下をおいたのは、このアンカーの選手をおさえるためかしらんと考えたが、どうやらそういうわけでもなさそうだった。守備のときは[4―4―2]のブロックを敷くが、わりと1―2列めは放置していた。もちろん、愛媛がバックパスでキーパーまでボールをもどすときは、パウリーニョ選手か白井永地選手のボランチどちらかが川村選手についていき、高い位置でのボール奪取に連動していた。
 野口選手は攻撃時にボランチの位置あたりまで下がっていくことがあった。代わりに右サイドハーフの関戸健二選手が前へでて、山本大貴選手の近くでプレーしていた。むしろこのふたりの2トップにみえるぐらいだった。このあたりに野口選手のトップ下起用の理由がありそうだけれど、わからない。
 さて、関戸選手が前線に位置するとなると、岡山の右サイドは広く空くことになる。そこで躍動していたのが右サイドバックの松木駿之介選手だった。関戸選手が内側でプレーするぶん、大外で彼がフリーになることがおおかったというのもあるが、狭い場所でも積極的にしかけていくので、対面する愛媛左サイドの選手たちが対応に苦慮していた。それこそファウルでなければとめられないぐらいであった。

 時間が経過するにつれ愛媛がボールをもつようになっていく。この試合の愛媛の選手たちは、パスを受けたあとの判断がはやく、スムーズにボールを前進させることができていた。自陣深くから小暮大器選手が岡山のプレッシングをかいくぐって前進する場面もあった。ただ、松木選手のところからひっくり返されることもおおく、飲水タイム時にしめされた支配率は両者五分となっていた。
 前半ラスト15分には、愛媛がキーパーからパスをつないで岡山を動かそうとしたが、スペースの利用も展開もむずかしく、なかなかボールを前進させられなかった。
 対する岡山は愛媛陣内でのボール保持の時間がふえ、中央をつかった前進でチャンスをつくっていた。序盤からみられていたことだが、岡山は2ライン間への縦パスがよくはいっていて、そこから愛媛ゴール前へ迫ることがおおかった。
 愛媛はボランチを前へだされてしまうことがおおかった。そうして空いたボランチの斜め後方をつかわれてしまっていた。なぜボランチが前へだされたのかといえば、1―2列めで白井選手やパウリーニョ選手に前をむかれてしまうからだ。彼らが前向きにプレーできたのは、左サイドバック徳元悠平選手を交えたビルドアップに愛媛が規制をかけられず、1―2列めへのパスコースをけせなかったからであろう。
 さて、愛媛の2列めは相手に動かされることがおおかった。一方で、最終ラインの選手たちは岡山のカウンターを球ぎわでよく防いでいた。岡山が守から攻へと切り替え、前線の選手へロングパスをだしたとき、愛媛ディフェンスはその選手のプレーを制限するだけでなく、ボールを奪いとってチャンスの芽をつぶしていたのだ。2ライン間をつかわれながらも0点に抑えられていたのは、岡山の前線の選手たちにポストプレーをさせなかった守備陣のがんばりがおおきかったのだろう。
 0―0のまま前半を終える。

 後半のはいりは、愛媛にとってあまり感じのいいものではなかった。まずキックオフを相手陣内へのロングボールではじめようとしたがタッチラインを割ってしまった。
 47分にはブロックを動かされてピンチをむかえる。タッチラインぎわにひらく松木選手へ展開されたことで小暮選手を前にひきずりだされ、空いた彼の裏手を関戸選手につかわれてしまう。後手の対応がつづき、最終的にはパウリーニョ選手にフリーで強烈なシュートを打たれてしまった。GK岡本昌弘選手のセーブで失点はまぬかれたものの、愛媛としては相手に動かされて穴をつくってしまった格好だった。
 岡山はその後も小暮選手をひきずりだし、間延びした池田樹雷人選手とのあいだを関戸選手が突く攻撃をみせた。愛媛はこのスペースを長沼選手が埋めるのか、それともボランチの選手が埋めるのかはっきりしなかった。

 最初に選手交代をおこなったのは岡山。56分にパウリーニョ選手に代わって上田康太選手、野口選手に代わって赤嶺真吾選手が出場した。
 62分に愛媛も動く。吉田眞紀人選手に代わって横谷繁選手が、池田選手に代わって前野貴徳選手が出場した。これで愛媛は[3―4―2―1]へフォーメーションを変更した。後方5人でのブロックにすることで、サイドバックの裏を狙った岡山の攻撃にあらかじめ蓋をしておくことになった。でも、おそらく川井健太監督のメッセージは守備の部分ではなく、むしろもういちどボールをもって攻めようということだったのだろう。上田選手の登場によって、岡山にボールをもたせるのがより危険にもなっていたし。
 飲水タイム後の71分に愛媛が選手交代。忽那選手に代わって丹羽詩温選手が出場した。
 75分には岡山がふたりを交代。山本選手に代わって齊藤和樹選手が、後藤圭太選手に代わって田中裕介選手が出場した。田中裕介選手は怪我から復帰し、9試合ぶりの出場となった。
 さて、3バックにしてふたたびボールをもって攻めにでようとした愛媛だったが、依然として岡山のボール保持の時間がつづいてしまった。藤本選手がロングボールをおさめてしかけていくことがあったものの、なかなか岡山陣内でボールをもつ時間をつくれなかった。
 ところで、藤本選手は前半からロングボールをおさめてチャンスをつくることがおおかった。藤本選手をみているとふしぎである。ボールと相手選手とのあいだに身体を入れるのがうまいからなのか、球ぎわをつくらせないでマイボールにすることがおおい。守備者にとって飛びこみがたいものがあるのだろうか。

 77分とはやいタイミングで愛媛が最後の選手交代をおこなった。小暮選手に代わって西岡大志選手が、藤本選手に代わって有田光希選手が出場する。
 82分には岡山が負傷での選手交代。右サイドを躍動していた松木選手に代わって椋原健太選手が出場した。
 試合は最終盤へはいっていくが、ここで愛媛がようやくボールをもつ時間がふえていく。前半立ち上がりのように相手の1―2列めをつかってボールを前進できるようになった。おしこむことができるようになったことで、最後のところで跳ね返されてもこぼれ球をひろえるようにもなっていった。
 86分には丹羽選手と西岡大志選手とで右サイドを突破。西岡大志選手が絶妙なマイナスのクロスを入れ、有田選手がフリーでシュートを打つ機会となったが枠に飛ばなかった。しかし88分、ふたたび右サイドをくずすと、茂木選手がフリーで上げたクロスに有田選手がヘディングであわせて得点。チームとしてじつに6試合ぶりとなるゴールで愛媛が先制した。
 この得点、有田選手の冷静にあわせたヘディングはもちろんすばらしい。丹羽選手が濱田水輝選手を引きつけたことも重要。一方で川村選手のがんばりもおおきく貢献している。最後方の森谷選手から1―2列めでパスを受けて攻撃のスイッチを入れたのは彼だし、狭いスペースでボールを守りつつ、2ライン間の茂木選手へパスを送ったのも彼だった。相手によせられながらもボールを失わなかったのがおおきい。最初に白井選手のよせをかわすことに成功すると、さらには上門知樹選手と正対することで彼の動きをとめ、茂木選手へのパスコースを確保した。なおかつ茂木選手へパスをだしたあとも前へでていき、返しのスルーパスを受けることもできた。彼が敵陣深くまでボールを運んでくれたおかげで、茂木選手はフリーでクロスを上げることができた。ブラボー。
 さて、自分たちのペースだったはずが、まさかの時間帯で失点してしまった岡山。ファン・サポーターの手拍子に後押しを受け、6分とながめのロスタイムに猛攻をしかける。90+6分には左サイドからの低いクロスに赤嶺選手が頭であわせたが、わずかにはずれた。
 愛媛は必死に1点を守り切り、6試合ぶりとなる勝ち点3を獲得した。

 ゲームを支配していたにもかかわらず、まさかの敗戦となってしまったファジアーノ岡山。中2日の疲労がラスト10分で明暗をわけたのだろうか。残念ながら負傷交代となってしまったが、松木選手の躍動感には目を瞠った。彼、フォワード登録なんですよね? Ⅴ・ファーレン長崎の毎熊晟矢選手といい、フォワードのサイドバック起用って、なにか新しい潮流だったりするのでしょうか?
 苦しみながらも前回対戦の借りを返すことができた愛媛FC。まだまだ思い描くようなサッカーではないけれど、相手の猛攻をしのいでしぶとく勝つ姿をみせてくれた。なんだかんだで3試合連続無失点と、21節のアルビレックス新潟戦から継続している4バックでの守備にも安定感がでている。
 最後までお読みいただき誠にありがとうございました。またね。

 試合結果
 ファジアーノ岡山 0―1 愛媛FC @シティライトスタジアム

 得点者
  岡山:
  愛媛:有田光希、88分