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『リウマチの新たな知見』 第65回日本リウマチ学会 〜Dr.伊藤編〜

第65回日本リウマチ学会総会・学術集会がWEB参加形式(4月26日~28日)で開催され、オンデマンド視聴(4月28日~5月31日)で参加しました。その中から、とくに興味深かった3題について紹介したいと思います。

慶應義塾大学 竹内勤先生の会長講演「関節リウマチ:新たなる挑戦」では、関節リウマチにおいて関節滑膜の単一細胞解析などによる分子病態の解析から、新たな病態関連分子や細胞の存在が明らかになり、新しい治療戦略を考えていく時代になっていること、また最新の疫学研究から関節リウマチという疾患の特徴が時代とともに変化していく可能性があり、疾患を見失ってはいけないとお話をされていました。
わたしは一臨床医として知識を日々アップデートしていかなければならないと、心を新たにしました。
さらに若手の医師・研究者へのメッセージとして、成功にとって大事なのは熱意(enthusiasm)であり、福沢諭吉の「進まざるものは必ず退き、退かざるものは必ず進む」を引用されていました。すなわちどういう形であっても前に進み挑戦してほしいと熱く語られていたのが強く印象に残りました。

大阪大学 熊ノ郷淳先生は、「リウマチ性疾患と腸管免疫」をテーマに、自施設における次世代シークエンサーを用いた関節リウマチ患者の腸内細菌叢の研究結果を提示されました。発症初期の関節リウマチ患者ではPrevotella属細菌が増加しており、この細菌叢を無菌の関節炎モデルマウスに定着させると関節炎が悪化すること、そのメカニズムとして腸管でのT細胞の活性化が関与しており、腸内細菌叢の異常を是正することで、関節リウマチの発症を予防できる可能性があるといった内容でした。
未来に向けて大変希望があると感じました。

シンポジウム「COVID-19と免疫・炎症」では、北海道大学 奥健志先生が、日本リウマチ学会疾患レジストリ「リウマチ性疾患患者に生じたCOVID-19に関する研究」のデータを提示されました。登録症例209例の解析結果から、リウマチ性疾患におけるCOVID-19感染症の重症化リスク因子として高齢、高用量のステロイド使用(プレドニゾロン10mg/日以上)、糖尿病や高血圧といった基礎疾患があり注意が必要であると報告されました。また、リスク因子とはならない生物学的製剤やJAK阻害薬は、必要時にはCOVID-19の蔓延以前と同様に行うべきであると述べられました。国立病院機構相模原病院 松井利浩先生は、「リウマチ性疾患におけるNew normalとは?」というテーマで、自施設におけるCOVID-19感染症に関するアンケート調査結果を提示されました。外出制限等により筋力・体力低下があると回答した人は高齢者に多く、そのような人では抑うつ・不安を抱えており、また情報弱者であるため公式の正しい情報を紙媒体などで積極的に発信していく必要性について指摘されました。

学会に参加することで、新たな知識とエネルギーをいただくとともに、リウマチに限らず、今後の診療をますます頑張りたいと強く思いました。

アセット 8


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