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いくら騎馬民族でも

1日1000キロというのは、実はバイクの場合結構遠いです。東京~下関間がだいたい1000キロ。高速道路を時速100キロで走って10時間。平均100キロで走るためにはメーター読みで常時120キロくらいは出さないといけないし、連続走行10時間は不可能なので、飯も休みもとってプラス3時間くらいは最低かかる。つまり朝の7時に出て、夜の20時まで走る計算です。

実は私、最初胃が痛くなりました。たぶん225ccの単気筒のバイクでエンジン必死に回してた関係で、振動で胃がやられたんですが、最初はなんで痛いかわからない。
「うーん、変なもんでも食ったかぁ」
と薬局で胃薬を大量に買い込み、バイクの上で体をよじって、原因不明の胃痛に悶えていた記憶があります。

ところが、13世紀のモンゴル人は馬でそれをやったそうです。つまり一日中振動に耐えて移動してた。朝鮮からドイツの隣あたりまで、空前の領土を誇ったチンギス・ハーンの帝国、モンゴル。でかいだけじゃないですね。最強の戦闘国家でしたから、情報の早さというのは必須です。だから、前線の東ヨーロッパからモンゴルへ駆ける伝令は今の“連絡係”なんていう悠長な響きの仕事じゃなく、死を決した大仕事なわけです。まさにスピード命の一気走り、馬が疲れないように何頭も従えて、どんどん乗り換えていくんですね。連絡係は疲れていいのか、そんなわけない。でも大抵の伝令は口外無用の秘密を携えてますから、替わりはいない。ひたすら、馬にしがみついてるわけです。
駅伝制度もばっちりで、“駅”につくと新たな替馬軍団が登場して、そっちに乗り換え。ノンスップ・パワープレイです。
こうやって1000キロどころじゃなく、何日にもわたって草原を疾走。いくら生まれた時から馬に乗ってる騎馬民族でも耐えられないレベルは存在します(だいたい股の下とかあんな微妙なところずっと打ち付けられて健康にいいわけないし)。
そう、やはりそのまま乗っては振動で最初に内臓をやられるので、体をロープでぐるぐる巻きにして胃とかを固定したそうです(妊娠バンドみたいなもんか)。骨はきしみ、肉はたわみ、到着して報告するころには意識も朦朧としてたんじゃないでしょうか。

壮絶です。
世界征服するわけです。

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