MAZAM(旧あいざわ、旧三ツ色)

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はじめに

創作、主に小説を掲載します。著作権はございます。 コンテストで落ちたり、スクールで酷評されたり、そもそも「こんなの公募に出せねーや」という作品もありますが、ご理解ください。 青春小説もハードボイルドもあります。 スタイルが定まらないのがよくないところでしょうか。

    • 【雑文・読書感想文】『渚にて~人類最後の日』ネヴィル・シュート、佐藤龍雄訳 創元SF文庫

       1957年の作品。SFの古典である。その新訳版。  第三次世界大戦が勃発し、人類は核兵器を撃ちまくる。挙げ句、放射能汚染された地球では、最後の時が近付いている。  放射性の物質は北半球から南に向かってくる。最後まで生き延びているオーストラリアに、これもかろうじて生き延びたアメリカの潜水艦スコーピオ号が退避してくる。艦長がタワーズ大佐。  物語は、そのタワーズ大佐を中心に、彼が出会う人たちを通して、終末を描く。  冒頭で派手なことは起こらない(既に起こってしまっているわけだが

      • 【小説・掌編】「ねずみが嗤う」

        再掲ですが、リライトしました。ハードボイルド風のショート作品です。  下り列車が到着した。しばらくして神田が改札を出てきた。大きな男なので目立つ。チャコールグレーのスーツ。グレーのシャツ。ネクタイもグレーだ。グレーの中折れ帽まで被っている。靴とキャリーバッグだけが黒だ。 「ねずみだな」  神田が近付いてきたので、土屋は言った。 「マウスじゃないな。ラットって感じだ」 「悪くないな。ラット神田だ」  唇の端を上げて笑う。二十年前は、こんな笑い方をする男ではなかった。  高校時

        • 【小説・短編】オマージュ

           最後の訪問先を出たのは、五時前だった。  関西出張の二日目。今夜はのんびりできそうだ。  飲みに行くか。歩き出すと会社支給の携帯が鳴った。知らない番号。仕事だ。応答する。 「久しぶりやな。わかるか」  島田。あいかわらず声はいい。 「こっちに来てるんやろ」  なぜ、わかるのだ。  私の勤務先から強引に聞き出したのか。島田ならやりそうなことだ。 「沢田正志の知り合いに、しつこいのがいる」と思われたかもしれない。 「懐かしいやんか。昔話でもしようや」  思い出話などしたくはない

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          【小説】夏のスリーアウト(7・最終回)

           ※最終回で少し長めです。 (6)へ戻る (1)へ戻る  二点差になり、観音堂の応援席は盛り上がっていた。吹奏楽部の演奏は力が入り、チアリーダーが乱舞する。側転や宙返りも披露していたが、球場の関係者に制止された。スタンドでは危険だ、という理由だった。  校長に「いよいよですな」と挨拶に来る保護者もいた。校長は曖昧な笑顔で答えていた。理事長秘書が近くに立っていた。まぶしそうに、チアリーダーたちを見ている。微笑みを浮かべていた。校長は不思議なものを見た気がした。  奥から

          【小説】夏のスリーアウト(7・最終回)

          【小説】夏のスリーアウト(6)

          (5)に戻る 最初に戻る  その頃、一塁側スタンド下の通路で、四人の男女が立ち話をしていた。観音堂学園の理事長とその秘書、校長、教頭である。上着を着たままのくせに「暑くてたまらん」と言う理事長と「日焼けしちゃうな」という秘書に従い、校長と教頭も移動してきた。 「リードしたじゃないか、校長」 「一点だけですよ、理事長」  頭頂の汗を拭きながら、校長が答える。 「しかし、勝つかもしれんじゃないか」 「喜ばしいことでは」  教頭が言うと、秘書がにらんだ。彼女は冷えたダイエットコ

          【小説】夏のスリーアウト(6)

          【小説】夏のスリーアウト(5)

          (4)にもどる 最初に戻る  一塁ベースに立っている。緊張でひざが震えている、と天馬は思った。セカンドベースを見る。真夏のグランドから立ち上る水蒸気のせいで、ベースが揺らめいて見えた。近いような気もするし、遙か遠くにも思える。陸上部の顧問が言ったことを思い出してみる。 「お前は、真っ直ぐ走ればインターハイ上位だ。だから短距離走をやれ」  そうだ、真っ直ぐ走るのだ。  牽制球がいやなので、あまりリードは取らなかった。主審が試合再開を告げた。  投手はセットポジション。牽制球

          【小説】夏のスリーアウト(5)

          【小説】夏のスリーアウト(4)

          (3)からつづく 最初に戻る  四回表の南海第二の攻撃をしのいだ観音堂は、続く四回裏、初めてのチャンスを得た。一死後、バッターに四番の佐々木大二郎が入った。相変わらずサムライ気取りである。  彼は幼い頃、祖母に育てられた。その祖母が一日中時代劇を見ている人だった。昼間の再放送から夜の新作まで、手当たり次第である。それを全ていっしょに視聴した佐々木は、強烈な影響を受けた。幼い彼の潜在意識に、時代劇の場面やセリフが深くしみこんだのだ。 また、彼はイチロー選手を尊敬している。打

          【小説】夏のスリーアウト(4)

          【小説】夏のスリーアウト(3)

          (2)からつづく (1)に戻る 「こいつら大丈夫か」  浩二は、そんなベンチの様子を見て考えていた。勝てば甲子園、という一戦である。相手は強豪、南海第二。甲子園でも優勝候補のひとつに数えられるチームだ。勝てる可能性が低いのは、自分もよくわかっている。それにしても、こいつらの余裕はどうだ。女の子の取り合いしてる場合か、まったく。  だけど、と浩二は思う。俺も他人のことは言えない。この試合に勝つということは、家族旅行がフイになる、ということだ。息子のがっかりした顔は見たくない

          【小説】夏のスリーアウト(3)

          【小説】夏のスリーアウト(2)

          (1)からつづく  観客席では応援合戦が始まっていた。観音堂の応援席では、チアリーダーたちが、吹奏楽の演奏に合わせて飛び跳ねている。人気の女性アイドルグループのヒット曲メドレーだ。本家アイドルのダンスよりもダイナミックだった。今は、共学で野球部もあるが、四年前まで観音堂学園は女子校だった。チアや音楽系の部活動は、伝統も実力もある。地区大会決勝戦の応援は、晴れ舞台だった。  賑やかな応援席の端で、初老の男が二人、額を寄せて話をしていた。校長と教頭である。 「決勝まで来ちゃった

          【小説】夏のスリーアウト(2)

          【小説】夏のスリーアウト(1)

           ※※※五年前にスクールの課題として書いたもの。書き慣れてないなあ、と思います。読み返すと恥ずかしい。それでも当時は50枚書いたということで満足していました。便宜上(1)としておりますが章立てはしておりません。※※※  こまめに給水させるように、大会本部から通知が来た。監督の天草浩二はグランドを見た。ゆらゆらと水蒸気がたちのぼる中で、整備員がトンボを使っていた。まもなくプレイボールだ。浩二は、ひとつ息を吐いた。 「まいったなぁ」  思わず声に出てしまった。あわてて周りを確か

          【小説】夏のスリーアウト(1)