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フランクル著「夜と霧」/それでも人生にYESと言おう

フランクルは、1905年 ウィーンに生まれ、アドラーやフロイトの影響を受けて精神ロゴセラピー(実存分析)を提唱し92歳で天寿を全うした心理学者である。(なんと、16才の時フロイトと文通した逸話があるそうです)

1933年1月、
ヒトラーが政権与党となりユダヤ人を迫害する事で世界を統一しようとした。その流れで第二次世界大戦が勃発。(大雑把ですが)

やがてある事件をきっかけにホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)が始まり
フランクルは、1942年に拉致される。(その時フランクルは36才、既婚。)
そして、1945年4月に解放されるまで、囚人として監獄に捕らえられ
具体的にここに記すのもおぞましいこの世の地獄を耐え生き抜いた。
両親、兄、妻は収監後早い段階で
死亡(病死、処刑により)していた事を、解放後に知ったという。

囚人は(囚人って!)
捕らえられたのち、
貨物車両に詰め込まれ何日もかけてアウシュビッツに輸送される。
そこでさらに、
働けそうな人は別の収容所へ。
役に立たなそうな人はガス室へと命の選別が行われる。

身ぐるみ剥がされ
全ての毛を剃られ
一人一人に数字が与えられ(表紙の、119104が、フランクルに与えられた数字)
人格も名前も何もかもを奪われ
極寒の中で薄着で奴隷として働かされ
1日に1杯の具のないスープだけしか与えられない地獄の日々。
いつも監視下にあり、
囚人達はやがて極限状態に陥っていく。

そんなある日、
彼の目の前に妻が現れ(幻視)温かい言葉を交わした。フランクルは、その時、愛こそが人間にとって最高のものだという事を確信する。
妻が生きているかどうかはもはや関係なかった。彼女はきっとそこにいる。
と思う事で救われたのだ。
(実際は、その時妻は既に処刑されていたのだが。)

過酷な環境の中で唯一
過去だけは侵害されなかった。
過去の妻との思い出によってのみ、彼は生きていく意味を感じる事ができたという。

心を病み自ら死へと進む者、抵抗力を失い病いが悪化して死んでいく者が殆どだった中で、
フランクルをはじめとした
わずかに生き延びた人達がいた。

そこには、何の違いがあったのだろうか?

フランクル曰く、
苦しみを耐えるには、生きる意味が不可欠であると。

私達はとかく
人生に意味があるのかと問いがちだが、逆なのではないか。
すなわち、人生に問いかけるのではない。
人生がまず先にあって、
その人生が、私達に問いを投げているのだ。
その問いにどう答えるか、どう行動するか。なのである。と。

フランクルは、どんな時でも絶望しなかった。
思考だけは自由だった。

結局、与えられた環境でいかにふるまうか。という事。
我々は人生に試されているのだ。

✳︎✳︎✳︎

囚人達が作って歌っていたという、
ブーヘンヴァルトの歌というのがあったそうです。

私達の運命がいかなるものであろうとも、私達は人生にYESと言おう。

そんな歌詞だったそうです。

✳︎✳︎✳︎

さて、
この話は、解放されておしまいではありません。
解放後、いざ目の前に訪れた自由に、人々は戸惑い、精神的に異常をきたした人が多かった。
極度の緊張から極度の弛緩へ。
心理学でいう、離人症の症状に陥ったという。
あんなに夢に見た自由を得たというのに。
これは、今で言う、激しいトラウマによるPTSD状態といえるのかもしれません。
フランクル自身も、身一つでこれからどうすれば良いのか途方に暮れ自分を見失いそうになりながらも、
妻の死を乗り越えるために、ナチスに没収され失った論文の原稿を改めて書く事に没頭する事で生きる力を取り戻し運命を自分で変えていったのです。

129頁「生きる意味を問う」以降の文章がとても心に響きました。

その中の一節↓

人は、子供の時の傷が原因
というより、
人生に意味を見出せなくなった時に絶望する。
喪失などの悲しみを癒すには、
その人の人生に意味を持たせる事。

あまり多くを書きすぎるのも良くないと思いまして、(著作権的に)
大幅に文章を割愛しましたが、、

1番心に響いたのは、
「人生に意味を持たせるのは自分以外にない」という事です。
こんな人生に何の意味があるのだろう?と考える事、そういう時間を持つ事は勿論大切だけれど、
いつまでもそこで停滞していても意味はどこかからやって来てくれる訳ではない。
自分から取りに行かなければ意味は見つからないのだと
自分なりに解釈しました。

読んで良かった‼︎
読もう読もうと思って何故か読めずにいた本でしたが、
単なるレポートではなく、体験記である事も、いつまでも多くの人の心を打ち、読み継がれる本である所以なのかもしれないと思いました。

ご興味ある方は
是非実際にお読み頂く事をお勧めします。

それでは今日はこのへんで。
最後までお読み頂き
ありがとうございました❤︎