見出し画像

ドイツに移り住むまでの道のり⑧光が欲しい

2014.01

めまぐるしく、日々が過ぎていったように思う。

体も頭も疲れて家に帰り、シャワーを浴びる。なぜか、お湯が出ない日があった。ルームメイトがいつ帰ってくるかもわからない、誰かに、何かを質問することも緊張する。頭はいつも熱を上げている。

毎日、知らない言葉に囲まれて過ごすのは、ストレスだったのかもしれない。ひとりで遠くにいることが、辛かったのかもしれない。自分の中身と外の世界でのコミュニケーションがうまく取れなくて、癇癪を起こしそうになる。

冬休みを終えて帰ってきたルームメイトの学生が、Quarkという、ヨーグルトとチーズの中間、たんぱく質を多く含んだ乳製品を食べている。

スポーツやトレーニングの後に食べると、筋肉の補強にいいらしい。キッチンでそんな話をしながら、それぞれご飯を食べる。

慣れない状況と慣れない人たちに、私は緊張しっぱなしだ。

ある日、頭が辛くなって、プリングルズやQuarkやミューズリーを買い込んで、お腹が膨れるまで食べてしまった。食べることで、ダメな自分をダメだと認めようとする行動。

このまま食べ続けても、トンネルの出口は見えない。

ベッドに仰向けになって、瞑想しようと努めた。

8秒数えながら息を吸い、8秒間呼吸を止める、そして8秒かけてゆっくり息を吐き出す。意識が遠くにいくまで、これを繰り返す。

もうダメだと思いそうな時に、光が見える。

その光は何もしていないし、私も何もしていないのだけれど、その瞬間には、ただ明るい光があった。

頭が落ち着いて、起き上がる。Quarkを食べられるだけ食べてしまいたいという欲は、消えていた。外に散歩に出かける。

見たことのある景色が、違って見えた。

道のコンクリートの隙間から咲く小さな花が、綺麗だった。

風が気持ち良く、呼吸をすることが嬉しかった。

自分の中と外の世界が、少しずつ調和した。

世界がまた、美しくなった。明日からもまた頑張れると思う。


あなたはあなたらしく、わたしはわたしらしく。