見出し画像

シェフこそ日本のホストだ

オリンピックまであと半年。
スポーツを始め、日本中が盛り上がっているばかりか、
早くも

終わったらどうなっちゃうのか?

という声まで聞こえてきます。
終わっても生活は続いていくし、
今回のオリンピックにより世界との接点は加速度的に広がり
アスリートのことだけでなく
間違いなく日本人の食意識も高まってゆくと信じています。

ところで最近、とても楽しい方とお茶をご一緒させていただきました。
中村孝則さん。
食やファッション、ライフスタイルの世界ではあまりにも広く多彩にご活躍で、
彼の肩書が正しくは何なのか、実は私、いまだによくわかっていません。
が、2013年からは世界的な食のコンペティション「The World’s 50 Best Restaurants」、「The Asia’s 50 Best Restaurants」の日本のチェアマンを務めておられ、
以来、私たちのような食関連メディアにとっても目が離せないキーマンです。

洋装だとビシッとしたスーツにポケットチーフやステッキ(!)で決めていらっしゃるのに、
一方では剣道や茶道に長く親しみ、
オフィスに伺えば着物姿で、自ら点てたお茶でもてなしてくれたりします。白洲次郎か。

そんな中村さんが言うんです。

海外のお客様には、シェフが文化もろとも日本を紹介してあげると絶対喜んでくれるよね

曰く、
世界中のフーディーから、ウマミ、マッチャ、ワサビ、ユズ、ワギューなどの日本の食が支持されるようになった今、
食の最前線に立つプロの料理人が
日本料理や和の食材の裏に潜む本来のストーリーを彼らに伝えることで、
一過性のブームではなく、「日本人と食」のバリューが正しく広まるのではないかというのです。

和食の料理人に限った話ではありません。
国内外で活躍するフレンチやイタリアン、中華のシェフに至るまで
たとえ自分の専門でなくても、茶道のしきたりや懐石料理の意味をちょっぴりでも勉強しておくことで、
最高&最強の日本応援団になり得るのでは、というご意見でした。

これを聞いて、
あ!と思うことがありました。

かつて私はマダム雑誌の編集部にいたのですが、茶室や懐石の撮影には泣かされたものでした。
現場で撮影してきた写真はことごとく上司から間違いを指摘されました。

茶碗の置き方が畳の目に対して逆

とか、

箸の位置がおかしい

とかね。
再撮が怖くなり、和の撮影だけは現場経験豊富な重鎮カメラマンにしかお願いしないようにしていました。

今、海外で食事したり海外の料理雑誌を眺めていたりすると、
たまに、「なんだこれ⁈」という”日本料理もどき”に出会すこともたびたびです。
こんもり盛り上げられたごはんにブッ刺さった箸、
居酒屋と茶懐石が入り混じったかのような怪奇膳など、みなさんも見覚えがありませんか?

日本に対して興味津々という海外の方が、
愛とリスペクトを込めてやってくれていることですし、
基本的に食は自由なので、別に悪いことではありません。

でも、前出の中村さん曰く

基本あっての遊び、だからね。

そうなんです。
日本料理やお茶は、厳格なルールがあるからこそ、
そこを外す茶目っ気や遊びが尊ばれる文化。
最初からそれらを知らずに単純な「ジャパネスク」を取り入れるだけだと、
日本料理の真の面白さは永遠に伝わらないままです。

和食の仕事が増えたらいいな。

シェフの方々と一緒に、和の作法を学ぶイベントとかやりたいな。

門外漢だと割り切ってたオリンピックイヤーでしたが、
こんなことが実現したら、一気に素敵なメモリアルイヤーになりそうです。

#料理 #オリンピック #COMEMO

フードトレンドのエディター・ディレクター。 「美味しいもの」の裏や周りにくっついているストーリーや“事情”を読み解き、お伝えしたいと思っています。