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レシピの行間を読んでみて

文章を書くのって難しいけど楽しい。
……という方がnoteユーザーでは大半かと思います。
では、レシピを書くのってどんな感じだと思いますか?
実は、これまた難しくて奥深いんです。

そもそもレシピって「書く」もの?

なんでしょうか。
レシピとは、まず第一に
それを読んだ人が同じ味を再現できること
が、なによりも重要です。

雑誌だと仕上がり写真とかプロセスカットが入ることが多いんですが、
文字情報だけで美味しい料理へと導いてくれる
新聞の料理コーナーなどは、実は相当な傑作ぞろいです。

レシピを考案する料理家さんの技術とセンスに脱帽しつつ、
それを、きちんと体裁を整えて書き表す担当編集の力量に
私はいつも感動します。

料理家から届いたレシピを載せればいいだけでは?

と思うでしょ?
それが違うんです。

レシピというのは、人によって書き方がまちまちで、
しかも、必ずと言っていいほど、何かが抜けちゃうことが多い厄介者。

SNSの素人さん投稿レシピを試してみたりすると、勢いがあって面白い反面、
食材欄にあるワサビが最後まで出てこない……
とか、
作ってる途中でいきなり「白髪葱を入れる」って、今ここで手を止めて切るの⁈

みたいなこと、ありませんか?
あぁいうのを防ぐべく、料理編集者がチェックしたり、
大量にレシピを提出する料理家さんなどは
レシピを書き出す専門アシスタントを雇ったりもします。

そういう事情もかんがみて、

いいレシピってなんだろう

と考えたりするんですが、
ひとつ言えるのは、レシピにも性格が現れるってことです。

例えば、ずいぶん前に北欧ガストロノミーの雄、「noma」のレネ・レゼピシェフのレシピを誌面掲載したことがあります。
フランス語で書かれていたものを、翻訳者に訳してもらい、
さぁ、記事にするぞ!と目を通してみたら、

・一晩亜麻仁油に漬けたフレッシュのナントカ草(ハーブ)
・オーガニックの干し草でスモークしたナントカ貝
・サワードミルク

など、「なんじゃそれっ⁈」な食材のオンパレード。
おそらく、あれを再現できた読者さま、1人もいなかったのではないでしょうか(ごめんなさい)。

日本を知らず(当時は)、そして毎日世界中のフーディーを相手に料理を出しているレネシェフにとって、
レシピとは秘伝中の秘伝。
教えてくれるだけでも、すごいことなんだと思いました。

料理研究家のウー・ウェンさんのレシピは、
少ない食材で誰もが作れる簡単で美味しいものが多いのですが、
注意深く見ていると、同じ料理でも年々変化(=進化)しています。
「塩小さじ1/8」なんて少量表記が出てくるのは、
ウーさんのレシピくらいではないでしょうか。
「塩を減らしても、入れるタイミングや合わせるオイルなどで工夫して
味わいの深さは変わらないようにするの」だそう。
簡単なのに、実はものすごく研究されていることを知り、驚いたものでした。

レシピも読み物。行間には意味があります。

煮込み料理の材料に「赤ワイン800ml」とあったら、
「あぁ、この料理家は美味しさのためなら、例え2本目のワインがほとんど残ってもヨシなのか……」とか、
準備した食材が、仕上がるときにはキレイに使われてなくなるレシピだと、
「ストック食材事情も考えてるんだなぁ」とか。

そう思うと、レシピをただ読むだけでも、
まるで人間ドキュメント。
おすすめです。

写真は、先日東急電鉄の駅でピックアップしたフリーペーパー「SALUS」。
表紙の美味しそうなおでんに惹かれ、トライしてみたのですが、
見た目のシンプルさとは裏腹に、
1.牛すじのスープをひき、
2.昆布と鰹節の出汁をひき、
3.面取りした大根を米を入れた汁で煮て、
最後に3つのスープを合わせ、そこに下準備した具材を入れて煮るという、
超本格的なおでんでした。
結果、私が作ったとは思えないくらい美味しいおでんが完成。
オカズデザインさんのレシピでしたが、

手間さえかけたら、身の回りの食材がこんな感動的な味になるんですよ

というメッセージを、勝手に感じてしまいました。

寒い季節の読書に、ぜひ美味しいレシピをおすすめします。

#料理 #COMEMO #レシピ

フードトレンドのエディター・ディレクター。 「美味しいもの」の裏や周りにくっついているストーリーや“事情”を読み解き、お伝えしたいと思っています。