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パイは国内じゃない、世界だ

ほんのひと昔前まで、
若い料理人が修業先に選ぶのはたいてい

フランス🇫🇷、またはイタリア🇮🇹

でした。
まぁ、当然です。フレンチの本場、イタリアンの本場で実力を身につけて凱旋帰国し、
自らの店を開いて話題になって、
予約の取れないレストランとなり、重鎮シェフへと育っていく……そんな成功への方程式があったように思います。

そんな構図に変化が起こっていると知ったのは、
何年か前に読んだ『Casa BRUTUS』の記事でした。
「料理界の東大」と呼ばれる「辻調理師専門学校」の校長先生、辻芳樹さんのインタビューか何かで、
(ちなみに「料理界のハーバード大学」というのもあります。「CIA(The Culinary Institute of America)」といい、ニューヨーク郊外にある、それはそれは厳しい学校だそう)

辻さん曰く

最近の若い料理人は修業先にパリを選ばない

とのこと。
では、どこに向かっているかというと

英語圏の国のレストラン

で修業するのがメインストリームになるかも
という話でした。

要するに、料理技術だけではなく
時代のセンス、
各国の若い料理人たちとの切磋琢磨で嫌でも意識するようになる滾(たぎ)るような野心、
そして何より
今後の自分のプレゼンスを上げるための英語力
を身につけるには、
英語圏の国のレストラン厨房に入るほうが賢明だと判断する人が増えた、ということです。

現に、その頃から
コペンハーゲンやロンドン、メルボルンで修業を積んだという、
快活でビジネスセンスも持ち合わせる若いシェフに多くお目にかかるようになった気がします。

同じ特集内の別のページでは、
偉大なるフランス人シェフ、故ジョエル・ロブションさんが
「何が分子料理だ、何がイノベーティブだ。ガストロノミーの中心は昔も今もパリに決まってんだ!」
みたいなことをおっしゃってて、
それはそれでめちゃくちゃ面白かった。 笑

しかし本当にその後、シェフの在り方は変わりました。
ビンビンのセンスと技術、英語力を身につけた若いシェフたちは、
帰国後に目覚ましい活躍を見せてくれるも、
またすぐ別の国に行ったり別の事業に着手したり。

いい意味で言うのですが、

とにかく落ち着きのない、素敵な人が多いです。

そんな人たちに向かって、旧弊な価値観で
そろそろ落ち着いたらどうだ、とか
何料理を目指してるんだ、とか
一国一城の主になれ、とか、
言っちゃダメ。たぶんそれ、ナンセンスです。

グローバルシェフが今後、ビジネスマンにとっても働き方の見本みたいになる時代もくるんじゃないかなーと思いつつ、
気になるシェフを発見したらとにかくすぐに駆け付けるようにしています。
今、行かないと、
あっという間に彼らは別の世界に行ってしまうかもしれません。

#COMEMO #人生100年時代 #レストラン #料理

フードトレンドのエディター・ディレクター。 「美味しいもの」の裏や周りにくっついているストーリーや“事情”を読み解き、お伝えしたいと思っています。