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心踊らなくても


コンタクトの処方箋をもらいに、眼科に行く。

機械に顎を乗せて、おでこをつけて、小さな穴を片眼で覗き込むと、見慣れた赤い気球がぼんやりと遠くに見える。
わたしはこどもの頃から目が悪いので、この気球はずっと昔から知っている。
眺めていると、時間の軸がぶれる。
このとき、眼科の方は何を調べているのだろう。

次に、おそらく眼圧を測るために、眼球に強めの細い風がかかる。
怖いしちょっと痛い。

同じようなかたちの違う機械に顎を乗せる。
目の写真を撮るらしい。
そんなのあったっけ?
右目で覗き込むと、わたしの右目だけが黒く縁取られて映っている。
自分の目をこんなにまじまじと見たことないかも。

毎日鏡を見ているのに、自分の目のこと、全然見たことない。

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ひそひそ話

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