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読書メモ【脳は美をどう感じるか】著者 川畑秀明氏

脳は美をどう感じるかーアートの脳科学
著者 川端秀明氏

p8より一部抜粋
「優れた芸術家は作品を通して、鑑賞者に時代を超えて何らかのメッセージを、そして彼ら自身のん心(脳)の中にある美を伝えようとしてきた。あたかも、最先端技術で解き明かされつつある脳の仕組みや働きを、何十年、何百年も前に生きた彼れが知っていたかのように。その直感は優れた芸術家ほど確かで見事だ。」

p17〜18
【知覚心理学「トロクスラー効果」と絵画の関係性】

「ロスコは作品を見ている人をどこに連れ込もうとするのか。ロスコが描き出すものは、彼等にとっての人生の『安息』であるとも、あるいはその反対に『絶望』であるとも考えられる。彼の大きな絵を見つめることで、自分と絵とが一体化し、安息にせよ絶望にせよ宗教的体験に近いものが得られるのではないだろうか。宗教的体験で得られるものとは、例えば無我の境地であり、自我を消し去ることだろう。

ロスコの絵は、トロクスラー効果(※トロくスラー効果は、図形の中心点をじっと見つめる事と周辺にある図形や色が消失してしまう。)のように、しばらく見つめていると前景の面の色や明るさが視野全体を浸食して、見る人をも絵の一部い包み込んでしまうような効果があるのかもしれない。

確かにロスコは、絵画の与える印象の強さが、個々の作品とそれを取り巻く空間の相互作用にかなりの程度まで左右されることには気づいていた。

彼が求めていたのは、全てを包み込む環境であった。

それは、大きな絵画は否応無く鑑賞者の体験の内側に入り込むことができ、その時鑑賞者は絵画に視覚世界をコントロールされることを意味する。

小さな絵画は鑑賞者の体験の外側に立つことになり、俯瞰的、客観的にならざるを得ない。」

【絵を見る人を絵画の世界に引き入れようとするには?】
p18】
「人は環境を知覚する事で、自分を知覚する。

『絵画を見る事』と『鑑賞者が自分を見ること』を一体化について、
ロスコは意図していたはずであり、
それゆえ展示される空間までも作品の一部」でなければならないという思いがあったはずだ。

だからこそ、ロスコは壁に自分の作品以外は置かないでほしいと願った。

絵が飾られる空間だけでなく。

見るひとそのものも作品の一部なのだろう。
そのようにして、絵を見る人を絵画の世界に引き入れようとしたのだ。

「脳は美をどう感じるかーアートの脳科学」p18より一部抜粋
著者 川端秀明氏

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