新しい価値を生み出す思考法、アートシンキング
12月11日、ヤマハ発動機は2030年を見据えた長期ビジョンを発表した。
スローガンに、
「ART for Human Possibilities」を掲げた。
私は驚愕した。ヤマハ発動機は、自動二輪で世界で売り上げ世界第二位、船外機や水上バイクの販売台数は世界トップの大企業だ。
このような大企業が、何故「Art」という言葉に着目したのだろうか。
実はこの言葉には、急激な変化が進む時代における成長戦略が示されていた。
▼以下、ヤマハの長期ビジョンをHPより一部抜粋
今後、人々の価値観は世界でますます多様化していき、また地球環境や社会を取り巻く課題は深刻かつ複雑になっていくと想定されます。
当社がこれまでに培ってきた技術と感性を、これまで以上に「人間に近づく」「人間の可能性を拡げる」ことに適用し、ヤマハらしい取り組みによって社会の要請に応えたいと考えています。
その想いを「ART for Human Possibilities」という言葉に込めました。
これから、人々の価値観が多様化していった世界においては、経営には不確実性は増すだろう。
特に新規事業は、不確実性との闘いだ。
不確実性はとても厄介なものだ。
とはいえ、どのような企業でも時代に応じて、新しい取組みをしていかなくては、衰退してしまう。
激しい変化のなかでさらなる成長を遂げる為に、不確実性と向き合う必要があるのだ。
ヤマハ発動機の長期ビジョンには、不確実性と向き合い、さらなる成長を追求し続ける覚悟が反映されてる。
ところで、ヤマハ発動機がスローガンに掲げた「ART」という言葉から、私は「アートシンキング」という思考法が思い浮かんだ。
アートシンキングは、スタンフォード大学で注目され始めている思考法だ。
そこで今回は、デザインシンキングと比較しながら、アートシンキングについて述べたいと思う。
不確実性と新規事業
新規事業などイノベーティブな取り組みを行う際に、不確実性が必ず伴う。
不確実性には、デザインシンキングのような論理的な思考だけでは対処できない。
デザインシンキング、アートシンキングの違い
以下、デザインシンキングとアートシンキングの特徴について簡単に述べました。
【デザインシンキング】
マーケティングを徹底して行い、データに基づいて、顧客のニーズを把握する。それに応じて、プロダクトやサービスを提供する。
【アートシンキング】
市場ではなく、自分と向き合い、直感を大切にしてプロダクトの開発をする事。0から1を生み出す思考法。世間が必要だと言っているかどうかではなく、なぜかわからないが感覚的に自分が必要だと感じることを信じて、プロダクトやサービスを生み出すこと。
多くの人は内なる声を蔑ろにし、世間で正しいかどうかで意思決定をしてしまう。
常識や今までの経験をもとにして、思考を狭めてしまう。アートシンキングでは、自由な発想を妨げてしまう可能性のあるものを一旦取っぱらい、感性に基づいて新しい発想を生み出そうとする。
【アートシンキングの今後】
デザインシンキング、アートシンキングもどちらもビジネスにおいて、大切な思考法だ。
だが、デザインシンキングは普及している一方で、アートシンキングはあまりにも蔑ろにされているのが現状だ。
新規事業ですら「ファクト(fact)」ありきだ。データなしに提案を通す事はほぼ不可能だ。
だがいずれ、過度なデータ主義は終わりを迎えると思っている。
今後ますます変化の激しい時代に突入する。過度なデータ主義では、対応が遅れる。(変化のスピードに追いつかず)機会損失をした実例は、今後は数多く浮かぶだろう。
その時初めて、0から1を生み出す思考法であるアートシンキングの大切さに世間が気づく事になる。
アートシンキングの必要性
デザインシンキングは、既存のニーズに基づいた課題解決策だ。
だが、万能ではない。なぜなら、人々のニーズは、全てが顕在化されていないからだ。
多様な価値観が溢れる時代の中で、ニーズは常に変わり続ける。顧客は、自身のニーズに気づいていない事もあるだろう。
そもそも、既存のニーズに対しては、どの企業も既に取り組んでいる。
なので、レッドオーシャンだ。そこには先行優位性などが働いており、競争優位性を新たに作ることは難しい。
仮に市場でシェアを獲得していても、その市場だけではいずれ限界が来るだろう。市場は伸び続けないし(伸び率が低くなる)、限界があるからだ。
だからこそ、常に新たな市場を開拓する事を視野に入れて置く必要がある。
既存のニーズではなく、潜在的なニーズの可能性に挑戦し続ける。
そうする中で、新たな市場にいち早く気づき、先行優位性を築く事ができるのだ。
その際には、緻密なマーケティングではなく、0から1を生み出す思考法である「アートシンキング」が必要となるのだろう。
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