【ちょっとお話】《５》予想外の音色

父の葬儀が行われた 11月11日以降、朝リビングに行くとまず、父の祭壇にお参りするようになった。

祭壇の前に座り、お鈴を鳴らし、手を合わせる。「チーン…」というお鈴の音には、心を静めてくれる不思議な効果があると思う。

四十九日まで、父は生前お世話になった方々へのお礼参りで忙しいはずだ。私は私で、やりたいことがたくさんある。

「それぞれ忙しいけど、感謝しながら楽しく今日１日を過ごそう！」
と、声をかける。

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今朝もリビングに行き、祭壇の前に座った。鈴棒を手に取り、お鈴を鳴らす。

カンッ！

《あれ？ いつもの音じゃない…？》

よくよく見ると、私が鳴らしたのは、線香を立てる陶器製の香炉だった…。

父の苦笑いが、目に浮かぶ。