見出し画像

曇り朝

ベルリンの朝は曇っている。昼も曇っているし夕方も曇っている。日は四時に暮れる。北欧(ドイツはそれほど北ではないけれど)の冬が暗々しいのは聞いていたが、こんなに暗いとは聞いていない。いや、どちらかといえば暗いのは日照時間に呼応して浮き沈みする私の心の方なのだけれど。

人を失って初めてその人の価値を見出すように、太陽を失った私は今太陽の価値を考えている。太陽が乱反射した青空は心の雲をふぅっと吹き飛ばしてくれる。もやもやした感情やミルクとワインを混ぜた後みたいな生々しい臭い感情たちも浄化して、もとの美味しい形に戻してくれる。空が明るくなる前に飲んでいたコーヒーも、空が明るくなった後ではキラキラした味がする。日光は、魔法だ。

昨日薬局でビタミンDを買った。ビタミンD不足になると骨が脆くなるらしいので、そのサプリメントだ。曇った心まで直してくれそうではないけれど。なにを処方して貰えばいいんでしょう、セロトニンのサプリとかかな。売ってなさそうだなぁ、

ドイツに着いて三日目。真っ暗な外をみて、「これは部屋にこもるな」と思ったのでIKEAで散財した。わりと撒き散らした。少しファンキーなラグを買って、壁紙を買った。きっとアロマキャンドルとかも買えばもう少し明るい部屋になるのかもしれない。

外のエネルギーが自分を支えてくれないのならば、自分でエネルギー源を備えるしかない。綺麗で少し変わっていたり興味深いものを少しずつ集めていく。ベルリンはそれをするのには最適な場所な気がする。今学期は空のワインボトルに飾るバラのドライフラワーと昨日買った小さなお花の鉢に支えられて生きていく気がする。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?