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静寂

こんこんこん、と頭の中のドアを叩く音がして、洞窟の中に隠れていた意識が差し込む光で目を開ける。ぼんやりとする意識の中で、携帯を手繰り寄せる。朝っぱらから情報の波に襲われて、意識が困惑する。「あれ?地震かな」

外的静寂は内的混乱を明らかにする。

私の中で未処理の感情たちが蠢いて、叫んで、今日も頭の中でプロテストが行われている:「私たちの声を聞いて」。私は言う。「心の底から聞いてあげたいと思っている。ただ、時間と順序と優先順位がある。」本心だ。政治家がいいそうなフレーズでもある。ひとまずカオス鎮火のために「ほら、日光が足りないんだろう?」とビタミンD錠剤を放り込む。なんの助けになっているのかいないのかわからないが、プラシーボ効果に期待する。彼らの声を聞いて、それを人生に反映するにはあまりに時間的資源とエネルギーがかかりすぎる。学期が始まったばかりの今、そんなことをして遅れをとっていられない。ー政治家の本心もきっとこんなもんだろう。近隣諸国に遅れなどとっていられない。とりあえずプロテスト鎮火だ。

でも私は知っている。頭の中の未処理な感情たちこそ、私を造っていく要素であること。大きな社会運動こそが国民性を表していること。すべてを聞き入れればいいわけではない。「疲れた、やめたい、もっとジャンクフードを食いたい」と叫ぶ声もいる。これは無視。「悲しい、寂しい、疲れた、少し休みをくれ」という声が聞こえたら少しスローダウン。パソコンを閉じて、携帯を閉じて、私と私だけ、ベルリンの大型ホステルの一部屋で。

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