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ひきこもりの子供にできること

子供は相変わらず部屋から一歩も出ず、一目見ることも許されなかった。
しかし私の気持ちは、以前とはずいぶん変わっていた。

学校には行かなくていい
部屋にずっと引きこもっていてもいい
親とも会わなくていい
ご飯も死なない程度に食べていればいい
昼夜逆転生活でもいい
お風呂にも入らなくてもいい
歯磨きもしなくていい
日に当たらなくてもいい

今の子供の状況をありのままに受けとめること

それが徐々にできはじめていた。

一冊のノートに毎日手紙を書いた。

○月○日 ○曜日 天気○
今日の昼ご飯は オムライスです。
少しチンしてから食べたほうが美味しいよ。
今日もとても暑いよ!
水分をたくさんとって熱中症に気をつけてね。

そんな特に内容のない手紙を毎日書き続けた。
子供がそれを見ているのかどうか分からなかったが、何の反応も期待せずにそれを続けた。
私が子供にできることはご飯を用意すること、手紙を書くこと以外なかった。

私の不安を、子供に押し付けることをしたらいけないと思い始めた。
子供がひきこもって以来、自分の中で考えることといえば、子供のことが90%以上を占めてしまっていた。
私はもっと自分のことに集中しようと考え始めた。

子育て、思想、哲学、宗教、ドキュメンタリー、自己啓発、心理学、スピリチュアル
ありとあらゆる分野の本を貪るようにして読んだ。
元々本が好きでよく読んでいたが、これらの読書は今までの娯楽としての読書とは違うものだった。

この状況を客観的に観察するツール
何か自分を探すための
自分が気付かずにきた本当に大切なもの
生きるヒントを得るものだった

私には一つのものを心の底から信じ込むということはできなかった。
宗教や思想もそれぞれいい部分はあったが、それを盲目的に信じることは難しかった。
それをするにはもうすでにアイデンティティーが確立しすぎていた。

たくさんの考えや教えの中で、自分にしっくりくるものだけを選び取り、心と頭に染み込ませた。

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