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ネモフィラの空へ向かう旅

「海が青く見えるのは、空の色を反射しているから」と教えてくれたのは誰だったか。空は青色で、海は透明な色。そう思っていたけど、実際には空も、海も、どちらも太陽光の青が人間の目に映っているだけらしい。どちらも真に青いのではなく、青く見えるだけなのだ。

でも、目の前に広がった光景は、紛れもなく青色だった。
青空のような丘がそびえ立ち、空は青色で覆われ、その境目が混じり合うように、花たちが空へ溶け込んでいた。
地平線まで広がる大海原を見たときの圧倒。雲ひとつない綺麗な青空を仰いだときの眩しさ。大きく、そして美しい海の大波のような。あるいは、青空が目の前に落ちてきたような。そういうふうに見えた。
空なのか、海なのか、どちらかでしか例えれない自分が腹立たしく思えるほどに、その光景はどちらでもなかったのだ。

近づいてよく見てみれば、小さな青色の花が一輪ずつ認識できる。この花の集合がこれだけ圧巻な光景を生み出しているということに、花畑というものが持つパワーに驚かされる。
丘の上、地平線のような、青と青の境目にはたくさんの人が列んでいた。それはまるで、青空の途中で人が列をなしているようだった。

いかにもな白いワンピースで、アンティークな緑色のトランクケースを持ち、ビビットな赤い帽子を被った女性が、丘の途中に見えた。それは青一色のキャンバスに、赤い絵の具を一滴垂らしたように、鮮やかに目立っている。パッと見、一人のようにも見えるが、丘の下には、男性がとても長いレンズのカメラを構えている。彼があの人を撮影していたのだろう。
周りを見渡してみると、意外にも白いワンピースを着た女性は珍しくなかった。麦わら帽子に白いワンピースの女性が被写体として、カメラにポーズを決めている。花畑の定番衣装なのだろうか。時には、ウェディングドレスを着た女性も数組見かけた。やはり白は青い花畑に映えるようだ。皆、この光景を前にすると、被写体の存在を望むのだろう。青一面の景色だけではない。そこにいる誰かを絵に収めたいという気持ちが共感できる。
彼女たちのことを思えば、今日という日が快晴になったことが本当に良かったと思えた。
ベンチで休憩していた老夫婦が「あれでまたインスタグラムでいいねがもらえるんだろう」とこぼしていた言葉がやけに耳に残った。

と、いうふうな文章を書くために、茨城県の国営ひたち海浜公園まで旅行しに行ってきました。せっかく行くなら、その場所をどういうふうに文章で表現できるかを試す遊びみたいなことです。

花を見に行く旅

ここ数年、定期的に「花畑を見に行きてえな」と突然思い立つことは何度もあった。ただその時期に見たい花が咲いていなかったり、いつも機会を逃し続けていた。今回その定期的な発作と、ネモフィラの開花時期が偶然重なったので、突発的に茨城県に赴いてみたという次第。
つい先日、大阪への旅行記を書いたばっかりじゃん。という形になってしまうが、実際に大阪に行ったのが3月25日で、今回が4月22日。実はひと月開いてる旅行だったりする。

早朝の東京駅

旅行を行くにあたって、割りと移動時間が好きなので、わざわざ朝早くに出発し、約3時間ほどかけて、快速列車でひたちなかへ。

国営ひたち海浜公園

快晴

雨の予報だったので、雨模様も覚悟で行ったが意外にもめちゃくちゃ晴れていた。最近思ったのだが、割りとこういう旅行に行った際の天気運は良い方なのかもしれない。広いとは知っていたが、中に入ってみると、思っていたよりも広くてびっくりした。

終わりかけの水仙

水仙の花畑

見頃が終わりかけていたので、あまり期待していなかった水仙が意外にも咲き誇っていたのが嬉しかった。
『ナルキッソス』というゲームで、主人公たちが水仙を見に、旅をすることに影響を受けて、今回も突発的に花を見たいと思っていた節があり、まさかその水仙を見れるとは思わなかった。一種の憧れのようなものすらあった。

イノシシにご注意ください

水仙の花畑を抜けると、なんか普通に森の中に入ってびっくり。マップに樹林とは書いていたけど、想像以上に森だった。

観察池
屋台がやたらにそこら中にあったので、食べた肉巻きおにぎり。

ネモフィラの丘

その先にあったのが、ネモフィラ畑の丘だった。感想は最初に書いた通りだが、歩いて向かう時に、徐々に青い丘が見えてくるのが圧巻だった。遠くに見えるというよりは、青が迫りくるといった感じ。ネモフィラの見頃の真っ只中だったので、覚悟はしてたが、想像以上に人がたくさんいて慄いた。

ネモフィラアイスとネモフィラ

ネモフィラの花びらの形をしたアイスを買って「え、めっちゃかわいい」って思いながら、映えそうな写真を撮ってた。そういう人が多いイメージだったけど、思ってるよりこのアイスを買ってる人が少なく、なんかちょっと恥ずかしかった。

ほぼお祭りみたいな屋台

通り過ぎた場所だけど、ネモフィラの開花時期を狙ってるのか、めちゃくちゃに屋台があって、ほとんどお祭りみたいな状態でびっくりした。花の開花時期ってお祭りだったんだ。

ネモフィラティーとネモフィラシフォンケーキ

ミーハーセット

ガラス張りの海の見えるカフェで頼んだネモフィラセット。昼時だったせいか、結構人が混んでいて、レジに列んだけど、意外とみんな普通にアイスコーヒーとか焼きそばなどを頼んでいる人ばっかで、このミーハーもろだしのネモフィラティーとネモフィラシフォンケーキを頼んでいる人がほとんどいなかった。グラスに入れてもらえるのが、ホットしかなく、クソ暑いのにわざわざホットティーまで頼んだ。一人旅であまり恥ずかしいとは思わないタイプだけど、このときばかりは自分のミーハー感がやたらに恥ずかしかった。ブルーティーは想像より、色合いがエメラルドグリーン寄りだった。

海と夏と秋を感じられる場所

砂丘

国営ひたち海浜公園には海が見える砂丘があり、思ってたより迫力があったけど、この辺のエリアまで来ると、人が全くいなかった。そもそも公園全体が広すぎるし、ネモフィラの方に人が集まっているせいなのか、すごく閑散としていた。

秋みてえな場所

抜けると落ち葉が大量にある通りにやってきた。暑い春という変な季節にやってきたのに、ここだけやたら涼しく、急に秋みたいな場所が現れた。

夏みてえな場所

気温も相まって、夏みたいな、秋みたいな、春の公園。森があり、海が見えて、花畑もあり、今考えるとすごく不思議な空間だったかもしれない。

がっつり遊園地

静かな場所を通り過ぎたら、今度はめちゃくちゃにがっつり遊園地が現れてびっくりした。急激に空気感が愉快になった。しかし、アトラクションを一つ一つ見ると、一昔前感があって、どこか懐かしさを感じる遊園地だった。

パンダの乗り物

お金を入れると動くタイプのパンダがまだ現存していることに驚いて写真を撮ってしまった。こういうのってまだ生きてるんだ。

青色のネモフィラカレー

想像以上にグロテスクなカレー

だいぶ歩いて、疲れすぎて、食欲が失せている中、絶対食べようと予定していたネモフィラカレーのお店の前に来た。青色のカレーというのを想像して、正直食べる気になれなかったが、せっかく来たんだからという思いで、頼んでみた。
こういう青いカレーにありがちな「食べてみたら普通にカレー」というのを信じて食べてみたが、実際は確かにカレーだが、それは口の中に入ってしまうまでの話で、見てる食べ物は青くグロテスクなカレー。正確な味は「口の中に入れて、見た目を忘れてしまえば、味は普通にカレー」だった。見た目を忘れる必要がある時点で「いうほど普通にカレーか?」という疑問に襲われた。料理においての見た目の重要性を再確認できた。

ちゃんと青色で彩られたネモフィラのラテアート

公園を一周してきたところのカフェでネモフィラのラテアートで休憩。今思えば、ネモフィラについての食べ物や食事だらけだった。ヘトヘトに疲れ切っていて、朝も早く、眠気が異常なこともあって、流石に限界だった。写真を取りすぎたせいか、持ってきたモバイルバッテリーの底が尽きるほどにスマホの充電がなくなってしまったので、ちょっと早めに駅に帰って、電源付きのカフェで時間を潰すはめになってしまった。今度から旅行は、ちゃんと大容量のモバイルバッテリーを持っていくべきだと気付かされた。

北茨城ロハス 磯原シーサイドホテル

近くにいい宿が見つからなかったので、電車で1時間ほどかけて、北茨城の磯原駅まで。夕食をつけなかったので、居酒屋でテイクアウトを買って食べようとした結果、居酒屋の開店時間に合わせて、チェックインの時間も遅くなってしまった。

めちゃくちゃに良い部屋

部屋が空いていなかったというのも合わせて、一人でめちゃくちゃに広い部屋に。こういう時に、もう一つのベッドはただの荷物置きになりがち。このホテルにした理由が、部屋に海の見えるバルコニーがついているとのことだったのだが

夜の海は怖い

チェックイン時にはもう真っ暗だったため、ほとんど海が見えず、ただただうるさい波の音と、結構な磯臭さ。さらにベタベタした湿気で、どちらかというと不快感の方がすごかった。結果、バルコニーに出ることはあまりなかった。

公式サイトより引用

この写真は綺麗だけど、入ったときは真っ暗だったため、なんだかよくわからなかった。ただ浴槽がカラフルにライトアップされていて、なんだかナイトプールのような高揚があって、それはそれで楽しかった。翌朝に入ったときは最高だったが。

最高の晩酌

居酒屋のテイクアウト

正直、居酒屋で購入したとき、その値段の高さに後悔した。シラフの状態でお会計するとこんなにも高く感じるのかとそこそこ絶望した。だが、実際にホテルの部屋で堪能してみると最高だった。部屋食というものにこだわりはなかったけど、今回でめちゃくちゃハマりそうになった。エイヒレの炙りってこんなに美味かったんだ。TVerでテレビ千鳥を見ながらいい気持ちになってた。ちなみに飲んでる「レモンサワースクワッド」には、思いっきり「from 中目黒」と書かれていた。

海に起こされる朝

ちゃんと海の見えるバルコニー

カーテンを全開にして寝たため、眩しい朝日と激しい波の音で起こされた。
なんだか気持ちのいい目覚めのような描写だが、実際には、寝不足で疲れ切った状態で朝1時頃まで晩酌し、その後に寝たにも関わらず、朝5時ごろになって、朝日に起こされてしまい、そこそこに気分は悪かった。もっと早くに寝るなり、なんとかすべきだった。

ロハスな朝食ビュッフェ

ロハスな朝食ビュッフェってなに?と思いながら、朝食に向かったのだが、正直今まで見た朝食の中でも、一番テンションがあがった。種類は少なめなものの、どれもおしゃれなメニューが多く、いろいろかき集めてしまった。バルミューダのトースターがあったり、コーヒーが2種類、コーヒーサーバーで置いてあったりして、楽しさが勝ってしまった。これだけでも、このホテルに泊まってよかったと思えるほどだった。

めちゃくちゃオシャレなラウンジ

海が見えて、温泉も良くて、朝食もおしゃれで、いろいろと居心地の良いホテルだったが、送迎がなく、駅まで徒歩30分ほどかかるため、行き帰りがタクシー必須なのがなかなかに痛かった。

暑かったり、寝不足だったり、歩き回って疲れまくったりと、まあまあなダメージを負う旅行だったが、それ相応に充実感がある旅だった。ずっと憧れていた、「花を見に行く旅」というのができて、すごく満足できた。

ちなみに一日中、右肩にショルダーバッグをかけていたため、肩の服がずれて、右肩だけが日焼けした。

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