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罪を犯して13年間塀の中で過ごした男、娑婆に出て、人の厳しさと優しさを知る。

一度罪を犯して社会のレールから外れた人間が、刑期を終えて社会に出たとしても果たして「普通」に生きられるだろうか?生きてきて一度も犯罪を犯したことがない私自身でも日々苦労しているのに。

きっとまた、何か事件を起こして塀の中に戻るかもしれない。それを意外とも思わないだろう。でもそれって、三上(役所広司)に目を付けた宮澤(長澤まさみ)や津之田(仲野太賀)と同じ気持ちだ。その意味で私にとっての今作は、映画ではあるものの現実と地続きの作品だった。皮肉にもその醜い好奇心が私を映画館へ足を運ばせた。

人を殺して13年間も塀の中にいた男、娑婆に出る

刑務所を出た元犯罪者の約半分は、5年以内に再び罪を犯して戻ってくるそうだ。ましてや13年間も塀の中にいた人が、同じ世界に居られるだろうか?しかし三上は自身の元来の素直さや真面目さと、周りの人に恵まれた。最初こそ、スーパーの店長(六角精児)に万引きに間違えられたりもしたが、身元引受人(橋爪功、梶井芽衣子)やケースワーカー(北村有起哉)は親身になって彼の力になろうとする。

そんな中でもやはり終盤、トラブルが重なってしまう。我慢ならない彼は古巣(ヤクザ)の組に帰ろうとする。親分(白竜)の「何も心配しなくていい、戻ってこい」の言葉に※博多弁だったはず。文字通り、ひとっ飛びで博多に帰ってしまうが、ここでも昔と今の違いに戸惑う。そしてあわや抗争に巻き込まれる直前に東京に帰る。

そして今度こそカタギになる決心をするが。三上の居場所がようやく出来たと思った矢先の、あのラストの描写はとても悲しい。コスモスの英語の花言葉は、harmony(調和)やpeace(平和)だそうだ。彼は果たしてこの現実の世界でそれらを得られたのだろうか。

劇場で緊張感を覚えたシーン

珍獣観察のようなコミカルな場面から一転、背筋が凍りつくシーン
チンピラに絡まれている男性をかばう三上。さすが!と思っていたら、一転、チンピラを完膚なきまでに叩き潰す。そこに何の躊躇もない。(また)殺してしまいそうになることもいとわない。ぶっきらぼうだけど優しい三上の中に今もある「その手で冷酷に人を殺した事実」を目の当たりにしてゾッとした。私も本能的に逃げると思う。

あ、これはやばい・・・ってなる場面

勤務先での介護士とのやり取りのシーン
三上と仲の良い介護士が虐められている現場を目撃してしまう。昔の彼はモップをもって襲撃するだろうがグッッと我慢する。虐められていると思った介護士はあやうく介護者を溺死させる寸前だったのだ。彼はそれについて怒っていたのだ。(じゃあ暴力をふるってもいいのか?という訳ではないが)

予告編、配信、公式サイトなど


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