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脚本28「赤い森の少女」

《これは変態童話》


●登場人物
◯伊一狼(いいちろう)
◯継狼(つぎろう)
◯菓子狼(かしろう)
○レディ・レッド
○ブヒ男(狩井沢瑠衣かるいざわ・るい)
●テーマ
テトラポット/赤ずきん

【1】あー、テトラポット登って
 消波ブロックに糸を垂らし、釣りを楽しむ三人の男たちが居た。海面に月の浮かぶ、夜だった。

継狼「真っ黒な。怖くない? これ」
伊一狼「夜の海だからな、落ちたら戻ってこれなそう」
菓子狼「特にブロックが入り組んでるからね。うはっ、お股ひゅんってした」
伊一狼「とにかく、気を付けろよ。絶対に、月を見るな」
継狼「う、うん」
菓子狼「もう魚は十分じゃないかな、次はカブトムシ捕まえないと」
継狼「足りるかな魚、足りなかったら大変だよ?」
伊一狼「うっ、うぉぉ」
継狼「兄さん!?」
菓子狼「そうか! しまった! 海面に月が映ってるよ!」
伊一狼「ワオォォォォンン!!!」
継狼「兄さんが変身した! 菓子狼っ兄さんの頭を包んで! 急いで!」
菓子狼「ちょっとイソメ残ってるけど、ごめん! 兄さん!」

 狼に変身した伊一狼の頭に残ったイソメが入った袋を被せた。

【2】森の中の少女
 森では豚にリードを付けて散歩をするお洒落な赤いコートを着た女がいた。

レッド「あら、豚。トリュフがそこにあるの?」
ブヒ男「ブヒブヒ、ブヒ」
レッド「ちゃんとわかるように話しなさい!」

 女はピンヒールで豚を蹴り飛ばす。

ブヒ男「は、はい! ここにトリュフは無いように思います閣下!」
レッド「思います?」
ブヒ男「ありません!」
レッド「じゃあどこにあるのかしら」
ブヒ男「えっと……それは……」
レッド「ハッキリしないわね! この豚!」
ブヒ男「ぶひぇぇ、しかし閣下、私はただの狩人、元狩人の人間でございます故」
レッド「生意気に会話をするでない。豚と自覚せよ!!」
ブヒ男「ブヒぃ!」

 豚と思われた肌色の生き物は人間だった。

【3】三匹の犬
 狼化をなんとか抑え込んだ三兄弟はカブトムシを捕まえるため、森に来ていた。前日に蜜を塗りたくった森中の木を探る。

伊一狼「すまなかったな、弟たちよ。海面に月が映るとは、迂闊だった」
菓子狼「それより兄さん、イソメが気持ち悪いよ」
継狼「菓子狼、袋は他にもあったろうに」
伊一狼「気にするな、優先すべきはカブトムシだ。早く見つけねば」
ブヒ男「ブヒぃぃぃぃぃ!!」
伊一狼「狩井沢の叫び声だ……」
継狼「いる……レディ・レッドが……近くに!」
伊一狼「へっいい気味だ、狩井沢。俺の腹を裂いた罰が当たったんだ」
継狼「僕が三匹食いつくしたことが幸いしたね、空前の豚不足さ!」
伊一狼「次は菓子狼の番だな」
継狼「あの山羊のとこだね、七匹もいるとこ」
伊一狼「菓子狼には、俺の失敗を踏まえて注意してある」
継狼「そりゃ寝ちゃダメだよ兄さん」
伊一狼「なぁ菓子狼、レディ・レッドのことは気にするな」
菓子狼「ウォ、ウォ……」
伊一狼「菓子狼なぜ空を見たぁぁぁ!」
菓子狼「ゥワォォォォォォンンンン!!!!!!!」
継狼「レディ・レッドへの恐怖で自我が保てなかったんだ」
伊一狼「まずいぞ、レディ・レッドに見つかってしまう!」
継狼「みつかったら、僕たちまたあそこに戻るのは嫌だ」
伊一狼「あ、ああ、あ、俺たちが人間の姿になれることをレディ・レッドは知らない」
菓子狼「ワォォォォォォォンンン!!」
伊一狼「菓子狼の遠吠えをやめさせろぉぉ!」
継狼「僕たちはまだいい、菓子狼の狼化を止めないと!」
ブヒ男「ブヒぃぃぃぃぃ!!」

【4】赤い森の少女
 トリュフを探す、赤いコートのレディ・レッド。

レッド「良く見つけたじゃない」
ブヒ男「お褒めにあずかり光え」

 トリュフを見つけたことで格好つけてしまった豚。ピンヒールが突き刺さる。

レッド「豚が粋がってんじゃないわよ!!」
ブヒ男「ブヒぃぃぃぃぃ!!」
レッド「この私が豚を褒めるとお思い?」
ブヒ男「ブヒン」
レッド「お思いって聞いてるのよ!」
ブヒ男「思いません! しかし私の言語は二つありまして、瞬時に使い分けることは相当に」
レッド「だまらっしゃい! 豚がこの私と同列の言葉を発するなどおこがましいにも程がある!」
菓子狼「ゥワォォォォォォンンンン!!!!!!!」
ブヒ男「ブヒッ!?」
レッド「これは、オオカミ」
ブヒ男「ブヒヒヒ」

 豚は笑みを浮かべた。

レッド「あの逃げ出した三匹の犬共め、やっと見つけたわ」
菓子狼「ワォォォォォォォンンン!!」
ブヒ男「俺を豚に貶めたオオカミめ、今こそ復讐の時ぃぃぃぃぃ!!!」
レッド「だぁぁまらっしゃい!」
ブヒ男「ブヒぃぃぃぃぃ!!」

【5】闇鍋
 三匹の狼男たちの前にレディ・レッドが現れた。

レッド「オオカミはどこ? 探しなさい豚」
ブヒ男「居やがらねぇ」
レッド「その! 鼻は! なんの! ために! 付いているのよ!」
ブヒ男「人間ですブヒぃぃ」
伊一狼「こんな森でどうされましたお嬢さん」

 木の裏からひょっこりと出てきた伊一狼。

レッド「ここにオオカミはいなかったかしら」
伊一狼「オオカミ……いえ、見ていませんね。私はカブトムシを捕まえておりましたので」
レッド「そう、もうちょっと先の方かしら。豚」
ブヒ男「ブヒブヒブヒブヒ」

 何事もなく去っていくレディ・レッド。すぐに場を離れ、二人の元へ行く伊一狼。

伊一狼「継狼、菓子狼。捲いた、馬鹿だあの女、急いで魔女姉さんとこ戻るぞ」
継狼「材料は揃ったの?」
伊一狼「十分だろ、きっと」

 伊一狼は、継狼に菓子狼の頭を押さえつけたまま一目散に森を飛び出した。一方、レディ・レッドは、何かに気づき。

レッド「……あの男、豚を見て何も……まさか」
ブヒ男「あいつが、オオカミ!?」

 レディ・レッドはさっきの場所へ戻り。

レッド「この! 豚がぁ! なぜ早く気付かなかったんだい!!」
ブヒ男「ブヒぃぃぃぃぃ!!」

 森に豚の声が響き渡った。

おわり

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