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オンライン・イベントでの参加者の関与をどのように高めるか?

コロナの影響で4-5月はオンラインでのイベントが多く開催されました。弊ゼミでも先だってもオカムラの共創空間beeさまとの共催でオンライン・ワークショップを開催させていただきました。

このようにワークショップも含めたイベントをオンラインでどのように設計するか、参加するのかはこれからも議論と実践が続いていく領域になるでしょう。携帯電話が登場したことで「固定電話」という言葉が生まれたように、オンライン・イベントが多くなっていく中で今後は「オフライン・イベント」という言葉も生まれていくと思います。

オカムラのwork millではリアルとリモートのイベントを比較した記事が出ています。こちらの記事にインスパイアされてオンライン/オフライン・イベントについて考えてみました。

メディア論の古典的なところではM. マクルーハンの「Hotなメディア」と「Coolなメディア」という考え方があります。非常にざっくりな言い方になりますが、「Hotなメディア」というのは高精細な情報、環境でそれゆえ参加者の関与が低くなります。一方「Coolなメディア」はその逆で低精細な情報、環境ゆえ参加者の関与が高くなります。マクルーハンがこうした考えを出した1960年代では映画が「Hotなメディア」で、登場したばかりの(白黒)テレビが「Coolなメディア」という位置づけでした。その後、テレビは「Hotなメディア」に、新たにインターネットが「Coolなメディア」になったと言えるでしょう。

今回、やや強引にこの枠組みを使うと、オフラインでのイベントは「Hot」で、オンラインのイベントは「Cool」と言えるのではないでしょうか。

これまでオフライン・イベント、特にワークショップでは「高精細」につくり込まれ、その空間に物理的にいることで参加者が参加しないということは考えられませんでした。ただ逆に言えば、その場にいることだけで何となく参加している気になって、終わって会場を出た途端、また「日常」に戻る。そういった意味では良くも悪くも非日常を受身的に?経験できる「劇場的」なものであったとも言えます。

一方、オンライン・イベントでは自宅などから接続すると何となく日常の延長で、途中少し抜けますとか出入りも自由です。wi-fiの調子が悪くなったり、音声の乱れとか画面共有がうまく行かないとか。またイヤフォンで何かをしながら、他の画面もみながら、といった「ながら参加」も可能になります。

こうした「低精細」なオンライン・イベントですが、今後は2つの方向性があると思います。ひとつはアプリやサービスによって「高精細」化する方向です。5GやAR/VRはそれを後押しするでしょう。もうひとつは「低精細」ゆえの利点を活かす、あるいはそれを組み込んだ設計をするというものです。イベントの設計者、ファシリテーターとしてはまずこちらを展開させていくことになるでしょう。

オンライン・イベントはオフラインのそれと比べるといろいろと「低精細」な部分が多くありますが逆に言えばそれゆえの参加者の関与の余地が多くあるということでもあります。これからのオンライン・イベントを設計するときにはこうした「低精細」ゆえの参加者の関与の余地をどのように組み込むか、がポイントになるのではないでしょうか。

1960年代に登場したテレビを分析したM. マクルーハンの視点が2020年代のオンライン・イベントの設計にヒントを与えてくれると思います。

そしてこれはオンライン・イベントだけではなく、対面とテレワークが入り交じる今後のワークスタイル、ワークプレイス、また学校教育にもつながる視点でもあります。

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