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課題を「解消」以外の述語から考えてみる

4月がスタートし、授業も本格的に始まりました。2022年度もゼミを含めて複数のPBLを担当しています。また関西大学では「プロジェクト学習」という科目で、鳥取をフィールドに地域で働く・生きることをテーマにした集中講義(フィールドワーク)に取り組みます。

こうしたPBLでは課題解決型授業とも言われます。それはProject Based LearningというよりもProblem Based Learningの意味合いが強いものです。

これまでのPBL経験でさまざまな提案を見てきました。そのなかで気になったのは課題に向き合う、課題を解決しようと言ったときにどうしても課題を「解消する」提案を考えがちだというところです。課題解決型の授業なので、課題がなくなる提案はもちろん喜ばしいことですが、本当にそんなことができるのか?という提案も少なくありません。

付け加えると、地域で「課題」とされていることは魅力とコインの裏表の関係にあることが多くあります。人口減を課題だと考えている地域に人口が増えて賑わいが出る(課題が解決する)と同時に、ゆっくりと静かに過ごすのが難しくなる、というように両立することが難しいものもあります。このようにある一点では解決している(ように見える)けどより広いネットワーク構造から見ると他の部分に負荷がかかったり、そちらに問題が出たりすることもあります。気候や生態系など環境問題はその典型例かもしれません。

そこで考えてみてほしいのは、「解消する=存在を完全になくす」以外の述語です。例えば、課題を

  • 止める

  • 減らす

  • 小さくする

  • 受け入れる

  • 緩める

  • 下げる

  • ずらす

  • 捉え直す

といった述語で考えてみる。そしてその裏側にある(はずの)魅力を再発見したり、可視化することも考えてほしいと思います。

これまで問題や課題はなくなるべきもの、という印象が強すぎたのではないでしょうか。問題があり、正解があり、正解を導くことで問題がなくなることが「良し」とされてきました。しかし、その思考法やアプローチに限界も見えてきています。

例えば、島根県海士町の「ないものはない」というブランディングを展開しています。これも課題をなくすのではなく、課題とどう付き合うかのよい事例だと思います。

今後はなくすべき課題をどうなくすかだけではなく、課題との付き合い方をうまく提案する、実践することもポイントではないでしょうか。

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