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続・神様の国:カスタマーハラスメント問題と東京都知事

今回は2024年1月に書いたネタの続編として書く。

2024年春に東京都やJRグループがカスタマーハラスメントに対して厳しい姿勢を打ち出し、その流れの中で、コンビニチェーン店では店員の名札を本名以外の表記にすることが認められたり、鉄道バス社局やタクシーでも従業員名の表示を取りやめるところが出ている。

これは、従業員が客(というよりも、嫌がらせや他人への攻撃が半ば趣味や娯楽化している人間)からの攻撃に対して最低限可能な処置である。
あとは、事業主がどこまで従業員を守るか、に尽きる。

※ちなみに、今回の文は、先日お気に入り番組『Top of the morning(トポモ、Love FMの朝ワイド番組)』で推しのDJの方がピックアップしてきた上記共同新聞発記事について、感じたままに番組にメッセージを送らせてもらったのをきっかけに書いてみることにした。


1:カスタマーハラスメント条例


いわゆるコミュ障的な性格がある自分は、何の因果か接客業務が多い業種(小売店、スポーツ施設アルバイト、タクシー運転手)で労働者として働いてきた。
父が私立学校の教員だった影響だろうか。

2000年頃には既に『お客様は神様』教(と言っても過言ではない)が蔓延していて、ワイドショーは価格競争・お客様満足度向上を煽り、時には従業員を叱責する客を半ば好意的に取り上げることもあったのを記憶している。
渋滞真っ只中のバスでは運転士に嫌がらせをする客がいたのも見た。
今の自分だったら強制的につまみ出し締め上げていたかもしれない。

自分の職業柄嫌な客に月に一度程度巡り会ってしまうことがあり、ともすれば『底辺職』扱いされがちなタクシー運転手を蔑視するような客もいる。
自分の乗務中に乗客や一般ドライバーなどから嫌がらせや暴言があった場合、適宜運行を取りやめて下車させたり、警察へ通報しそのまま引き渡すこともある。

ここ数年、コンビニ店やスーパー、バス、鉄道、タクシーなど、対人業務がメインの職場で利用者や道路関係であれば一般ドライバーが、
・従業員・職業ドライバーに居丈高に(まるで生殺与奪の権利を持つ君主のように)振る舞う
・嫌がらせを行う
・暴言、暴力行為に及ぶ
様子がXやニュースを賑わせ、バズるようになっている。
それは、SNSが普及するまで注目されることが極めて少ない事例が多くの人の目に晒されるようになり、現場労働者への同情が以前よりも集まるようになったことと、企業や客の論理が優先され従業員の保護が軽視されてきた時代の反動といえるだろう。
そして、行政や政治が世論の後押しを受けて動いたということである。

反カスタマーハラスメントの流れを決定づけたのは、間違いなく小池百合子・東京都知事だと思っている。

2:課題先進地・東京都

カスタマーハラスメント条例に向けて2024年春に動いた東京都は、世界有数の巨大都市であり、今なお人口を増やし、日本、いや、世界から注目され続けている都市である。
・東京都固有の問題
・東京23区及び周辺都市などの大都市固有の問題
・関東地方、九州地方など地域ブロック単位の問題
・全国共通の問題
…がそれぞれあり、皆さんのお住まいの地域によって起きている問題があるはず。

カスタマーハラスメント問題は、全国共通の問題としての
・サービス産業中心の時代の『感情労働』に関する問題
・反社会的行為に対する社会の許容度の問題、行政・政治のあり方
の問題があるのではないか。

行政・政治の問題は一般の人々や企業(私人)と行政・政治の関係で語られがちだが、私人間の問題について『民事不介入』だけで解決できない場合どうするか、という視点が忘れられがちではなかろうか。
件の条例は、今のところは罰則規定は設けない方向で制定されるようだが、例えば消費者保護問題のような基本的には私人間の問題について行政・政治が無関心を決め込む弊害について真剣に考える人々が増えていることの象徴だと思う。

(参考ポスト)

3:革新都政の夢

さて、小池百合子氏。
私見だが小池氏については
『勘が鋭い』
『メディア対策が巧み』
『行政組織を下手に弄ったり壊したりしようとしない』
人物だと見ている。
人格面の問題やイデオロギー面の問題について批判する方もいらっしゃるし、批判に同意する部分も多々ある。(例:1923年関東地震時のコリアン殺害事件についての公式見解の問題)

だが、SNS主流の時代にいかに人々の耳目を集めて世論を喚起しものごとを動かすか、という点ではメディア業界に身を置いていた小池氏の巧みさも、『現職の強み』の特徴として巨大都市とベッドタウン・山間部・離島で構成される東京都の顔であり続けてきた要素だ、と思わずにはいられない。

文字通りの『普通の日本人』の写し鏡である保守勢力やノンポリな人たちに支えられてきた現職に対して、いわゆるリベラル(旧社会党・立憲民主党支持者が多い)や左翼(共産党)層は、小池氏を攻めあぐねてきたように見える。

イデオロギー問題は別として、詰まるところ『アンチ小池百合子』という視点以上のものを人々に示すことができていたのか、疑わしく思うこともある。

現職が時代の変化を捉えて、問題点が多々あるとしても変化に対応し、人々にアピールしている一方で、挑戦者側が人々の権力観の変化を捉えきれず、『革新都政の夢よもう一度』という過去の栄光にすがってしまうならば、三たび惜敗は必至か。
情報や意見の交換・組織化の手段がアナログ時代からデジタル時代に移行しても、関わる人々の思考がかつての『革新都政・革新自治体』の時代に囚われていはしないか。
外野から見ていささか心もとなく見えるのである。



選挙が近づき、候補者選びや選挙活動や支持者獲得の場面で党派間対立がまた繰り返されるのだろうか。

4:排除の時代

(追記 2024/06/08)
政治マニアにとって、小池百合子氏といえば2017衆院選前の『希望の党』結党・立候補者調整過程の「排除」発言のインパクトが強いだろう。


インパクト重視の『劇場型政治』の一例だが、カスタマーハラスメント問題は『排除の論理』がいよいよ社会の中で現実の形になって現れることになったのではないか、とふと思った。

SNSが普及し、皆さんが使いこなしていく過程で、思想信条や使い方が自分の肌感覚に合わないユーザーや反社会的なユーザーなどをスパム報告したりブロックしたりすることもままあるだろう。
対人業務がメインの業種はこれまで反社会的な行為・人物でさえ『お客様は神様』として事なかれ主義でやり過ごしてきた。
それが限界になり、はっきりと反社会的な行為・人物を排除する局面に入ってきた、とみるべきだろう。

個人としては業務を妨げる行為・人物は排除したいところである。
だが、それが社会全体にとってプラスだとはいえない。

官公庁や公共の交通機関やその他公的施設・機関は性質上『排除の論理』を行使するわけにはいかないが、今後SNSのブロック機能の感覚で『排除』がまかり通るならば、その影響で救済が必要な人たちが黙殺されるリスクが増大していくのではないか。
そのように考える必要がありそうだ。

今後の推移を見て、追記したいことがあれば改めて書きたい。

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