松原史明
ロボット・コンテストとデジタル化
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ロボット・コンテストとデジタル化

松原史明

ロボット・コンテストと言えば、ロボットが戦ったり、走ったりするものだとばかり思っていた。ところが2020年には、実機なしのシミュレーションのみでロボット・コンテストが戦われたという [1]。確かに、戦ったり、走ったりは人間の振る舞いであり、ロボットが人間同様、戦い、走ることを競う必然性はない。ロボットはロボットなりに振る舞いがデジタルにプログラムされるのであるから、そのプログラムのありさまや、プログラムされた結果の振る舞いを競うのが自然である。勿論、振る舞いの一つとして、質量のある物体が力学的に動作することを評価するのも大切だが、それを言うならば力学的に制御が難しい環境 (台が振動しているとか障害物が動いているとか) で物体が複雑な動きを実現できるか、を競った方が本質を衝いている気がする。

ロボット・コンテストに限らず、世間にはアナログな人間の習慣をなぞっただけのデジタル化が多い。古くは、鉄道の駅の改札を人から機械に置き換えただけの切符の自動改札や、紙の契約書に人がサインしてPDFにスキャンして取り交わす電磁的な文書というものもある。いずれも紙に書かれた文字を読む、というアナログな人間の動作の一部をデジタルに置き換えただけであり、乗客から運賃を徴収する、当事者間でオーソライズされた合意事項を正しく記録する、という目的をデジタルに実現するのであれば、もっとよい方法はある。そしてこれらがSUICAや電子署名に取って代わられつつあるのはご存知の通りである。昨今も、新型コロナウィルスの影響で様々な紙の書類が電子化されているが、電子化された書類の上にわざわざ日付と名前の入った印を電子的に描いたり、注文書の電子データをメールで送っているのを見ると、自分たちの想像力の乏しさと、想像を実現するツールに関する知識の乏しさに愕然とする [2]。エクセルのデータを人間が時間と工数をかけてグラフや表にした挙句、コピペや集計方法のミスで数が間違うのも何とかならないものだろうか。1980年代に電卓を叩いて数値を計算し、定規と鉛筆でグラフや表を書いていた頃と振る舞いは何も変わっていないから、1980年代と同じような間違いが出る。見る人に分かりやすくデータを提示したり、目標と実績の差をトラックする目的をデジタルに実現するには、もっと正確で迅速な方法がある筈だ。例えばBIツールの活用のように。

日本語のデジタル化は、英語ではdigitization, digitalization, digital transformationの3つに分かれる、と聞く。digitizationは情報のデジタル化 (例:紙の切符の情報を改札機が電子的に書き込み・読み込みできるようにした) 、digitalizationは業界や組織のデジタル化 (例:自動改札機が紙の切符のみならずSuicaに対応し紙の切符が減った)、digital transformationとは社会のデジタル化 (例:電子マネーの普及で人々がお金を持ち歩かなくなった) を言うらしい。自分のデジタル化が単なるdigitizationとなっていないか、どうしたらdigitalizationやdigital transformationに持っていけるのか、よく考えてみたい。

[1] ETロボコン2020   https://www.etrobo.jp/2020archive/#result

[2] 電子化された注文書をメールで送るのは、法的にそうせざるを得ない面もある。民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律 (e-文書法) によれば、「民間事業者は、交付等のうち当該交付等に関する他の法令の規定により書面により行わなければならないとされているもの・・・については、当該他の法令の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、当該交付等の相手の承諾を得て、書面の交付等に代えて電磁的方法であって主務省令で定めるものにより当該書面に係る電磁的記録に記録されている事項の交付等を行うことができる」とあり、様々な法令で注文書の交付・保存が義務付けられている限りは、注文書の事項を電磁的方法で交付するという制約から逃れられない。

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松原史明
物やサービスを調達する仕事をしています。最近は海外事業のお手伝いも始めました。日本、シンガポール、インド、ドイツ、チェコで勤務経験あり。IE Business School (スペイン) のExecutive MBA修了。趣味はクラシック音楽と料理です。よろしくお願いします。