卒を業する式__180320_0010

外部記憶としてのゼミ(卒業おめでとう)

今日は、学位授与式でした。今年、うちのゼミからは、留学した学部5年生と博士後期課程の3名を送り出しました。博士号をとった3名は、これからも学者として長い付き合いをすることになるでしょうが、学部の卒業生は、それぞれ違う職場で頑張ることになり、いままでのように毎週会うような関係ではなくなります。

今回、卒業した皆は消費者行動論を勉強したので、外部記憶とは何か、知っているはずです。cakesの連載で、外部記憶のことを次のように説明しました。例えば、買い物リストを作るのは、忘れないように記憶を紙の上に残すためですね。リストを見て「ああこれを買うんだった」と思い出すのです。あるいは、売り場の棚を見て「ワサビ買うんだった」と思い出すことがあります。その意味で、棚と買い物リストは同じ役割を果たしています。このように棚とか買い物リストのように、自分のアタマの外側にあり、記憶を喚起するものを外部記憶と呼びます。

これからプライベートでも仕事でも楽しいことがたくさんあるでしょうが、一方で迷ったり辛かったりすることも多く起こるはずです。自分がいったい何をしているのか、何をやりたかったのか、これからどうしたらよいのか、混乱することもあるはずです。その際には、自分の原点を見つめ直す必要も出てくるでしょう。

自分の原点を思い出すための外部記憶が、ゼミであれば、教える立場としてこれほど嬉しいことはありません。ゼミの友達に会ったり、連絡を取り合うことで、若い頃に目指していた何かを思い出して、それに照らして今の自分が為していることを棚卸し、これから進むべき方向性の見通しがよくなる、そんなことが起これば良いと思います。

今年もノンアルコールのスパークリングワインで乾杯しました。今後、スパークリングワインを飲むときに、ゼミのことを思い出すはずです。ゼミという外部記憶を思い出すための外部記憶としてのスパークリングワイン。ぜひこれからも今日のようにフルートグラスで乾杯して下さい。これからの人生でたくさんの乾杯がありますように。卒業おめでとう。

 

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