「イネーズ」移りゆく風 その1
次の世代へ繋げるために「世代交代」をしなければならない。
「むし」や「いきもの」がそうするように、「おれくん」も「わたしちゃん」たちも同じように「次へ」繋げようとしていた。
「ひと」はそれを「実り」と呼んだ。
あるいは「成果」とも呼ばれるし、ある人は「収穫量」とも呼ぶ。
「おれくん」も「わたしちゃん」も「実り」をつけようと頭の方へ食べ物を送って成長を促していた。
「おれくん」たちはその「実り」に対して送る栄養を送れる部分が図太く、また、根っこも「広く深く」刺さっているので十分に食べ物を吸収することができた。
なにぶんこの場所のおかげか体は太くなり「付けようとする実り」に対して「余裕がある」風体をしていた。
一方、「わたしちゃん」たちの方は栄養を送れる部分も、根も細めで浅かったが、その場所に来る「ひと」が様々なものを「与えて」その実りを助けていた。
気がつくと、「実らせること自体」は「おれくん」も「わたしちゃん」もかわらなかったが、やっぱり「図太い」「おれくん」たちのほうが「実り」の大きさも量も大きかった。
とはいうものの、「わたしちゃん」たちの実らせようとしていることは全く負けているわけではない。細い体に沢山実らせたそれは見事なものだった。
俺は向こうの様子を見ながら少し気になったことを聞いた。
「すごいね!そんなに付けようとして頭おもくない?」
「わたしちゃん」は答えた。
「まあ、少し重たいかもしれないけど実りは多いほどいいからね、より多く次に繋げられるから」
やや「わたしちゃん」たちは無理をしているように思えた。
細い体に大きい頭。どことなーくバランスが悪く、フラフラしているような印象を受けた。
風に揺られるその姿はどことなく美しくもはりどことなく儚い感じもしていた。
時期は7月になろうとしていた。これから夏真っ盛りになろうとしているのと同時に、風の具合が少しづつ変わってきた。
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