「イネーズ」移りゆく風 その3
昨晩、台風が通過した。
とても強い風ととても強い雨が降った。
「おれくん」たちはその雨風に対して、太い体と深く刺さった足。そしてなにより、「自分の体格に見合ったみのり」のおかげで特に被害は無かった。
一方、「わたしちゃん」たちは無事なやつもいるけど、そうじゃないやつも居た。風に吹かれて、「自分の体格に見合ってないみのり」に体を揺さぶられて倒れてしまったヤツもいる。
幸い、倒れたからといって駄目になったわけではなさそうで次の晴れた日に
「わたしちゃん」たちの所に「ひと」が来ていた。
しかし、いつもの「ひと」に加えて多くの「ひと」が来ていた。
その様子を遠巻き絡みていると、どうやら倒れてしまった「わたしちゃん」たちを隣同士まとめて縄でしばっていた。
これで倒れてしまっている「わたしちゃん」も「自立」できるようにしていた。
おれはその作業を見ていたが、その日が終わると「わたしちゃん」たちは全員元通り。。。とはいかないがしっかり立っていた。
するとその夜、向こうから声を掛けてきた。
「おれくんたちは大丈夫だったみたいだね」
「わたしちゃん」は少しつかれているようだった。
「まあたしかに無事だけど、雨風が強かったからこっちもやっぱり疲れたよ」
疲れたのは確かだけれど、「わたしちゃん」たちほど「だめーじ」は受けていないのでそれを治すのにもエネルギーをそんなに消費しなかった。
時期はそろそろ8月。暑い日が訪れるのと同時に俺たちの物語も終わりを迎えようとしていた。
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