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理科を好きになったきっかけは、小3の虫眼鏡の実験だった。

小学校3年生になると、2年生まで「生活」という科目だったものが、「理科」と「社会」に分裂する。2020年の今はどうかわからないが、僕のときはそうだった。「リカ」と「シャカイ」…。なんだか急にムズカシイものに思えてきて、ドキドキしながら進級したことを憶えている。この4月に咲いていた家の近くの川沿いの桜が全部クローンだと知るのは、もっともっと後のことだ。

時間を少し進めて中学生。僕は理科がとても好きだった。クラスの係も「理科係」というものをやっていた。次の理科の授業に関する連絡事項を担当の先生から聞く係だ。「何だその係」と思うかもしれないが、当時の僕は理科に関われるならと嬉々としてこの係をやっていた。

定期テストでは、理科で4回連続100点をとったり、高校入試でも理科は満点だった。それくらい、理科に打ち込んでいたのだ。好きこそもののなんとやたというやつだ。

いったい、何が僕をそこまで理科へ駆り立てたのだろうか?

きっかけは小学校3年生のときの「虫眼鏡の実験」だったように思う。

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小学校3年、ある日の理科の時間。先生が「今から屋上に行きまーす!」と言った。誰も学校の屋上なんて行ったこともないものだから、自然とクラスの空気が色めきだったような気がした。もちろん僕もそのひとり。

みんなで屋上に着くと、先生はみんなに虫眼鏡と黒い紙を配布した。この時点で多くの人が何の実験か分かると思う。そう、凸レンズで太陽光を集光して紙を燃やす実験だ。かみくだいて言うと、「虫眼鏡を黒い紙の上にかざし、太陽の光を集めて点にすると紙が燃える」というもの。

しかし、雨こそ降っていなかったものの、天気はやや曇り気味。雲量でいうと7~8くらいだったように思う。カンカン照りの日にこの実験をすればすぐに紙を燃やせたはずだが、なかなか成功者が出てこない。

文字通り雲行きの怪しいムードでしばらく時間が過ぎたとき、クラスで最初の成功者が出た。

それが僕だった。

ただそれだけだった。みんなよりちょっと早く紙を燃やせただけ。なのに、それから先、僕は理科に没頭することになるんだ。

いろんな要因が重なったんだと思う。「どうやったら燃やせるんだろう?」と屋上の位置取りや虫眼鏡の角度など、自分なりに工夫をしながらやったのが報われたこと。たまたまクラスで一番早く実験に成功した優越感。太陽の光の持つ強大なエネルギーの一端を見た、という感覚。これらの要因が重なって、科学に魅入られることになった。

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高校に進学してからは、理科は好きだったものの、自分には単純に難しく、そして大学受験という仰々しいものに立ち向かわなければならないという気負いからか、理科好きは鳴りを潜めている。今も、当時ほどの熱は感じなくなったが、身の回りにあるちょっとした科学に目を向けて楽しむ程度だ。

それでも、科学を身近に感じられるようになってよかったと思うし、楽しい。僕の思い出の中の、なにかにハマるという体験のひとつだ。こういう記憶を思い出すとき、ちっちゃい宝箱を開けるような気分になる。中にキラキラした壊れやすいガラス細工が入っているような。

あなたにもそんな思い出がありませんか?

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