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■要約≪失敗の本質≫

今回は食わず嫌いしてきた、有名な著作「失敗の本質」を要約してみようと思います。安倍首相やサントリー社長の新浪さん・小池東京都知事等のバイブルのようですね。日本軍が太平洋戦争で敗北した要因を分析し、破綻する組織の特徴をまとめた学術書です。1991年に著されたやや古い著作で難解でした。

「失敗の本質」

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■ジャンル:マネジメント・組織論

■読破難易度:中

論文調であり、事例も非常に専門用語が多く抽象的なので文意の全体把握は出来ても詳細把握にはかなり骨が折れる印象でした。

■対象者:・会社組織の経営に何らかの形で関与する方

     ・組織の制度設計などの業務に従事する方

     ・日本の組織体質に対して興味関心のある方

【要約】

この本は三部構成となっています。第三部がメインであり、第三部の主張をする為の具体例としての第一部の「日本軍の第二次世界大戦における敗因分析※6つの戦いを具体例にしています」・第二部の「日本軍の敗因の組織論的考察」・第三部の「日本軍の組織構造から学べる、日本企業・日本の組織が陥りがちな戒め・どのように組織を構築すべきか」という提言の構成です。第一部を読み解くのがとにかく大変であり、再読する際には第三部以降だけで十分かなという印象です。

※高校時代に日本史選択の僕でしたが、具体論はそこまで記憶なかったので理解に時間をかけてしまいました。

第二部・第三部を簡単に抜粋する形で要約してみます。

≪日本軍の敗北要因≫

■あいまいな戦略目的

・帰納法的な行動指針しか持ち合わせておらず、指示も不明瞭である為解釈し実行する現場が混乱・現場の統率が取れていないことが多く発生しました。

■短期決戦の戦略志向

・ゲリラ的な戦い方での勝利・経験則しか持ち合わせていない日本軍は元々、長期戦に弱かったのですが新しく学んだり方針を変えることを怠りました。

■主観的で「帰納論」的な意思決定

・精神主義・人情論を重視して意思決定をしているが為に一貫性がなくガタガタ

■狭くて進化のない戦略オプション

・局所戦を好み、謎の楽観主義が蔓延しており打ち手の幅が狭かった様子

■人的ネットワーク偏重の組織構造

・ここはアメリカとの対比が顕著です。官僚制でありながら下克上や感情論が横行するのを許してしまう日本の一貫性のなさに比べて、アメリカではジョブローテーションをさせながら選抜することで緊張感とハイパフォーマーを要請することを怠らずその結果として組織の成果が最大化する仕組みを作れた。

■属人的な組織の統合

・陸軍・海軍・空軍が仮想敵国や目標・目的がバラバラという悲惨さ

■学習を軽視した組織

・過去の失敗から適切に振り返り学ぶことを出来ない組織文化・基盤が出来ていた(トップが過去の成功体験に胡坐をかいており、今の時代に合わない論理・方針が横行していてそれを指摘する人もいなかった、気づきようがなかったということの様子。)

■プロセスや動機を重視した評価

・経験の未熟な末端組織を評価するならいざ知らず、トップ含めて勢いや発言の勢いなどを人事評価の是非に入れていたという構造。

上記の教訓から導き出される、自己革新能力のある組織について

■不均衡の創造

・組織が適切な機能を果たし続ける為に外からの「適度な緊張・圧力・組織内の軋轢」を生むことが活性化につながるといいます。日本軍は一枚岩であったものの、裏を返すとあまりにも平和過ぎたようです。(環境変化にさらされないし年功序列過ぎて変化対応をしたり何かを打ち出すインセンティブが働かないのですね。)

■創造的破壊による突出

・日本軍はそもそも組織に資源的にも精神的にも余裕がなく、新しいものを生み出すことに制約がある環境でした。そして、統率の取れた文化であり、これまでのことを否定し革新をするような人材をうまく活用できなかったり機会を生み出せていないことも組織全体のパフォーマンスを下げた様子です。

※優秀な人材の適切な活用・登用・組織全体の刺激・活性化もなされなかったみたいです。

■異端・偶然との共存

・異端・異質を嫌った日本軍であったが一部のブレーンや異質な成果を出せる組織・人材は存在したようです。しかしそれを活用せず閉鎖的に閉じ込めてしまい有効活用できなかったことが日本軍の特徴であり、その結果偶然などを捉えたイノベーションが起こりにくい組織構造になってしまったと。

■知識の淘汰と蓄積

・過去の経験から客観的に振り返り、次に活かすというフィードバックがなされていませんでした。その為に再現性のある知識や構造のアップデートがなく、謎の昔の今の時代に合わない論理・方針が横行し、年功序列の人や情を重んじる風土も相まって悲惨な現象が発生。

※本来、トップがこうした現象に気づき是正しなくてはいけないものですが、そんなこともなくどんどん組織が腐っていきました。

■総合的価値の共有

・何を目指すのか?という大目的の共有・浸透が薄かったようです。海軍・陸軍での仮想敵国が異なることからも分かるように、組織としての学習サイクルや市場変化からの対応が出来ない脆い組織を招きました。

■軍隊の組織論理・勝ちパターンを踏襲した日本企業の発展

・「論理・演繹法」による方針作成が得意なアメリカに比べて「帰納法的にプラスアルファを改善すること」が得意な日本企業、その意味で製品ライフサイクルが成長期以降の分野において圧倒的に成果を出し成長したことが適性からも分かることです。家電や半導体・自動車など。

※いずれも日本がパイオニアではなく、ある市場や産業法則ができたものに対して、レバレッジを最大化するための仕組みが優れていました。そしてその過程においてはプロセスを重視する年功序列型組織は非常にうまく機能したものであったという指摘があります。

【所感】

・今となっては当たり前に言われるようになった、典型的な市場変化についていけない脆弱な組織の特徴を如実に表した内容です。この内容を踏襲して日本企業の経営に転用できるか?が読者全体に試されているというような印象を感じました。

・最後に著者が述べている、「日本軍の良い部分を踏襲して製品ライフサイクルの成長期の産業において、日本企業は大きな成果を出した、その後の衰退も予測は出来る」という警笛は考え深いなと感じました。

・いずれにせよ、本全体の内容から市場からの評価・フィードバックにさらされることを失っては適切に学習・過去の経験の棄却が出来なくなり、組織として崩壊するということに感じました。

・末端組織の混乱の事例や結果よりもプロセス重視の事例などは自分の戒めにもなりそうだなと思った次第です。どんな環境・制約条件であろうとも職務を遂行して結果を出し続けることでしか、自分の役割・期待を果たすことは出来ないよなと再認識しました。

以上です!


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