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ニーズ高まる生鮮食品のネット販売 スーパーマーケット業界が突きつけられたオムニ化の壁とは?

おはようございます。ドドルあおけんです。

このnoteでは、月〜金日替りテーマでIT系のビジネストレンドなどをできるだけ噛み砕いてご紹介しています。

EC・ロジスティクスの水曜日。今日は、UKの上司が教えてくれた記事から、生鮮食品販売をどうやったら赤字にならずにオンラインで成功させられるか、ということを考えてみる回となっています。

かなり狹い領域の話ですが、コロナがしばらく脅威であり続ける中、毎日食べるものをより安全に手に入れるためにECを活用する流れが欧米では定着しはじめていて、日本もその流れは遅かれ早かれやってくると思いますので、結構多くの人に関係のあるお話かなとも思います。

元の記事はこちらです。

一応この記事をアップしている会社についてWikiの解説を貼っておきます。

ベイン・アンド・カンパニー(Bain & Company)は、アメリカ合衆国・ボストンを本拠とするコンサルティング会社である。1973年にビル・ベイン他4名のコンサルタントによって設立され、2012年6月現在、世界31ヵ国の48拠点に事業所を展開し、約5,400名の社員を雇用している。東京オフィスは1981年(昭和56年)に開設された。

グローバルなコンサルティングファームですね。それでは記事の内容をかいつまんでご紹介していきます。

コロナロックダウンで急増するネット販売と小売店の課題

ネット通販が伸びていく中でも、スーパーに行って生鮮食品を買うという消費行動はこれまで長く続いてきました。生鮮をネット通販でっていうのは中々ないですよね。

しかし、今回のコロナ危機・ロックダウンによって多くの消費者が生鮮食品もオンラインで購入するという新しい消費行動を行うようになりました。5年単位で起こる変化が数ヶ月で起きたと言えます。

この変化に対して、スーパーマーケット業界は大きな課題に直面しています。今、オンライン販売とオフライン販売を最適化する、というオムニ化の流れは中長期では予想されていた変化ですが、あまりに急に顧客の購買行動が変化したため、小売店が対応できていないという状況が生まれています。

オンラインで生鮮食品を販売するとなると、注文されたものを自宅に直接届けるか、注文されたものをお客さんの都合がよいお店で取り置きして店頭で渡す(クリック&コレクト)のいずれかで提供する必要がありますが、どちらの場合についても、それなりのコストアップが発生するために採算が合わず、ほとんどの場合事業としてみた時に赤字になるという結構本質的な課題に直面することになります。

構造的な改革を行わないと危険

ベイン&カンパニーの見立てでは、きちんとした構造的な改革なしにオンラインの需要を取り込んで売上を伸ばしに行くとその成長度合いによって50〜80ポイント利益率が低下するとしています。

さらに悪化した収益率を改善するためにオンライン対応にかかるコストをユーザ価格に乗っけたりするとさらに暴利だと思われ(誤解され)、顧客離れがおこる可能性もあるということでなかなか難しい舵取りが必要になってきます。

このように、オンライン対応は収益率を下げるリスクが高いですが、短期の利益率悪化を嫌って何もしないでいると、長期的にはデジタル対応できず競争力を落とすことになるので、何もしない、というのも選択肢としてはよくありません。

コロナが与えた生鮮食品のオンライン販売への影響

コロナの前後でアメリカでは、オンラインで一度でも生鮮食品を買ったことのある人の割合(ペネトレーション率)が5.1%→6.6%へ上昇。イギリスは8.1%→12.4%へ、フランスは6%→10.2%へ、ドイツも1.5→2.9%に上昇しています。まだ%としては少ないですが、対人口と考えるとものすごい数の人が新しくオンラインで生鮮食品を買ったことになります。

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ただ、そもそも買おうという人が急増しすぎて買いたくても買えなかった人もたくさんいるので、これらの数字はそういったことも考慮して見たほうがいいです。

実際にベイン&カンパニーが5月に西欧諸国の7500人に行った調査によるとオンラインで生鮮食品を買いたいという人は全体の5分の1、20%にのぼっています。

ベインの試算では、2019年と比較して米独仏英伊において2020年には3.5億回以上オンラインでの生鮮食品販売が増えると試算、金額ベースでは前年比で360億ドル(およそ4兆円)増えると予測しています。このペースは元々コロナがない時に試算していた数字を2年から5年前程度倒し(国ごとに違う)するもので、それくらい強烈なオンラインへシフトしたということです。

移行が最も緩やかとされるアメリカを例にとると、コロナ前に予想していた水準から2023年前でに1.4倍の水準に、2025年には最大で1.5倍の水準に達するという予測をたてています。

下のチャートで見ると左側の線グラフでは一番下にコロナ前の予測、その上にコロナの影響が特効薬の早期普及など比較的軽かった場合、赤い線がよりオンライン化がより速く進んだ場合、そして紫が第二波が襲ってきてよりオンラインのシフトが進む場合というケースわけになっています。

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小売業がよく考えないでオンライン対策をすると・・・

お店で商品を売る感覚でそのままそのやり方をオンラインにコピーしただけだと、現在の店舗運営のコストをそのまま引きずったまま、その上に新たにオンライン対策に初期費用と運用費用がかかってきます。

スーパーマーケットの実店頭販売モデルの場合、売上に対する営業利益率は2〜4%が標準的です。この利益モデルで店舗運営コストをかけながら、オンライン受注のために別でお金をかけて、ピッキングをし、家に配送したり、店舗受け取り(クリック&コレクト)を行うことは、スーパーの収益率を大きく低下させます。

その収益性を改善させる可能性があるとすると、その手間に見合うだけのサービスフィーをユーザから徴収するか、オンライン取引の際に発生する広告スペースや顧客動向などのデータを売ることなどが考えられます。

以下のグラフではスーパーの販売モデルの違いによる収益率の違いを比較しています。これはかなり大事なチャートです。

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一個一個のモデルを説明すると長くなりそうなので、ざっくりと。それぞれのモデルはかかる追加コストをお客さんに要求しない前提です。

一番左の棒グラフが一般的なお店での販売モデル営業利益率は2〜4%です。

そこから左6つのグラフは、宅配モデルです。一番利益が出ないのが、店頭にある在庫を店員さんが手でピックアップしてその後自宅に配達する、というビジネス。一番利益率がいいのは、店舗併設のオンライン専用の倉庫(マイクロフルフィルメントセンター)でロボットとかが自動でピッキングしてくれたものを配送するモデル。一番いいモデルでも赤字です。

そしてそこから横6つが店舗受け取り(クリック&コレクト)のモデル。お客さんの家までいかないで済むので、その分効率的なため、利益率は宅配よりもよいです。

すべてのオンライン販売モデルの中で最も高い利益率が見込めるのが、クリック&コレクト×マイクロフルフィルメントセンターの組み合わせで、店舗販売と同等の利益率2%を稼げる可能性があります。

マイクロフルフィルメントセンターをめぐる戦い

マイクロフルフィルメントセンターってあまり馴染みのない随分長い名前ですが、このセンターについてまとまっている記事があったので、最後にご紹介しておきます。

マイクロフルフィルメントセンターとは何か?記事の中に次のような記載があります。

既存の実店舗に併設された、デジタル注文専用の、規模の比較的小さい倉庫を指す。現在、業界最大手の数社がこれを試行している。
また、ウォール・ストリート・ジャーナル(the Wall Street Journal)の報道によれば、ウォルマート(Walmart)やアルバートソンズ(Albertson’s)を含む多くの企業が、より効率的なeコマースフルフィルメント構築に向けて投資をしている。
その多くは依然としてパイロット版ではあるが、マイクロフルフィルメントセンターに対するこうした関心の高まりは、オンライングローサリー業界を今後牽引するモデル/テクノロジーを巡る覇権争いがバックヤードで起きつつあることを示している。各ストアが独自のデジタル手法を構築/試行していく今後、戦いの激化および顕著化は必至だろう。

小売の戦いはITを駆使したオムニ化、ロジスティクスのバックヤードをどううまくやりきるかというところに移ってきています。以前、BeamsのEC担当の方がオムニ化で苦労した記事を書きました。その時のその担当の方の言葉を再掲しておきます。気になる方はこちらの記事で。

・自社ECで一番大変だったのは在庫。何がどれくらい売れるかわかない中で在庫を予測するのは大変。ただ、買い付けでなく、自社オリジナルならシーズンイン前の予約会で様子をみて、反応がよいものの在庫を多めに積む。
・細かいUI変更、スマホ対応(2012年)などリニューアルは随時行っているが自社ECのフルモデルチェンジは2016年。東陽町にある物流センターで扱っている直営120店舗用の在庫すべてをECで販売できるようにシステム変更
・この仕組みを実現するため、1年以上もの間、何十回と物流センターに通い、担当者と議論を重ねる。理屈はシンプルだが実現はものすごい大変。
・ECサイト単体での売上ミッションもあるが、本当の命題は、実店舗のストック在庫とEC在庫を共有化させること。自社ECを社内インフラとしてとらえた。

店舗にある在庫をECでも扱えるようにという一見そこまで複雑そうでないことも実際はとても大変ということがわかります。

上の一番右の利益が出るモデルにするには、コストと担当に大変な労力をかけながら在庫の見える化をした上で、店舗併設の小さい物流センターをロボットなどを導入して自動化する、というかなり難易度の高いことをやりきらないといけません。

突然やってきたコロナによって変革を迫られる小売業界に対して、自分(ドドル株式会社)もクリック&コレクト専門店として日本で営業を開始しましたので、どういったカタチでのサポートをすることがこの国のデジタルシフトに貢献できるのか、走りながら考えていきたいと思います。

ということで、本日のお話は以上です。

日報

昨日の備忘録として。

・APAC catch up (10am)
・PR会議w. Eさん(12:30pm)
・HB セミナー(3pm)
・Ph.2 Internal Discussion (4pm)
・PR Internal Discussion w. Kieth (5pm) 
・P案件 Internal Catch up (6pm)

(独り言)なかなか濃い一日。夜はSバーへ、不動産屋のおじ(い)さんと最後韓国料理屋へ。

明日は、DXの木曜日。わかりやすいDXの事例としてOCR+RPAの話をしようと思います。 

マーケティングの月曜日
経営戦略・事業開発の火曜日
EC・ロジスティクスの水曜日
DX(デジタル・トランスフォーメーション)の木曜日
グローバル・未来の金曜日
ライフハック・教養の土曜日
エンタメの日曜日

それでは今日もよい一日を。



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