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オムニ化実例①マルイ 理想のチームプレーを学ぼう

おはようございます。ドドル・カンマネあおけんです。

さて、昨日はメガネスーパー出身の方の著書をもとに実店舗系小売プレイヤーがオムニ化を進める上で起こるあるあるを組織の視点から考えてみました。

そして、今日はこの著書の後半部分、先進的なオムニ化推進企業の推進担当者の皆さんと行っている対談をもとにオムニ化の現場というのを探ってみたいと思います。

第一回目はマルイです。

まずはマルイのホームページやWikiなどのオープンデータからどんな会社かという輪郭を掴みにいってみましょう。

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マルイって金融の会社?

ファッションのショッピングセンターのイメージが強いマルイですが、実際のところはどうなのでしょうか。Wiki・マルイホームページの情報をもとにつまんでみます。

丸井グループという持ち株会社の2019年3月期の実績です。

・売上高 連結:2,514億円
・営業利益 連結:411億円
・純利益 連結:253億円
・従業員数 連結:5,326名 単体:322名(2019年3月31日現在)

服を扱っているところでいうと青山商事が2190億円、ユナイテッドアローズが1610億円規模の売上でそれよりも大きな売上です。

ではマルイグループの儲けどころはどうなっているのでしょうか?
直近の決算概要では小売が77億円に対してフィンテック303億円とフィンテックが小売のほぼ4倍の営業利益を稼いでいることになります。

これはもうファッションのマルイではなく、金融のマルイですね。

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丸井は2007年に持株会社に移行してから、現在は「小売事業」「フィンテック事業」の2事業が柱になり、それぞれの事業の下に子会社が連なるカタチとなっています。

<小売事業>
・株式会社丸井(丸井店舗の運営)
・株式会社エイムクリエイツ(店装・広告・モディ等の商業施設事業)
・株式会社マルイファシリティーズ(ビルメンテナンス事業)
・株式会社ムービング(ファッション物流事業)
・株式会社マルイキットセンター(用度品ピックアップ・商品検品事業)
<フィンテック事業>
・株式会社エポスカード(カード事業)
・株式会社エムアールアイ債権回収(債権回収事業)
・株式会社エポス少額短期保険(少額短期保険事業)
・株式会社エムアンドシーシステム(情報システム事業)
・株式会社マルイホームサービス(不動産賃貸・不動産ポータルサービス事業)
・tsumiki証券株式会社(証券事業)

証券会社まで持っているんですね。本格的です。

僕が若者だった頃、マルイでカードを作りませんか!と強烈プッシュされた記憶がありますが、あの強烈プッシュの積み重ねが今のマルイを支えているようです。

その歴史を振り返ると家具の割賦販売にルーツを持ち、戦後は月賦百貨店として「500円で5,000円のお買い物!」の宣伝文句の下に家具や家電といった耐久消費財の割賦販売をして事業を拡大していったようです。割賦のマルイ

さらに1960年には日本で初めてクレジットカードを発行1981年には「丸井のキャッシング」という名称を使用した「消費者金融事業」も始めたtoC向けの金融ではかなりイノベーティブなことを昔からやっていたんですね。今から40年くらい前です。

色々意外すぎて金融のほうを掘っていきたくなりますが、その気持ちをぐっと抑えて、ここからは今回のテーマであるオムニ化にかかわる小売セグメントの状況を見てみましょう。

中期経営計画で語られる「EC化」の脅威と機会

2017年に策定されたマルイグループの中期経営計画には「EC化」の脅威をチャンスに、という表題で次のように語られています。

「店舗でモノを売る」小売業は、「EC化」による影響をより大きく受けると考えられます。また「シェアリングエコノミーの台頭」も、言い換えると「モノを買わなくなる」ということなので脅威といえます。加えて「少子高齢化」は、消費の担い手である生産年齢人口が減少するということです。 これらの脅威に対する私たちの対応は、「SC・定借化」と「オムニチャネル化」です。「SC・定借化」によって、「EC化」の影響を受けにくい飲食等のカテゴリーを拡大するほか、ECでは代替できないサービスや体験を提供するテナントを拡充。さらに、オムニチャネル型のテナントの導入を進め、ECと共に成長していく戦略を進めています。

マルイのオムニチャネル化は、そのカード事業という柱を含めた、店舗・カード・Webの三位一体型ビジネスを創造するという定義になっていて、このあたりがマルイの個性として面白いところです。

ただ直近の実績ではECが利益ベースで6億円のマイナスになっているようなので外的な環境の問題もあると思いますが、順調に伸ばしているということではなさそうです。

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オムニチャネル改革推進本部本部長のインタビュー

それではマルイという会社の大枠がなんとなくわかったところで、昨日ご紹介した「実店舗+EC戦略、成功の法則」という本の話に移ります。マルイのオムニチャネル改革推進本部、白井本部長(2018年時点)のインタビューから僕が気になったポイントをご紹介したいと思います。

・自社PBの売り場運営の「専門店事業本部」とECを運営する「Web事業本部」を一本化しなさいという経営判断からこれらを「オムニチャネル事業本部」に統合、300名規模
・2000年頃に経営からECに取り組むという方針がでて6~7名からスタート
・最初の5年はひたすら「店舗とECの在庫連動」「カード連動」の開発・仕組みづくりに費やす。これによりECの在庫切れを防ぐことができるようになると同時に実店舗で会計の際にECの利用があるかどうかチェックできるようになる。
・実店舗ではEC利用がないお客さんに「よかったらECサイトでもご利用下さい」とクーポンを渡し、おススメする。実店舗でのEC利用促進クーポンは、年間数百万枚規模で配布。
・マルイは単品管理をするために、出品者に専用タグをつけることを要請している。メーカーからは面倒でコストがかかるとクレームが入るもお客さんのニーズを把握するために単品情報管理をしっかりやるべきという考えからその仕組みでやっている。
・オムニチャネルがこれだけ言われている現在でも、ECと店舗の在庫連動ができている企業のほうが圧倒的に少ない状態
ECのデータ分析から、マルイが力を入れて展開しているPBの靴のリピート率がほかの商品群よりはるかに高いことがわかり、豊富なサイズのバリエーションがその背景にあることがわかるとそれをキーにした施策展開を検討
・具体的にはコスト的に実店舗をオープンするのはパワーがいるので、駅のまわりの人通りが多い広場を何坪か借り、試着用の靴を全サイズ用意し、自由に履けて、足形も測れるような在庫をもたない体験イベントを行ったところ軽いパニックになるくらいの大盛況になった
・これで体験→EC購入の導線を作ることに成功し、売上も、カード入会も増えた。この成功体験から専任チームを作り全国展開を開始。
・チームラボとDMP&レコメンドエンジンを共同開発。このDMPには、もともとあった商品、カード、購買データに加え、ECや店舗サイトの閲覧情報、購入された商品のカラー・サイズといった情報も入れていって、そこからレコメンドする情報を導きだしている。
・最近のデータでは、ECで購入する人の半数は購入するまでにそのレコメンド商品を見ていて、さらにその見た人の半数、全体の25%はレコメンド商品を買っている。こうしたレコメンドを受けたユーザは受けなかったユーザよりも購入点数が2割ほど多くなっている。
・経営層もこういったユーザの動向に強い関心をもっていて、EC事業の開始から今に至るまで、経営陣がこちらを向いていてくれていると感じる、とのこと。

やっぱり実務家のお話というのは具体的で面白いですね。

昨日取り上げたオムニ化の壁を軽々と越えていく話の内容に少し感動すら覚えました。

EC事業の立ち上げの早さ(経営判断)、店頭とECの在庫&カード連動という一番大事なところに注力した創成期、最初のオムニチャネル事業本部ができた時の起点が世の中のEC化による脅威を強烈に感じている「経営からの要請」であること、そして店舗スタッフがECクーポンを積極的に薦める体制(誰が配ったかわかればEC売上でも評価)、ECのデータを活用した体験イベント(D2C的な動き)、レコメンドエンジンの自社開発&成果と色々な取り組みがすべて線としてつながっている印象があります。オムニ化に向けた理想のチームプレーですね。

ECと店舗の在庫連動もできていない企業が多いということで、こういった基本をおろそかにしたい姿勢がやはり大事だと感じました。

さらに、マルイのオムニ化への取り組みを深堀ると、お客さんを知りたい喜ぶ商品を届けたい、という小売業の基本姿勢をまず全社で共有できているかどうか、というのがオムニ化成功の大前提となりそうな気がしました。


ということで、本日のお話は以上です。

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

それでは、今日もよい一日を。


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